スマホ全盛だから駅の時刻表は不要と割り切れるか?
今回は、駅の時刻表掲示についての話です。
近年、各駅において、改札口の外にあった列車の発車時刻表が廃止の方向にあります。
理由として、以下のような点が考えられます。
〇 年に一度のダイヤ改正の都度、貼り換える経費と手間を要する
〇 平日と土曜・休日と分けての掲示が必要
〇 路線が多いほど掲示面積の確保が必要
〇 スマホの定着により、列車時刻情報が必要な人は駅の時刻表掲示に頼らず、自分のスマホで発車時刻を調べる
〇 スマホで列車時刻を見ることで、下車駅の到着時刻や乗り換え路線の時刻も分かる
〇 改札内やホームにLED発車標があり、次の列車の発車時刻、列車種別、行き先、編成両数、停車駅等も表示される
以上のようなことから、駅での時刻表掲示を廃止してきています。
剥がされた時刻表の壁は、広告等で使われていますが、壁のままにしているケースもあり、剥がされた跡は痛々しく映ります。
改札口を入る前に、事前に発車時刻を知りたければ、スマホで鉄道会社のWebサイトや様々な列車時刻のサイト、アプリのQRコードを自分でかざして調べるしかない時代になりました。
スマホを持っていない人、スマホがあってもサイトやアプリの苦手な人、スマホを忘れた人などは困ってしまいます。
改札外にあった時刻表だけでなく、ポケット時刻表の配布、みどりの窓口や時計などの設置もなくなってきています。
駅員がいれば聞くことはできますが、手が空いている場合の話で、応対中は聞くことがためらわれます。
無人駅、駅員が不在の時間帯、他に列車利用者がいないなど、周囲に聞ける人がいない状態の時や、駅に次の発車時刻表示(発車標)がない時など、路頭に迷ってしまうといったら大げさでしょうか。
列車に乗る時はスマホを持つことと、使いこなして列車時刻を調べることくらいは当たり前ということでしょうか。
改札外の時刻表の意義
改札を入れば中に発車標があるからと言っても通常、改札前にそれを見ることはできません。
改札外にも発車標設置が望まれますが、行なわないのは駆け込み乗車防止の意味もあるのでしょうか。
改札を入ってから列車時刻を知ることになりますが、山手線や大都市の地下鉄のように、5分待てば列車が来て、列車の行き先も同じ路線では、改札外の列車時刻表は不要という考え方はできます。
地下鉄で言えば、乗り入れ先の路線や行き先はさておき、自社地下鉄路線内は全区間移動できる、一定間隔で列車が来るということです。
京浜東北線で言えば、少なくとも蒲田-南浦和(正確には東十条)相互間ではどの列車でも行けるという割り切った考え方です。
改札内に店舗等が充実していれば別だが例外的な事例
東京駅のように改札内で店舗等が充実しているなら長い待ち時間でも過ごせますが、それは例外です。
ほとんどの駅は改札内に特別、何もないのが通常であり、売店等もなくなってきています。
改札内に入ってじっと列車を待つ際、時間が長いほど改札内に早く入ったことを後悔することになります。
改札外なら店舗や広い空間で時間を過ごすことも可能だったからです。
常磐線上野-取手の日中ダイヤを見る
ここで常磐線を例に見てみます。
◆常磐緩行線
東京メトロ千代田線を含めて代々木上原-北千住(綾瀬)-我孫子は日中10分間隔で、分かりやすくなっています。
日中の常磐緩行線下り列車はすべて我孫子行きです。
上り列車の場合は代々木上原行きと小田急線向ヶ丘遊園行きの交互運転が基本で、常磐緩行線内と千代田線内の相互移動ならば10分待てば乗れます。
さらに、千代田線代々木上原-綾瀬相互間なら5分間隔です。
その意味では代々木上原-北千住-我孫子では、発車時刻の1の位の数字さえ覚えておけば、2・12・22・32・42・52というように、列車が来る時間に合わせての行動も身に着き、全般的に時刻表がなくても利用しやすいダイヤと言えます。
◆常磐快速線① 上野-我孫子は上野基準では10分間隔
上野発の日中ダイヤを見ると、00分発は特急「ひたち、30分発は同「ときわ」、我孫子までは毎時2・12・22・32・42・52分発で、こちらも分かりやすいダイヤで、時刻表は基本的に不要といえます。
このうち12・32・52分発は土浦方面行き、2・22分発は取手行きです。
上野-取手相互間も使いやすいダイヤです。
正確には、上野42分発は我孫子から成田線経由成田行きのため、天王台と取手だけは無縁の時間帯となります。
ちなみに、成田行きでは我孫子で緩行線に取手までフォローする列車があればよいのですが、その設定はありません。
◆常磐快速線② 特急の通過待ちでパターン時刻が開くことがある
常磐快速線も10分間隔だから時刻表不要と言っても、上野基準という条件付きです。
快速は時間帯によっては北千住、松戸、我孫子の3駅のいずれかで特急通過待ちをするため、特急運転時刻の直前の列車は上野-取手で追い抜かれずに逃げ切ることはできません。
上野発22・52分発は松戸で特急を退避します。
上りは我孫子または北千住で後続の特急に追い抜かれます。
特急通過で退避した列車は、使待ちの駅から先の駅では、快速全体の運転時刻の均等化から外れてしまいます。
最大13分待つ時間帯が発生します。
逆に8分待ちで列車が来る時間帯も生じます。
13分待つとなると、10分待ちになれた身には長く、無駄に感じ、だからこそ時刻表による運転時間の全体像が知りたくなってきます。
なお、下り快速が松戸、上り快速が北千住で通過待ちの際、上下線の中間にある待避線は、松戸駅は下り本線と共用、北千住は上り本線と共用の構造です。
特急退避により違うホームに移動する手間を避けて、本線と同一配置の駅で退避するのはJR東日本の配慮と言えます。
時刻表で一日の運転時間の全体像を知ることの意義
改札外の時刻表の役目は、直近の発車時刻を知るためだけではありません。
別の時間帯の列車に乗る際の発車時刻が知りたい時に役立ちます。
一日全体の列車の発車時刻を知りたい時もあります。
一日の時刻で全体像を知ってから、自分の乗る時刻の状況を知るのも列車利用には必要な要素です。
毎日決まった時刻の列車に乗るなら時刻表は不要でも、残業や付き合いで帰りの時刻が不確定の時、いつもよりも遅い時刻での運転間隔の開きなどを知ることができます。
繰り返しになりますが、一日全体の時刻が知りたいならスマホで鉄道会社のサイトや、アプリのQRコード、発車時刻を案内する各種のサイトなどを見ればよいということで割り切る前に、A3の紙1枚を駅の改札口付近に掲示することはできないでしょうか。
改札外の時刻表は従来のような、大きく立派な物でなくてもよいと思います。
A3版の大きさの紙1枚、カラーでなく白黒でよいと考えます。
それを改札入口付近に貼っておけば十分です。
利用者は必要に応じて、自分のスマホのカメラ機能を使って、A3版で貼付された時刻表を写真に撮り、後でスクロールしながら画面を拡大し、発車時刻を確認できます。
ホーム上の時刻表も同様です。
時刻表の用紙や文字は大きいに越したことはありませんが、時刻表がないよりは良いことであり、スマホでの撮影写真は自らスラッシュ拡大して大きな文字で見られる点でも優れています。
スマホ時代でも乗客配慮が大事
森と木に例えれば、一日の時刻表は森であり、次の発車時刻を案内する発車標は木になります。
自然界は木が集まって森を構成しますが、時刻表と乗車時間の場合は、森という全体像が先にあって、自分の乗る時間帯の木がある位置づけです。
木のごく一部分だけでは利用者全体の利用便宜は満たせません。
森を見せることが大事です。
スマホ全盛・万能時代であっても、簡素であっても、瞬時に見られる駅の時刻表の掲示は望まれます。
自分のスマホで事前に発車時刻を調べて乗ればよいというのはある意味では強引な論法です。
駅の外にたとえ簡素であってもA3・A4版の1枚であっても、一日の時刻表を掲示することが鉄道側の配慮というものではないでしょうか。