スタンションポールの設置効果と区分け座席数の配慮
通勤電車のロングシートには着席定員があります。
着席定員とは座席に乗客がきちんと座った時の人数です。
10人掛けの席なら10人が座ることですが、現実には隣の人と間隔を空けたり、自分の荷物を脇の席に置いたりして9人掛け、8人掛けで座っている光景を見受けます。
空いている時は隣席を使うのも許容範囲ですが、混んでくれば別で、1人1席の基本は守りたいものです。
鉄道会社は着席定員を守ってもらうため、いろいろ試行錯誤を繰り返してきました。
座席の色分け、分割、凹み(バケット化)、板状の袖仕切りなどですが決定打にはなりませんでした。
決め手になったのは握り棒(スタンションポール。以下「ポール」)でした。
ポールは外観上、誰にでも存在が分かりやすいほか、立ち客の吊り革代わりの利用、着席客が下車時に立ち上がる際の補助にもなりました。
JR東日本では209系の7人席にポールを2本配置し、2-3-2席区分にしてから着席定員が守られるようになりました。
他社でもロングシートにはポールを設置するようになりました。
しかしポールを設置しても、定員が守られず1人から2人の減でゆったり座ってしまうケースも見受けます。
理由はポール相互の座席定員、ポールと袖仕切り間の座席定員数にあります。
着席定員が守られるのは3人までです。
3人の区画を2人で座っている時は、後から来た人に対し座席を詰めてもらえます。
これが4人の区画を3人で座っていると、よほど混まないと詰めなくなります。
5人以上の区画ならなおさらです。
これは、3人区画に2人着席の場合、空間は1箇所ですが、4人区画に3人着席の場合は左右に計2箇所とも半端な空間になるため、どちら側に詰めてもらおうか、言い出しにくいイメージがあるからではないでしょうか。
着席定員とポール、区分け座席数を整理すると、
4人掛けはポール1本で2-2、5人掛けは3-2、6人掛けは3-3。
7人掛けはポール2本で2-3ー2、8人掛けは3-2-3、9人掛けは3-3-3。
10人掛けはポール3本で2-3-3-2、12人掛けは3-3-3-3が望ましいと思います。
具体例として、京急の新1000形は8人席をポール1本で5-3区分にしていますが、京成3100形のようなポール2本で3-2-3区分にした方が効果的です。
最後に、JR東日本E233系の車端部3人掛け優先席について。
E233系は車端部3人掛け優先席を2-1区分にして、連結部の席と中央部の席の人がポールを握ることで立ちやすくする配慮をしています。
大手私鉄電車の一部にもE233系と同様の2-1区分が見られます。
連結部の1人区画は左右の幅に余裕がなくなり狭くも感じますが、鉄道側の温かな配慮の結果と受け止めます。