東海道線・山陽線・東北線災害時の鉄道迂回路線では対応に限度があるか?
JR貨物と総合物流企業センコーが、鉄道路線災害時の代行輸送強化策として2024年春に貨物船1隻を保有するとのニュースがありました。
貨物船導入により鉄道不通区間の代行輸送を行なうことで、不通区間の輸送サービスが継続でき、安心・安全な物流サービスの実現に努めるとのことです。
貨物列車の代替輸送確保策として貨物船を投入する話題に関連して、在来線の並行路線への迂回はどうなっているでしょうか。
貨物列車が走行していない路線では、走行手続きに手間と苦労が伴います。
鉄道迂回よりも貨物船対応の方が迅速化するとの判断もあるでしょうか。
以下、鉄道迂回時の課題点を整理してみました。
なお、「貨物ターミナル」と表記するのが正確な箇所については、ここでは記載を略します。
(1)鉄道路線の代替経路対象路線
主要幹線不通時の迂回路線として以下の経路が考えられますが、実態として対応可能でしょうか。
〇 東海道線不通時の中央線(名古屋-塩尻-東京)経由と、北陸・上越線(京都・米原-金沢-長岡-越後湯沢-東京)経由
〇 東海道線岐阜付近不通時の草津線・関西線(草津-柘植-名古屋)経由
〇 山陽線不通時の山陰線経由と、一部の山口線・伯備線・播但線経由
〇 東北線不通時の奥羽線・羽越線・上越線(青森-秋田-新津-長岡-東京)経由
〇 上越線不通時の信越線・えちごトキめき鉄道・しなの鉄道・篠ノ井線・中央線(長岡-直江津-妙高高原-長野-松本-東京)経由、磐越西線・東北線(新津-郡山-東京)
なお、逆の迂回路ケースもあり得ます。
つまり北陸、上越、羽越線等に支障をきたした際の東海道、東北線側の迂回対応です。
この場合、東海道線、東北線の貨物列車輸送力はあっても、通常ダイヤへの割り込みへの影響、調整が生じます。
(2)代替経路の機関車の確保
これまでの貨物列車迂回路線として山陰線、磐越西線、函館線長万部-小樽(函館山線)経由の際、機関車はいずれもDD51形ディーゼル機関車でした。
しかしながらDD51は全国的に引退しています。
後継機DF200形は、函館山線の今後の廃止関係の絡みもありますが、DD51よりも大型で重量もあるため走行不可との結論です。
山陰線、磐越西線もDD51の代わりにDF200を充てることは難しいと思われます。
それならばDD200形を充てることはできないでしょうか。
重量貨物の牽引や急勾配越えはどうでしょうか。
重連総括制御運転仕様にはなっていませんが、急勾配での重連または石北線のような後押し補助機関車として2両運転はどうでしょうか。
今回の貨物船新造には山陰線、磐越西線、函館山線でDD51後継機がなくなったことでの代替えの含みもあるのでしょうか。
(3)迂回路線の駅構内有効長
東海道・山陽・東北・北陸方面の各路線は全線複線電化されていますが、迂回路線は単線が多いゆえの列車交換時の線路有効長に伴う列車両数の制約、非電化設備、列車ダイヤへの組み込みの苦労もあります。
迂回路線の輸送力の小ささも貨物船新造につながっていく要因でしょうか。
(4)北海道新幹線開業後、並行在来線廃止時の代替輸送の意味合い
北海道新幹線札幌開業後の函館線新函館-長万部が廃止となった場合に、うがった見方ですが苫小牧や小樽などから貨物船で青森まで輸送する含みもあるでしょうか。
以上ですが、いずれにしても貨物列車の安定輸送は鉄道の重要な役割の一つであり、鉄道のネットワークを生かした活用を期待します。
※写真は本文と無関係です。