平行普通列車

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米坂線被災復旧で「JRが独力で復旧していくのが一番ベスト」と語る側の真意とは?

米坂線の今後について考えてみました

JR東日本新潟支社は4月25日に、被災で運休中の米坂線について、復旧費用約86億円、工期約5年が必要なことを明らかにしました。

4月26日には新潟県知事から「鉄路として維持していきたいというのが大原則」「JRが独力で復旧していくのが一番ベスト」と会見で述べたことが報道されました。

 

米坂線新潟県山形県に跨がっています。

山形県では今後、JR東日本からの説明を受け、関係自治体と連携して復旧へ向けて取り組む姿勢を示す反面、新潟県ではJR東日本の独力復旧を求め、両県の見解の違いが印象に残りました。

 

かつては新潟-山形-仙台の都市間輸送ルートとして急行「べにばな」が設定されたこともありましたが、仙台直通は1985年に廃止、1992年には山形新幹線開通により山形直通が廃止されています。

2021年度の輸送密度は坂町-小国で124人、小国-今泉で226人、全線運転列車は5往復の状況です。

JR東日本は単独で復旧することは非常に判断しづらい額であり、米坂線の復旧可否を含めて沿線自治体と協議したい考えも示したとのことです。

2021年度の利用状況の中で鉄道側に対し、はたして復旧費用86億円の全額負担を求められるものでしょうか。

 

2022年8月豪雨後、不通路線が相次いだ中で五能線磐越西線秋田内陸縦貫鉄道は現在、全線が復旧しており、花輪線も5月14日再開が発表されています。

米坂線もこれらの路線と同じように独力復旧すべきと考えているのかもしれません。

 

一方、津軽線不通区間蟹田三厩は輸送密度98人、復旧費6億円の状況で、JR東日本は上下分離と運行経費負担を地域と協議したい意向です。

また、被災とは無関係ですが久留里線では久留里-上総亀山の輸送密度55人、営業係数19,110の状況から、被災復旧議論はないものの地域協議への動きがあります。

津軽線久留里線は行き止まり区間であること、輸送密度100人未満の点は共通しています。

 

JR東日本は利用状況が極度に低く、今後も改善が見込めない区間では「沿線地域の公共交通を持続可能なものとし、利便性が向上する交通体系のあり方を総合的な観点から検討する必要がある」との考えを示していますが、津軽線不通区間久留里線末端区間米坂線全線にも同趣旨が伝えられた形です。

被害規模、被害箇所数、復旧経費、沿線地形による今後の再発懸念、利用状況、ピーク時の列車輸送の必然性、並行道路、沿線の現人口と今後の人口、他の地域から来る観光要素、沿線地域での鉄道盛り上げ、本数と列車内容の魅力向上効果、新潟-米沢直通運転効果、復旧後の将来性等、様々な要素を勘案して協議提案に至ったと思われます。

 

米坂線においてはJR東日本単独での独力復旧、経費負担が困難なことに対する新潟・山形両県と沿線地域の理解を得ることが先決です。

2県に跨る路線ゆえ、両県の意向相違、将来像、費用負担等の調整課題も抱えています。

地域からは、鉄道側が利用促進や経費節減、安全確保にどこまで自助努力してきたのかが鉄道側に問われます。

五能線只見線いすみ鉄道えちごトキめき鉄道のような、鉄道側と沿線の双方の盛り上げ、県のバックアップによる鉄道選択の余地は残っているでしょうか。

その次の段階として、将来にわたっての持続可能な交通体系の中での鉄道選択か、選択するならば費用負担をどうするかの順に協議されると思われます。

米坂線の今後の経過を注視していきたいと思います。

 

※写真は本文と無関係です。