乗り換えがあっても直通で割り切る思想はいかがなものか?
既に他の人のブログ等でも指摘されていますが、JR各社の2023年夏の臨時列車の中で目を引いたこととして、JR東日本長野支社、中央線特急「あずさ1号」「あずさ38号」の大糸線松本-白馬間延長運転のリリースがありました。
この中で「夏の信州・白馬へのアクセスがより便利になります。快適なE353系車両に乗り、首都圏から直通で雄大な北アルプスの景色を眺めながら、大自然を満喫する旅をしてみませんか」とあります。
続けて、新宿-松本間E353系12両、松本-白馬間3両で運転と案内されています。
ここまでの時点では、白馬乗り入れは9両の基本編成でなく、3両の付属編成での実施かと受け止めるのが通常です。
ところがそのあとで「松本駅にて同一ホームで別編成へお乗り換えいただきます」「※特急券は松本駅で分割せずにご利用区間全体を通しでご購入いただけます」の説明があって一瞬、目を疑いました。
新宿-白馬は直通なのか、乗り換えるのか、戸惑わせます。
E353系は12両の固定編成はなく、9両と3両で組成しています。
9両編成は大糸線の線路容量を考慮した上限の両数です。
「あずさ1号」に3両編成がありながら、同形式の別の3両編成に乗り換えさせ、直通を謳う発想は、車両運用上の都合とはいえ、特急列車の考え方として理解できるものではありません。
よほど運用上、新宿からの編成の3両が白馬へ直通することに、運用全体としての支障があったのでしょうか。
しかしながら同一ホーム、特急料金通算とはいえ、別編成に乗り換えさせながら、冒頭の案内で「首都圏から直通で」というのは誤解を招きかねない表現であり、論理のすり替えです。
「あずさ1号」の新宿発時点の案内表示、行き先表示器は白馬行き、同じく「あずさ38号」の白馬発時点の表示も新宿行きの表記となります。
乗り換えを直通と謳ったことで混乱の原因になり、客離れにもつながりかねません。
はたして白馬直通と思っていた利用者は、同一ホームとは言え松本乗り換えに理解を示すでしょうか。
今回のような乗り換えを強いるならば、「リレーあずさ」等、少なくとも別の愛称、別の列車の扱いにした方がよいと思います。
「あずさ1号」はあくまでも松本行きとし、松本で特急「リレーあずさ1号」に接続すること、料金は通算することを案内するのが筋道と考えます。
話は少し変わりますが、JR東日本では「ホリデー快速おくたま」でも類似した発想の運行を開始しています。
2023年3月ダイヤ改正から、新宿-奥多摩直通運転を青梅で分割し、乗り換えで割り切りました。
「ホリデー快速おくたま」を6両+4両の編成で運行し、青梅到着後4両編成が奥多摩へ直通すれば済むものを、厳粛に青梅-奥多摩間専用編成に乗り換えを促しました。
新宿-奥多摩を直通したければ特急「おうめ93・94号(新宿・青梅奥多摩号)」に誘導する考え方です。
また、JR九州、西九州新幹線では、武雄温泉での乗り換えを承知の上で、上り新幹線列車は「かもめ 博多行き」、鹿児島線下り列車は「リレーかもめ 長崎行き」として徹底した割り切りをしています。
「ホリデー快速おくたま」の場合は特急料金は不要の列車であり、西九州新幹線は新幹線と在来線特急との乗り継ぎであることから、青梅や武雄温泉で乗り換えても不満は表面化しませんでした。
今回の「あずさ1・38号」の場合、乗り換えさせながら同一列車を名乗る手法は、料金を徴収する特急列車として望ましいとは言えず、運用の都合上、仕方ないと理解が得られるとも思えません。
JR東日本は、JR九州の西九州新幹線「かもめ」と同じ考え方を「あずさ1・38号」にも採り入れたのでしょうか。
この考えが波及していくと、例えば新潟駅では上越新幹線「とき」と羽越線特急「いなほ」は同一ホームで乗り換え可能ということが独り歩きをして、「とき」は新潟行きでなく酒田行きとも名乗れる拡大案内の方向になっていかないでしょうか。
今回の「あずさ1号・38号」の松本乗り換え方式が今後、他の「あずさ」や列車にも波及していくのかどうかは、次回に触れたいと思います。