平行普通列車

常磐線と新京成に魅せられた者のブログです

広島スカイレール25年間で廃止の教訓

広島スカイレールの利用が伸びなかった背景を探ります

広島県山陽線瀬野駅に隣接する、みどり口-みどり中央1.3 kmを5分で結ぶ新交通システムスカイレール」が2023年末で廃止されます。

1998年8月28日に開業してから25年間でした。

スカイレール懸垂式モノレールとロープウェイを組み合わせたような、ロープ駆動式懸垂型の新交通システムです。

 

広島市安芸区のニュータウンスカイレールタウンみどり坂は、絵下山の斜面を積水ハウス系列が開発、宅地化しました。

起点のみどり口と、みどり中央との高低差は1.3km、180mあります。

計画戸数2,250戸、2019年10月時点で1,791世帯、6,068人となっています。

このニュータウンの居住者の足としてスカイレールを導入しました。

 

しかしながら利用は伸びず、現在のスカイレールが混雑し始めているのは廃止決定によるもので、廃止話題がなければ閑散状態の継続だったと見られます。

1998年以降、今日までスカイレールという乗り物自体は、国内及び世界で導入されなかったため、部品確保の困難や維持管理高騰の要因となりました。

運賃値上げによる収入増を図ろうにも、値上げでの利用減が見込まれ、他の機関からの補助も見込めないため資金難となり、廃止に傾いていったとされています。

 

今回は、スカイレールに対する雑感を書きたいと思います。

結果論的な内容と順不同の点は予めご了承ください。

 

〇 山陽線に直結するみどり口駅は、瀬野またはスカイレール瀬野、みどり坂瀬野のような、瀬野を入れた駅名にできなかったか。

JR西日本との駅名の利害関係、宅地開発側の思惑があったか。

少なくともみどり口駅の駅名だけ見ると、山陽線瀬野との接続駅の印象を受けなかった。

〇 路線と駅の名称は、ニュータウンへの親近感を込めて、スカイレールみどり坂線、駅名はみどり坂瀬野、みどり坂中街、みどり坂中央の方が良かったようにも思われる。

〇 往復340円の運賃負担は大きかった。

〇 みどり口-みどり中街は0.7km、みどり中街-みどり中央は0.6km、みどり口-みどり中央全線で1.3kmだが、運賃は170円で設定したため、中間駅のみどり中街駅利用者にとって、終点のみどり中央駅まで同運賃では不満はなかったか。

みどり中街下車の場合、90円から100円の運賃設定にしていたら、みどり口-みどり中街の利用はもう少し見込めなかったか。

〇 170円から100円にすることでの減収、運賃2種類設定による複雑面と、100円による増収効果のバランスはどうだったか。

〇 駅の存在感自体が薄かった。

みどり中街、みどり中央の両駅とも、一般道路上にぽつんと位置する印象で、駅前には特別、目印になる物も見当たらず、駅前としての魅力に不足した。

みどり中街、みどり中央の両駅付近での買い物の用を足すのは不可能だった。

〇 瀬野駅付近での買い物の店も限られていた。

広島に行く場合、山陽線瀬野-広島は15.2km、20分、運賃330円が別途伴うこととなった。

みどり中央-瀬野-広島の乗り継ぎは往復1,000円を要した。

〇 一車両定員25人で8席、片道当たり毎時325人の輸送力の少なさから、すぐに満員になって乗れない印象を与えた。

列車、バスのような詰め込み乗車は不可だった。

〇 勾配の多い地形ゆえに、居住者にとって車の所有は必要不可欠だった。

ほとんどの世帯は車を所持していて、スカイレールとは無縁だった。

〇 スカイレールタウンみどり坂の居住世帯全体の負担によるスカイレール存続は、宅地開発時点当初から導入していれば別として、途中からの導入は理解を得るのが困難と思われる。

とくに瀬野駅に近い住宅側や、スカイレールの駅から離れた住宅ではその傾向が強いと考えられる。

〇 スカイレールタウンみどり坂の足の確保としては、こまめに停留所が設定できるバスの方が適当だった。

スカイレールでは多くの駅設定は急勾配途上で難しいことに対して、一般道路上でのバス運行は50m、100m単位でもバス停が設置できるほか、走行道路の変更、拡大の柔軟性の強みもあった。

 

スカイレールの存続、スカイレールでの新たな方向性開拓を探ってみたものの、残念ながら決定打がなく、今後はバスでの代替えによるこまめな停留所設定と、全区間定額でなく距離制による柔軟な運賃配慮が望ましいと思われました。

今回の広島スカイレールは、ニュータウン開発に伴う主要駅からのバス以外での交通機関連携による足確保の難しさを投げかけた教訓となりました。

 

※写真は本文と無関係です。