静岡クルーズツアーを機にJR東海も観光列車、団体豪華列車所有へと進むか?
東急とJR東海の連名により、2024年5月30日付けで「『THE ROYAL EXPRESS~SHIZUOKA・FUJI CRUISE TRAIN~』が静岡を走ります ~クルーズトレインの運行により静岡県の魅力を発掘します~」のニュースリリースがありました。
11月8日〜12月16日の間で、金曜発→月曜着の3泊4日で計6回、募集人数各回30人、参加費1人当たり75万円〜114万円、列車乗車区間は横浜→三島、沼津→新居町、浜松→静岡、静岡→横浜となっています。
ここで、読売新聞オンライン、2024年5月30日付け「ザ・ロイヤルエクスプレス、東急がJR東海と静岡で共同運行…3泊4日で1人75万円から」の記事の中から一部を引用させていただきます。
(以下引用)
東急がJR東海に呼びかけ、期間限定で運行することにした。
~中略~
静岡県では、JR東海が建設中のリニア中央新幹線のトンネル工事着工が認められていない。観光列車の共同運行で、県や沿線自治体との関係を強化する狙いがあるという。記者会見で丹羽俊介社長は「地域の皆様とともに、多様な静岡の魅力を発信していく」と話した。
同社は、東海道新幹線の運輸収入が売上高全体の約7割を占めているが、コロナ禍を経て新幹線に依存する収益体質からの脱却も目指している。自前で持たない豪華観光列車の運行ノウハウを取り込み、新たな事業機会を模索する。
(以上引用)
JR東海が豪華列車を走らせることと、JR東日本が協力したことに驚き
JR各社が団体専用列車、豪華列車を持っている中で、JR東海はそうした列車編成を一切持たない唯一の会社です。
豪華列車は別としても、団体専用列車さえも持っていません。
そのため東海道・中央・高山・紀勢線等、いずれの路線にも観光専用車両は走りません。
そのJR東海に今回、何の変化があったのだろうかと思うと、「観光列車の共同運行で、県や沿線自治体との関係を強化する狙いがあるという」という記事で理解できます。
静岡県への観光列車の運行により、静岡県や沿線自治体との関係を強化することにより、それがリニアへの理解協力、建設促進につながっていくだろうという想いが感じられます。
もう一つはJR東日本が、東急はさておき、JR東海の企画に対して、横浜-熱海での運行に協力したことです。
従来からの概念でいけば、JR他社の区間には走らせられない、新横浜-熱海は東海道新幹線で移動し、熱海からの運行にせざるを得ないというのが通例と思います。
今回のコースで言えば、1日目は横浜駅→富士川駅→三島駅のコースですが、新横浜→東海道新幹線→熱海→「ザ・ロイヤルエクスプレス」で富士川駅→三島駅となっても不思議ではありません。
熱海-富士川-三島の短い距離では意味がないのは分かっていても、JRが分かれる以上、自社線内での運用は仕方ないところで、最終日の熱海→横浜の設定も同様です。
その概念を超えてJR東日本がJR東海の企画に協力したことに大きな意義があります。
東海道新幹線でも豪華列車、団体仕様の列車編成を一切持たないJR東海
在来線でさえ団体列車を持たないJR東海ですから、東海道新幹線ではなおさらです。
東海道新幹線では16両編成の各号車の定員を同一にする徹底さです。
東京-博多の「のぞみ」で言えば、長距離列車だから1往復くらいデラックス列車にしようかという発想でなく、全編成がビジネス座席のみの大量輸送に価値があるという考え方と思います。
新幹線へのグリーン個室の設定は、通常グリーン車の延長的な位置づけであり、列車編成そのものを別の仕様にするものとは異なります。
全列車共通仕様で1席でも多くの座席提供により、多くの列車設定での大量速達安全確実輸送を行なう徹底した使命感が感じられます。
JR東海は団体専用列車、豪華観光列車を造るか?
記事の中での後段、「東海道新幹線の運輸収入が売上高全体の約7割を占めているが、コロナ禍を経て新幹線に依存する収益体質からの脱却も目指している。自前で持たない豪華観光列車の運行ノウハウを取り込み、新たな事業機会を模索する」という箇所に興味を覚えます。
これまで東海道新幹線一筋で進んできたJR東海が、新幹線依存からの脱却、新たな事業機会の発想転換ができるでしょうか。
JR東海が今後、団体列車、豪華列車を造る可能性はあるでしょうか。
JR東海の在来線主要路線は、JR東海管内だけで自己完結していないのが特徴です。
東海道線では東京-大阪の中で、中間の熱海-米原を受け持っています。
静岡、名古屋を中心とした、熱海-米原の自社範囲内での団体列車需要があるかとなると東京、大阪の大都市発着でないと効果が最大限発揮できないジレンマがあると思われます。
横浜・東京への乗り入れはJR東日本と、京都・大阪ならJR西日本との調整が必要であり、収入の分配、精算も伴います。
また、東京-名古屋、名古屋-大阪往復の循環コースを自社路線内だけで組めない路線配分です。
そのため東海道線を中心とする団体列車設定であっても、東海道線の往復の範囲内でしかコースが組めないジレンマがあります。
そのジレンマは東海道線以外の路線でも抱えています。
中央線は名古屋から塩尻までですが、JR東日本管内の松本、長野までは行けず、高山線の猪谷-富山、紀勢線の新宮-紀伊勝浦もJR西日本区間になります。
名古屋から木曽福島、高山、新宮までの設定なら自社区間のみであり、団体列車も成り立ちますが、その前に中央・高山・紀勢線そのものの列車需要の大きさ、特急「しなの」「ひだ」「南紀」でもすでにほぼ満たしている輸送状況の現実があります。
団体列車を造るとすれば、やはり需要の多い東海道線熱海-米原、がんばっても御殿場線経由の国府津-沼津-米原の範囲と考えられます。
近鉄ではJR東海のエリアよりも狭い範囲でも団体列車等があるので、近鉄よりも広いエリアのJR東海で団体列車が成り立たないことはないと考えます。
JR東海が団体列車効果のプラス面を重視して団体列車を造るとしたら
東海道線を中心に、団体列車投入による話題性、新幹線ではできない誘発力効果を期待して、もしもJR東海が団体列車を造るとしたらどのような内容になるかを想定してみます。
毎回のことですが、あくまで勝手な想像ですので予めご了承ください。
〇 豪華列車、団体列車のいずれも所有しない経過から、まずは一般的な団体列車を造ることが先と考えます。
〇 自社路線での周遊コースが組めないこと、熱海-米原の距離等を勘案し、豪華列車ではなく、団体専用列車として製作するのが適当と思われます。
〇 輸送力本位でない、列車移動、車窓、車内サービスを楽しむのが主眼の列車とします。
とくに、列車内からの富士山を存分に見ることをセールスポイントとします。
そのため、富士山側の窓を大きくすることに価値があると思います。
〇 他社の列車に例えれば、JR九州の観光列車、「D&S列車」(デザイン&ストーリー列車)のようなイメージが適当です。
近鉄の20000系「楽」なども参考にはなると思います。
〇 6両編成の直流電車が適当と思います。
〇 東海道線熱海-米原の区間内で、熱海-浜松または静岡-米原への運用を基本とします。
〇 とくに御殿場線国府津発着の設定は、車窓からの富士山や、乗車機会の少ない御殿場線、かつての東海道の栄光時代を偲ぶ栄枯盛衰路線として適当です。
熱海-沼津を東海道線の短名トンネルで抜けるよりも、御殿場線の方が味わいがあります。
〇 6両編成電車の状況を見て、評判が高まれば3両編成のハイブリッド気動車による団体列車も考えられます。
いささか絵に描いた餅の内容ではありますが、今回の「THE ROYAL EXPRESS~SHIZUOKA・FUJI CRUISE TRAIN」の成功により、JR東海で東海道線での団体列車、豪華列車設定の機運が盛り上がることを期待します。
そして、JR東日本、JR西日本の協力を得て年に数回、東京と大阪に乗り入れ、東京-大阪の夜行列車、日中の東海道線列車で全盛期を偲ぶ列車を設定することを目指してほしいと思います。
それには、他社協力以前のこととして、JR東海は東京-大阪は東海道新幹線だけで十分だという考えを変えることができるかどうかにかかっていると思います。
(※ 筆記にあたり、読売新聞オンライン、2024年5月30日付け「ザ・ロイヤルエクスプレス、東急がJR東海と静岡で共同運行…3泊4日で1人75万円から」から一部を引用及びさせていただきます。
※ 写真は本文と無関係です。