名古屋発「南紀」新宮到着直前に「くろしお」が発車するダイヤでは利用者離れのもと
紀勢線は亀山-新宮-和歌山-和歌山市の区間の路線で、新宮を境に亀山側はJR東海、和歌山側はJR西日本の管轄となっています。
夏休みの行楽として、名古屋-大阪を紀勢線経由で回ってみようかと計画する人もいるのではないでしょうか。
青春18きっぷによる紀勢線の普通列車乗り継ぎ旅はさておき、名古屋-紀伊勝浦の「南紀」、新宮-新大阪の「くろしお」を新宮または紀伊勝浦で乗り継いで列車旅をする人もいると思われます。
では、この2特急の新宮または紀伊勝浦での乗り継ぎ接続ダイヤはどうなっているでしょうか。
ここでは新宮で乗り継ぐこととして、両特急の接続ダイヤ状況をみてみました。
本欄では名古屋-津の区間の関西線・伊勢鉄道、和歌山-新大阪の阪和線・大阪環状線を含めて便宜上、紀勢線と表記させていただきますので予めご了承ください。
なお、以下の列車時刻の「:」は略させていただきます。
名古屋発 → 新宮着 → 新宮発 → 新大阪着
「南紀1号」 802 → 1134 (※新宮で7分差でくろしお22号に接続せず)
「くろしお22号」 ー 1127 → 1551
「南紀3号」 1001 → 1337 (※新宮で8分差でくろしお26号に接続せず)
「くろしお26号」 ー 1329 → 1751
「南紀5号」 1256 → 1624(※新宮で1時間22分後にくろしお36号に接続)
「くろしお36号」 ー 1746 → 2206
新大阪発 → 新宮着 → 新宮発 → 名古屋着
「くろしお1号」 734 → 1159(※新宮で46分後に南紀6号に接続)
「南紀6号」 ー 1245 → 1612
「くろしお11号」 1213 → 1640(※新宮で51分後に南紀8号に接続)
「南紀8号」 ー 1731 → 2049
名古屋→「南紀」→新宮→「くろしお」→新大阪の接続配慮がないダイヤ
「南紀1号」は名古屋を8:02発後、新宮に11:34着ですが、その7分前の11:27 に新大阪行き「くろしお22号」は新宮を発車してしまいます。
「南紀1号」の、新宮での定期特急接続は13:29発の「くろしお26号」まで1時間55分待つことになります。
次に、「南紀3号」は名古屋10:01発で新宮13:37着ですが、こちらもその8分前の13:29 に新大阪行き「くろしお26号」は新宮を発車してしまいます。
「南紀3号」の、新宮での定期特急接続は17:46発の「くろしお36号」まで4時間09分もの待ち時間があります。
「南紀5号」は名古屋を12:56発後、新宮16:24着でも17:46発の「くろしお36号」は間に合います。
もともと、「南紀5号」と「くろしお36号」 の場合でも、新宮で1時間22分待ちです。
列車本数が限られた特急同士が互いに接続連携を無視するようなダイヤでは、利用が伸びなくても仕方ないと思います。
「南紀」「くろしお」の乗客はすべて新宮または紀伊勝浦で下車し、乗り継ぎ需要はないのでしょうか。
臨時列車の新宮接続はどうか?
2024年夏の臨時列車をみてみます。
名古屋発の「南紀」は、名古屋8:51発→新宮12:29着の「南紀81号」、名古屋16:43発→新宮20:14着の「南紀83号」があります。
新宮発(紀伊勝浦始発)の「南紀」では、新宮14:01発→名古屋17:44着の「南紀82号」、新宮14:49発→名古屋18:26着の「南紀84号」があります。
新大阪発着の「くろしお」は、新大阪9:28発→新宮13:53着の「くろしお5号」、新宮15:04発→新大阪19:21着の「くろしお30号」があります。
「南紀81号」は新宮13:29発「くろしお26号」に1時間待ちの接続ですが、「南紀1号」よりは新宮での待ち時間は短縮されます。
「南紀3号」は、「くろしお30号」の運転日ならば新宮で1時間27分待ちで臨時「くろしお30号」に接続します。
ただし約1時間30分待ちでは、胸を張った接続とは言えませんが、新宮17:46発「くろしお36号」より良いとはいえます。
臨時「くろしお5号」運転の日は、新宮で「南紀82・84号」の2列車に接続します。
新宮13:53着後、14:01発の8分接続は、新宮での2特急接続の全パターンで最良の接続です。
「南紀82号」の運転日が8月9日~14日に限られることが惜しまれます。
「南紀84号」は「82号」よりも多少運転日が増えますが、8月中は8月9日~16日の限定です。
「くろしお5・30号」は、毎週金曜・土曜・休日と、8月2日~18日の運転で、繁忙期と週末の運転です。
定期列車での新宮接続が全般的に良くないことが課題といえます。
新宮の特急乗り継ぎは最大でも20分前後にしてほしいものです。
JR東海とJR西日本は新宮での特急相互接続便宜を図るダイヤを
JR西日本の紀勢線白浜-新宮の2023年度区間別平均通過人員(輸送密度)は935人となっており、一日平均千人未満の利用状況です。
白浜-新宮の区間の定期「くろしお」は6往復にとどまり、新大阪-白浜の区間運転列車7往復よりも本数が下回っています。
一方、JR東海は平均通過人員を公表していないものの、「南紀」は2両編成であり、定期列車も4往復に限られます。
名古屋側を受け持つJR東海と、大阪側のJR西日本それぞれの列車ダイヤ、単線の線路容量の中で、JR東海には「南紀1・3」号の名古屋発車時刻の繰り上げ、新宮から先のJR西日本には「くろしお22・26号」の紀勢線単線区間での列車交換の際に、反対側列車を待たせる方にする優先通過列車の位置づけにして所要時間を縮めるなど、互いに工夫し合ってほしいと考えます。
新宮でJR西日本とJR東海に管轄が分かれているのが痛手ですが、これは仕方ありません。
会社が違うからといって互いにマイペースのまま、JR東海は「南紀」4往復、JR西日本は「くろしお」6往復の新宮発着の本数の中で、相互接続連携をしないのでは自らの紀勢線の鉄道離れの原因をつくっていると言われても仕方ないと思われます。
接続便宜を図ると、先行列車が遅れた際の待ち時間で紀勢線全体のダイヤが乱れる原因になるという考えが出てきますが、だから特急相互の接続は必要ないといえるのでしょうか。
一年のうちの数日、列車に遅れが生じることを、さも一年中、列車が遅れることに拡大する発想はいかがかと思います。
「南紀」「くろしお」の新宮接続を図ることにより、白浜-新宮の平均通過人員の向上や、「南紀」2両編成の増車にもつながっていくのではないでしょうか。
JR東海とJR西日本には「紀勢線『南紀』『くろしお』で紀伊半島、名古屋-大阪を一周しませんか」といったキャンペーン、利用啓発をしてほしいと思います。