「いなほ」は海側A席が人気ですが、山側D席の車窓魅力についての話です
乗りものニュース、2026年3月22日付け、「 やけに「“A席”から予約が埋まる特急」に乗った 3時間40分の“大運転”いまや2往復に」を拝読しました。
羽越線新潟~秋田の特急「いなほ」で、笹川流れを中心とする日本海の車窓が間近に見られるA席の魅力を中心とした内容です。
「いなほ」は上下列車とも、日本海車窓が楽しめるA席に座りたいのは誰しも共通した心理です。
下り線だけ日本海が見られる区間もある羽越線の上下別線複線
羽越線には上下別線複線の区間があり、下り列車では日本海が見えても上り列車ではトンネルに入って海が見えない区間がいくつかあります。
そのため、上りよりも下り列車の方が日本海車窓は優れています。
これは、複線化の際、海側を走る従来からの線路を下り線専用にして、既存線路と並行した線路増設でなく、山側に上り線専用のトンネルで距離を短くし、列車の速達化とともに、自然災害による列車の遅延、運休を避ける措置でした。
具体的には村上~間島、越後早川~桑川、越後寒川~勝木、府屋~鼠ヶ関~小岩川、五十川~小波渡~三瀬などが上下別線複線の区間で、海は下り線だけで見られます。
上下別線複線で分かりやすいのは村上~間島で、下り線では存分に見える日本海が、上り線では長いトンネルに入ってしまいます。
また、三瀬~羽前水沢、羽後岩谷~折渡では、海は見えませんが、上下別線複線で、下り線のトンネルの方が上り線トンネルよりも長さがいくらか短くなっています。
逆に、西目~薬師堂は、上り線トンネルの方が下り線トンネルより短い、羽越線では例外的な別線複線区間です。
同じ「いなほ」A席であっても、下り列車への乗車をお勧めします。
下り「いなほ」の山側D席側の車窓価値
誰しも日本海が見えるA席を希望しますが、満席であれば隣の通路側B席、B席も満席なら山側の窓側D席、最後に山側で通路側のC席の順に埋まっていくのが通例です。
ただし、D席よりもC席の方が日本海はまだ見えやすい位置です。
「いなほ」の山側D席ならではの車窓は何でしょうか。
通常ならば月山や鳥海山の車窓となりそうですが、それ以外はどうでしょうか。
以下は、筆者の鉄道こだわり中心の内容となりますので、ご了承ください。
前記、上下別線複線の線路状況は下り列車の場合、D席でこそ見えるものです。
羽越線は単線と複線とが目まぐるしく変わりますが、その線路状況変化もD席の特権です。
海側A席では、別線複線はもとより、単線区間か、複線区間かさえも見分けることはできません。
特急「いなほ」のほか、普通列車、貨物列車とのすれ違い、単線区間での列車交換は、対向列車の線路側、下りはD席でこそ見える光景です。
新潟での信越線、新発田での羽越線、坂町での米坂線(列車運休中)、余目での陸羽西線、羽後本荘での由利高原鉄道、秋田での奥羽線・秋田新幹線、これらの路線との合流あるいは分岐状況も同様です。
羽越線の山側車窓に見える未成線跡
羽越線の隠れた見どころ?に、未成線のトンネルがあります。
小岩川~あつみ温泉では、複線化工事の際に複線型のトンネルを建設し、上下線とも新たな長いトンネル経由で、上下線とも海側のルートを移す計画でした。
しかし財政事情等により、現在の単線区間だけで継続使用され、複線分のトンネルは口を開けたままの未成線状態となっています。
未成線となっているトンネルを単線で使用することもできなくはないでしょうが、小岩川~あつみ温泉の区間では、未使用のままとされています。
余談ですが、篠ノ井線西条~明科では、単線の複線化にあたり、複線トンネル構造で建設しましたが、新しいトンネルでの走行には変えたものの、単線で使用した状態のままとなっています。
小岩川~あつみ温泉の場合、新トンネルを使用していない分、上下列車ともに日本海車窓は残されました。
勝木~府屋では、上り線専用の単線トンネルを造って、現在線と併せて複線化するようでしたが、未成線の単線トンネルだけが見えます。
これらの未成線は日本海側でなく、山側D席側から見える跡地です。
五十川~小波渡の、上り列車と道路併用の新五十川トンネル
五十川~小波渡には、上り列車用の新五十川トンネルがありますが、複線型トンネルを上り列車だけが使用し、上り列車は複線トンネル内では海寄り側を走ります。
複線トンネル内の山側は、道路になっている全国的にも珍しい区間です。
地上を走る下り列車側から見ると、このトンネルはやや離れた位置を走っており、この珍しい光景は上りの普通列車で運転席背後からの前面展望だけが分かる光景です。
羽越線上り普通列車乗車の際は、前面展望で体感してみたい区間です。
五十川~小波渡の区間は普通列車の前提で、上り列車への乗車をお勧めします。
海側から見える線路付け替え前の架線柱の跡
五十川~小波渡は、ほんんどが複線トンネルの区間となっていますが、1977年までは海側に単線の線路が敷かれていました。
使われなくなった架線柱が一部に残っており、かつては列車が走っていた区間だったことを伝えているかのようです。
五十川~小波渡に残る、この架線柱を中心とする旧線跡地だけは、日本海側のA席から見えます。
以上ですが、「いなほ」海側A席が満席で、山側D席に残念ながら座るよりは、D席ならではの車窓を楽しんでいただく参考になれば幸いです。
※ 筆記にあたり、2026年3月22日付け、乗りものニュース「 やけに「“A席”から予約が埋まる特急」に乗った 3時間40分の“大運転”いまや2往復に」を参考にさせていただきました。

※ 写真は本文と無関係です。