「スカイライナー」で北総線160km/h、アクセス線最大200km/h運転で20分台になるか?
乗りものニュース、2023年10月2日付け、「『成田まで20分』目指す京成『世界最速』から66年の小田急 スカイライナーとロマンスカー“中の人”対談 速さに必要なものとは」を拝見しました。
小田急と京成の看板特急の車両担当の方同士の対談企画です。
この中で、京成「スカイライナー」の高速化について印象に残った箇所がありましたので、以下、引用させていただきます。
(以下引用)
「京成上野~高砂間など最高速度の低い区間もありますが、成田空港まで30分台でなく、20分台を目指したい」と語りました。
「都心から成田空港まで20分台で結ぶためには、北総鉄道内での160km/h運転などが必要と考えますが、課題は何でしょうか」と質問したところ、「信号システムなどの入れ換えが必要で、そこが課題ですね」と回答しました。
(以上引用)
この記事を読むうち、タビリス、2022年8月24日付け、「『スカイライナー 200km/h運転』など提言。成田空港アクセス検討会」を思い出したので、再読してみました。
タビリスの記事の中には、「成田空港まで30分台でなく、20分台を目指したい」こと、「20分台で結ぶためには、北総鉄道内での160km/h運転などが必要」の話も盛り込まれていました。
2022年8月24日のタビリスの記事は、運輸総合研究所の「成田空港鉄道アクセス改善に向けた有識者検討会」が、『日本の空の玄関・成田空港の鉄道アクセス改善に向けて』と題する提言を発表した概要を分かりやすく解説しながら、著者の意見を添えたもので、いつもながら的を得た内容であり、参考になります。
今回は、タビリスの記事から一部を引用させていただき、そのあとに自分の意見、感想を書きたいと思います。
以下、太字がタビリス記事からの引用、→が自分の感想、意見です。
引用させていただいた箇所で順番が一部前後したものがありますが、ご了承ください。
成田空港の発着回数が50万回に達した2045年の鉄道アクセスの混雑率予測です。現状の運行規模のままでは、JR「成田エクスプレス」や京成「スカイライナー」で100%を超える時間帯があり、一部では200%を超えるとしています。
こうした予測を踏まえ、提言では、輸送力の向上、速達性の向上、安全・安定性の向上、航空・新幹線などとの連携強化、先進的な駅空間の整備などを求めています。
→ 成田空港は国の拠点となる空港ですが、羽田空港も同様です。
両空港がある中で、成田空港が優先または両空港同時に整備が進めばよいのですが、なかなかそうはいかないと思われます。
多額の掲示が伴うため、費用対効果、成田の方に重点をあて、どこまで優先的に投資できるかの羽田とのバランス、整備の緊急性、課題解決の優先性等での総合判断と思われます。
都心主要駅までの所要時間について、現状で最短36分(日暮里~空港第二2ビル間)かかっているところ、20分台の実現を目指すことを提言しました。具体的には、京成スカイアクセス線ルートの高速化について検討を求めています。
現在、スカイライナーは、スカイアクセス線内で最高速度160km/hで運行しています。しかし、160km/h区間はわずかなことから、提言では、現行130km/hで運行している区間を160km/hにすることを求めました。さらに、長期的な視点として、最高速度200km/h化について検討を開始することが望まれる、としました。
→ スカイライナーの北総線内160km/h運転、成田スカイアクセス線での200km/h運転は北総線、成田スカイアクセス線の線路状況から可能であるとしても、大幅な時間短縮につながることとは別と思います。
京成上野-京成高砂では先行列車と線形の両方の課題を抱え、速度向上、時間短縮に限度があるためです。
日暮里―空港第2ビルの最短36分を一挙に29分に縮めることは、一部で160km/h、200km/hに速度を向上しても達成は難しいと思われます。
都心側では現行設備では増発余地が少ないため、たとえば京成では、押上線を活用する方策を検討するのが望ましいとしました。
20分台を実現するならば、都営浅草線の押上-泉岳寺を短絡する都心直結線(浅草線短絡新線)、いわゆるバイパス新線の方が実現性はあります。
しかしこの地下鉄の整備優先順位は上位になっておらず、具体的な進展がありません。
また、京成線の押上-青砥での高速運転は、日暮里-青砥の本線と同様の線形、速度事情を抱えています
日暮里-青砥は9.4km、押上-青砥は5.7kmで、押上線の方が距離は短く、「アクセス特急」での所要時間は5分で、日暮里側と比べ5分の時間短縮を見込むことはできます。
新東京-押上-青砥の「スカイライナー」は10分を切れるかどうかは難しいところです。
また、押上線での特急退避駅は八広のみで、上下線共用の線路配置です。
新東京新線整備を行うならば、待避線を上下線別々に整備する必要があります。
課題として、曲線改良、優等列車の退避設備整備、ホームドア設置、車両性能の向上などを挙げました。実現のため、千葉ニュータウン内の交通施設帯の利用などの検討を求めました。
→ 千葉ニュータウン内の交通施設帯の利用とは、成田新幹線用の空いたスペースを活用した複々線化ということでしょうか。
現在は空間活用でソーラーシステムを配置しています。
元々が鉄道用地なので、活用方法としては有効です。
仮に新鎌ヶ谷-印旛日本医大で成田新幹線用地を活用して複々線化し、時速160km/h運転によりどの程度時間短縮ができるかにかかります。
JR、京成のいずれに関しても、運行本数増の課題として挙げられたのが、空港周辺の単線区間です。JRは成田~成田空港間、京成は成田湯川~成田空港間が単線ですが、増便するには、これを複線化し、線路容量を拡大する必要があります。
(中略)
単線区間の複線化は現実味がありそうです。単線区間は、JR、京成とも輸送上のネックとなっていますので、成田空港の利用者増が見込まれるなら、真剣に検討されそうです。
→ 成田スカイアクセス線の成田湯川-成田空港の複線化が、最優先の実施事項と考えます。
JRでは、東京-空港第2ビルの所要時間20分台は不可能であり、成田スカイアクセス線経由に投資する方が効果的です。
東京-空港第2ビルが78.2kmであり、日暮里からの成田スカイアクセス線61.0kmよりも距離が長いので、時間短縮に限度があります。
成田-成田空港を複線化しても、所要時間短縮は40分台が限度と考えられます。
また、東京からの直通快速は利用低迷か、千葉-成田空港の普通列車により千葉乗り換えを強いる状況となっています。
輸送力増強としては有効ですが、時間短縮面では不利です。
また、輸送力増強策としてはJRもありますが、京成本線での活用と方法もあります。
京成成田空港駅と空港第2ビル駅は、乗車ホームについて、スカイアクセス線と本線で縦列停車となっています。本線利用者は改札を2回通過する場合があるなど複雑で、旅客利便性の低下を招いていることから、スカイアクセス線と本線のホームを分けることが望ましいとしました。
→ ホームを分けることが望ましいですが、それは後の話で、優先順序として成田スカイアクセス線成田湯川-成田空港の複線化が先決と考えます。
提言では、このほか、航空と新幹線の連携強化のため、東京駅や品川駅との接続性の向上を求めたほか、北関東主要駅から成田空港への直通列車の新設の検討などを求めました。
→ この提言は成田空港に絞ってのものですが、羽田空港のことも視野に入れる必要があります。
「東京駅や品川駅との接続性の向上を求めたほか、北関東主要駅から成田空港への直通列車の新設の検討」の、「成田空港」の部分を羽田空港に置き換えても、丁度当てはまるからです。
すなわち、JR東日本が羽田空港新線建設に着手しているからであり、高崎線熊谷・高崎、東北線小山・宇都宮、常磐線土浦・水戸方面等から東京駅を経由しての羽田空港直結を実現させようとする計画です。
この計画は、成田空港直通列車を想定したものではなく、羽田空港の前提です。
高崎線・東北線から成田空港へは大宮-武蔵浦和-南流山-我孫子-成田-成田空港のルートでは時間短縮効果が出ません。
実現させるなら船橋法典-船橋の、武蔵野線から総武線への短絡新線県政になりますが、北関東対成田空港直通で、そこまでの新たな整備は疑問です。
総括:京成・北総・成田スカイアクセス線の整備に重点を
総合して考えると、成田空港の鉄道輸送強化については、京成・北総・成田スカイアクセス線への重点整備が優先と考えます。
JR東日本「成田エクスプレス」は、列車編成の長大化、輸送力確保はできるものの、東京-空港第2ビルの所要50分を40分台にするのが限度と思われ、費用対効果では弱まります。
整備の順序としては、第一に成田スカイアクセス線成田湯川-成田空港の複線化、第二に京急の羽田空港-成田空港の「エアポート快特」「アクセス特急」の20分間隔化と考えます。
20分台達成には、日暮里または押上と京成高砂の間に別線新線を造らないと無理ではないかと感じます。
成田空港アクセス所要時間は短いに越したことはありませんが、そこまでして所要20分台にこだわる必要性はあるだろうかという点に話は戻ってきます。
現在の「スカイライナー」は毎時3往復のうち2往復が成田空港最大高速列車、1往復が青砥と新鎌ヶ谷停車の準高速列車です。
青砥停車は押上線、都営浅草線からの便宜を図ったものですが、同時に乗車率向上もあったと思われます。
新鎌ヶ谷停車における、千葉ニュータウンから東京への速達、東松戸側からの成田空港速達、新京成と東武野田線との接続も同様で、乗り換え便宜と同時に乗車率対策もあると思われます。
青砥と新鎌ヶ谷停車の「スカイライナー」は日暮里-青砥で10分、青砥-新鎌ヶ谷12分、新鎌ヶ谷-空港第2ビルに19分、日暮里-空港第2ビルで計41分を要します。
再び通過扱いにするのは難しく、日暮里(または新東京)-空港第2ビルを29分で結べたとしても、この2駅停車列車では35分程度を要しそうです。
2駅通過に戻るなら「エアポート快特」「アクセス特急」の20分間隔運転、時速130km/h運転による本数増と時間短縮で理解を求めることになると考えます。
(※ 記載にあたり、2022年8月24日付け、タビリス「『スカイライナー 200km/h運転』など提言。成田空港アクセス検討会」、2023年10月2日付け、乗りものニュース「『成田まで20分』目指す京成『世界最速』から66年の小田急 スカイライナーとロマンスカー“中の人”対談 速さに必要なものとは」を参考にさせていただきました。)