普通車よりもグリーン車に優先して乗る人の心理と、得をした気分になれるグリーン車乗車区間の話です
筆者にとってグリーン車の利用と言えば最近まで、普通車が満席で座れず、どうしても座りたい時の救いの設備程度の位置づけでした。
とくにJR東日本のグリーン車座席を見ると、東北・上越・北陸の新幹線3路線は普通車との大きな差異が見出せますが、それ以外は積極的に利用したいという気持ちが起きず、最新の山形新幹線E8系でも普通車と同じ2&2席のままの配置では食指が動きません。
一方、年齢を重ねるとともに周辺の人たちがいつの間にか、普通列車よりも特急、特急よりも新幹線、普通車よりもグリーン車という考え方に変わっているように感じます。
「普通車でお金を節約したって、天国までお金を持っていけるじゃではないんだよ」
「グリーン車は楽だよ、静粛だよ」と言われることも増えてきたように思います。
筆者の場合、グリーン車で往復するなら、グリーン料金相当分でもう1回普通車で出掛けた方がいい、どうしても乗るなら帰路だけという考え方ですが人それぞれ年齢のほか、体調、価値感、金銭感覚などが異なります。
ただ、グリーン車に乗り慣れてしまうと、普通車には乗れなくなってくるだろうと思います。
楽を覚えると苦には戻れなくなります。
車購入時の世界でも似たものがあります。
グリーン車に乗り慣れている人は、あまり細かなグリーン料金の計算や料金節約術などとは無縁かもしれません。
筆者もグリーン車に後ろ髪を引かれる年齢になりましたが、性分ゆえ、東京から熱海に行く際、グリーン料金2,800円に対し、品川-熱海では1,300円という料金制度の中で、東京からグリーン車に乗るのは後悔してしまいます。
そもそも品川-熱海の「ひかり」30分乗車でグリーン車に乗ること自体が思いつかないので、同年代の旅行仲間からは徐々に相手にされなくなっていくかもしれません。
今回は、品川-熱海のように、グリーン料金の設定距離の上限に近い、得をした気分になれる新幹線や特急のグリーン車区間を紹介したいと思います。
グリーン料金の距離区分
新幹線と特急のグリーン車料金は基本的に下記の設定となっています。
・100キロまで:1,300円
・200キロまで:2,800円
・400キロまで:4,190円
・600キロまで:5,400円
・800キロまで:6,600円
・801キロ以上:7,790円
同じ新幹線でもグリーン料金が別計算で支出額が増える区間と増えない区間について
グリーン車でも同一列車は同一料金が基本ですが、それが適用されるのは東海道・山陽新幹線東京-博多だけで、山陽・九州新幹線新大阪-鹿児島中央、北陸新幹線東京-金沢などは料金設定の考え方が異なります。
具体的には下記のとおりです。
◆1 東海道・山陽新幹線東京-博多のグリーン料金(全線同一路線扱で安価)
東京-新大阪はJR東海の東海道新幹線、新大阪-博多はJR西日本の山陽新幹線で分かれていますが、東京-博多は国鉄時代からの料金通算、一本化方式のまま継承しています。
そのため、新大阪でのグリーン料金の会社別の別計算がないので、その分、安く乗ることができ、東京-博多のグリーン料金はお値打ちの安価区間と言えます。
◆2 九州新幹線東京-鹿児島中央のグリーン料金(新鳥栖から別路線扱で負担増)
東京-博多のJR東海・JR西日本の東海道・山陽新幹線のグリーン料金分と、JR九州の博多-鹿児島中央の九州新幹線のグリーン料金分とを、博多を境にそれぞれ別に算出し、両者を合算した額が東京-鹿児島中央のグリーン料金となります。
そのため、グリーン料金は通常イメージの金額よりも増額となっています。(以下、3~6も同様です。)
◆3 山形新幹線東京-新庄のグリーン料金(米沢から別路線扱で負担増)
全区間JR東日本ですが、東京-福島の東北新幹線のグリーン料金分と、福島-新庄の山形新幹線のグリーン料金分とをそれぞれ別に算出し、両者を合算した額が東京-新庄のグリーン料金となります。
東京や郡山から米沢・山形なども同様です。
◆4 秋田新幹線東京-秋田のグリーン料金(雫石から別路線扱で負担増)
全区間JR東日本ですが、東京-盛岡の東北新幹線のグリーン料金分と、盛岡-秋田の秋田新幹線のグリーン料金分とをそれぞれ別に算出し、両者を合算した額が東京-秋田のグリーン料金となります。
東京や北上から田沢湖・角館なども同様です。
◆5 北海道新幹線東京-新函館北斗のグリーン料金(奥津軽いまべつから別路線扱で負担増)
東京-新青森のJR東日本の東北新幹線のグリーン料金分と、新青森-新函館北斗のJR北海道の北海道新幹線のグリーン料金分とをそれぞれ別に算出し、両者を合算した額が東京-新函館北斗のグリーン料金となります。
東京や八戸から木古内なども同様です。
◆6 北陸新幹線東京-敦賀のグリーン料金(糸魚川から別路線扱で負担増)
東京-上越妙高のJR東日本の北陸新幹線のグリーン料金分と、上越妙高-敦賀のJR西日本の北陸新幹線のグリーン料金分とをそれぞれ別に算出し、両者を合算した額が東京-敦賀のグリーン料金となります。
東京や長野から糸魚川・富山・金沢・福井なども同様です。
得をした気分になれるグリーン料金区間の、各地の事例
冒頭、グリーン料金の例で、東京-熱海2,800円に対して、品川-熱海が半額以下の1,300円の例を出しましたが、熱海までの距離数が東京から104.6キロ、品川から97.8キロで大きく異なるケースでした。
品川-熱海97.8キロのように、100キロの区切りぎりぎりでの乗車は、グリーン料金として得をすると言えます。
同様に、新幹線に限らず200・400・600・800キロ直前の乗車距離ならば得をした気分になります。
反対に、100.1キロの乗車では100キロにたった0.1キロ超えただけでも200キロまでの範囲になってしまい、損をした気分になります。
以下、区分距離直前で得をするケースを、在来線も含めて記載します。
グリーン車連結状況は今後変わることもありますのでご了承ください。
東京-岐阜羽島396.3キロ
東京-新神戸589.5キロ
東京-福山791.2キロ
東京-博多1,174.9キロ(※全国最長区間)
品川-熱海97.8キロ
東京-古川395.0キロ
上野-二戸597.4キロ
大宮-郡山196.4キロ
東京-越後湯沢199.2キロ
大宮-浦佐198.6キロ
大宮-長野192.1キロ
上越妙高-小松195.7キロ(上越妙高はJR東日本とJR西日本のグリーン料金の別計算境界駅)
東海道線 東京-湯河原99.1キロ
中央線
東京-茅野195.2キロ
新宿-下諏訪196.0キロ
立川-松本197.9キロ
上野-泉197.2キロ
柏-勝田94.2キロ
奥羽線 秋田-青森185.8キロ
羽越線 新潟-府屋97.2キロ
高松-松山194.4キロ
岡山-伊予北条196.9キロ
高松-多ノ郷198.8キロ
岡山-伊野190.7キロ
博多-大分198.5キロ
小倉-佐伯197.8キロ
函館線 函館-幌別199.1キロ
なお、列車乗車後、普通車指定席、自由席からグリーン車への乗車変更は、空席があれば列車乗務員に現金での差額支払いにより可能なこともありますが、どの席がどこの駅から乗ってくるのか情報が不定の場合は変更できないこともあります。
Suica、クレジットカード等での支払いはできません。
また、列車乗車後、逆にグリーン車から普通車への変更は、申し出ても取り扱われません。
筆者は、グリーン車に乗るなら東海道新幹線東京-岐阜羽島であれば、「ひかり」でなく「こだま」に乗りたくなります。
優雅なグリーン席なら、長く乗っている方が一層得をした気分に浸れるからですが、こうした発想自体、グリーン車とは縁がないと再認識せざるを得ません。
ましてや高級なグランクラスや「四季島」などは別次元で、普通車指定席型の境地からほとんど成長していません。
グリーン車に乗るのは首都圏普通列車の100キロ以内の方が多い程度です。
東京-高崎は尾久から、東京-宇都宮からは赤羽から乗りたくなるようでは相手にされなくなっても仕方なく、自業自得(自損)ということになるでしょうか。
自分の知力、体力、精神力等が今後どの程度変化し、グリーン車に気心が変わっていくか、心境の変化を自分自身で観察してみたいと思います。