JRの会社境界となる各駅での影響はどうか
Merkmal(メルクマール)、2023年10月15日付け、「JRはなぜ『直通列車』を削減するのか? 国鉄分割がなかったら今より多く存続していたかもしれない」を拝見しました。
国鉄の旅客輸送がJR6社に分割され、JR間の直通列車が減っていることを指摘した内容です。
今回は、JR6社間の会社境界駅の設定は正しかったかどうかを見てみたいと思います。
なお、上記記事から転用させていただいた箇所については、太字で表記させていただいています。
予めご了承ください。
◆ 新青森
北海道新幹線開通後は、青函トンネルを通過する在来線旅客列車廃止により、東北新幹線との境界駅の新青森に変わりました。
青函トンネルがJR北海道の所管となったのは、トンネルの恩恵を受けるのが本州でなく北海道だからとの理論ですが、トンネルの維持管理を考えるとJR北海道だけに負わせるのは負担が大きすぎる課題があります。
かといって今さらJR東日本に変えることもできません。
瀬戸大橋のJR四国、関門トンネルのJR九州管理も同じ理屈で、本州よりも四国、九州が恩恵を被るとの考え方です。
JR3島と本州のJR3社との経営規模、経営状況を考えると、果たして青函トンネルと瀬戸大橋は今後の維持管理までJR北海道、JR四国でできるのかどうか。
◆ 東京
東京-熱海の在来線はJR東日本、新幹線はJR東海としたことが様々な問題を引き起こしました。
在来線と新幹線は同じJRの方が問題はなかったようにも思います。
そうなると、JR東日本、JR西日本の2社の方が望ましく、JR東海の設定自体の議論にも及んできます。
線路がつながっていることが全国網の鉄道の強みの中、東海道新幹線はJR東海、東北新幹線はJR東日本とした結果、東京駅での新幹線の線路はつながらないまま分断されています。
JR分割の象徴的光景で、国鉄時代に完成していれば線路はつながっていたはずです。
大多数は東京駅で降りることや、自社新幹線列車の遅れやダイヤの乱れを、相手方新幹線に持ち込むのは望ましくないというのが線路分断の一つの理由ですが、それは後で付けた理屈のように感じます。
JR東海とJR東日本との利害が一致せず、自社路線走行で完結すれば相手方との議論は不要になるとの方向性になったのは、非協調、不仲の産物にも見えます。
◆ 国府津
(以下引用)
御殿場線直通廃止について、JR東日本横浜支社は「当時の利用状況を勘案し、JR東海と調整の上、東海道線と御殿場線の相互直通運転を取りやめた」(企画総務部)
(以上引用)
かつては東京-御殿場直通列車がありました。
直通列車をなくしたのは直通需要が少ないというのが理由ですが、一方では小田急が御殿場直通特急を設定しています。
新宿-御殿場の特急直通需要はあるが、東京・横浜-御殿場の普通列車直通需要はないということでしょうか。
その根本には東京駅の新幹線同様の非協調を感じてしまいます。
◆ 熱海
おもて向きはJR東日本の15両編成に対して、JR東海は最大6両、一部は3両編成で、JR東日本の5分の1という事情はあります。
JR東日本の15編成が長すぎるとも言えますが、JR東海の3両編成が短すぎるとも言えます。
JR東海の熱海発着列車は5両以上の編成がほしいところです。
東京からの東海道線普通列車の沼津直通、東京-修善寺の特急「踊り子」設定は熱海のJR東海とJR東日本との境界線を感じさせませんが、熱海-三島の運転を省略して三島以西の列車を設定するダイヤには、東京-三島の東海道新幹線誘導を感じます。
◆ 甲府
中央線から身延線への直通運転がないことの影響は小さいと思われます。
◆ 辰野
飯田線は全線JR東海の運営で、辰野側は1往復を除き、岡谷までは乗り入れます。
一部は上諏訪、松本、長野まで乗り入れます。
JR東日本とは連携していると言えますが、名古屋からの中央線のJR東海受け持ちは塩尻までであり、塩尻-辰野はJR東日本となるため、JR東海としては辰野-塩尻18.2kmがつながらなくなっています。
これはJR東海にとって不憫なことであり、岡谷-辰野-塩尻はJR東日本からJR東海で設定すべきだったと考えます。
◆ 塩尻
中央線東京-塩尻-名古屋で見れば、塩尻を境にJR東日本とJR東海に分けたのは良いとして、中央線の枝線である岡谷-辰野-塩尻は上記の辰野同様、JR東海所管が望ましいと考えます。
◆ 直江津
◆ 上越妙高
北陸新幹線のJR東日本とJR西日本の境界駅としては、旧北陸線直江津同様、上越妙高が順当と考えます。
また、会社境界駅に係わらず、上越妙高を通過する「かがやき」、停車する「はくたか」ともに、JR西日本の乗務員が上越妙高-長野で乗務する考え方も同様です。
◆ 南小谷
松本-南小谷の電化区間はJR東日本、南小谷-糸魚川の非電化区間はJR西日本としましたが、電化、非電化に係わらず大糸線全線をJR東日本にしてもよかったように感じます。
長野-松本-南小谷の電化区間だけを走る「リゾートビューふるさと」は、非電化区間の南小谷-糸魚川まで延長運転してこそハイブリッド気動車の強みが活かせるのに、自社電化区間だけを走るのは不可思議です。
JR西日本区間であっても非電化区間の糸魚川まで直通しないのはJR西日本区間だからということに帰結してしまいます。
◆ 新大阪
東京でのJR東海とJR東日本同様、新大阪ではJR東海とJR西日本との軋轢を感じます。
新大阪以西を受け持つJR西日本にとっては、東京からの東海道新幹線列車が新大阪で折り返されては辛い点が、東京駅でのJR東海とJR東日本とは異なります。
◆ 米原
JR西日本の東海道線普通列車がJR東海区間に乗り入れなくなり、JR東海とJR西日本との非協調を感じさせます。
ただし、名古屋-米原-敦賀の特急「しらさぎ」、大阪「ひだ」は別です。
◆ 猪谷
貨物列車の猪谷-富山の設定と、かつての神岡線分岐の関連かと思われますが、大糸線南小谷同様、全区間がJR東海の方がよかったように考えます。
◆ 亀山
名古屋-亀山の電化区間、名古屋圏をJR東海として、亀山以西をJR西日本としましたが、JR西日本は加茂以西の電化区間は力を入れるものの、非電化区間の亀山-加茂は全く力が入らないように映ります。
かつてはJR東海が名古屋-奈良に急行気動車を設定したこともありました。
名古屋-奈良はJR西日本よりもJR東海の方がよかったのではと感じます。
その場合、加茂-奈良の電化と大阪直通でJR西日本と協調していたか、別の議論はありますが。
◆ 新宮
紀勢線の電化区間はJR西日本、非電化区間はJR東海という分かりやすい分け方です。
特急「南紀」が紀伊勝浦まで乗り入れている点で、JR東海とJR西日本の協調を感じます。
◆ 児島
妥当な区間分けですが、青函トンネルのJR北海道管理同様、瀬戸大橋の管理がJR四国では負担の大きさが気になります。
また、今後の四国新幹線建設に当たり、岡山-児島もJR四国だったらと考えても仕方ありませんが、同区間がJR西日本所管であることや、岡山県の費用負担の議論も再燃しそうです。
◆ 博多
かつて、山陽新幹線小倉-博多の所管をJR九州が要望していたと聞きますが、九州内ですからある意味では当然とも言えます。
東京-新大阪がJR3社でなく、JR東海で割り切ったと同様、新大阪-博多もJR西日本で割り切った結果です。
◆ 下関
(以下引用)
JR九州は「利用状況の変化にともない相互乗り入れするメリットが薄れたため、下関駅での乗り換え体系を確保することで相互乗り入れを取りやめた」(広報部)
(以上引用)
最大の理由は、電車としては交流電車だけを新製してきたJR九州は、関門トンネル用に交直両用電車の新製はしたくないということと考えます。
関門トンネル内は直流電化で、門司駅に入る直前で交流電化に切り替わります。
貨物列車は小倉側に切り替え地点があります。
JR九州の電車新製は交流電車のみで、交直両用電車は新製しておらず、今後も新製はしない方針のように思われます。
そのため国鉄時代からの415系を下関-門司の最短区間運用にして、少しでも長く使おうとしていると考えます。
415系の限度がきた時点で既存のハイブリッド車を充当または新製するかと思われます。
少なくとも新たな交直両用電車での置き換えは行なわないと考えます。
JR分割による夜行列車廃止の加速について
(以下引用)
歴史に「もし」は存在しないが、仮に国鉄が分割していなかったとしたら、会社間直通の旅客列車は「現状よりも多く存続していたかもしれない」と想像する。
(以上引用)
JR分割になった以上、自社管内優先は必然です。
まず自社の列車体系を固めてからJR他社との直通列車を考える順番になり、後回しになるのは避けられません。
JR他社との考え方の違い、利害関係、収入支出の精算が伴うためであり、自社管内の列車ならこのことに手間と時間は要しません。
そのことを前面に出しての議論を避けるため、「利用状況の変化」「利用状況を勘案」という言葉で通しているようにも映ります。
JR東日本・東海・西日本・九州の4社にまたがる東京-九州の寝台特急の廃止がJR分割による各社事情優先の産物にも見えます。
新幹線や飛行機の定着もありますが、夜行列車需要を伸ばす意欲はなくなりました。
2社でさえ調整がやっかいなのに、4社調整はどのJRもしたくないと思われます。
夜行列車としては長距離ではない東京-大阪の「銀河」は東海道線を3分割にされたため、各社にメリットがない部分ばかりが前提の議論となったように感じます。
東京-大垣の夜行普通列車「ムーンライトながら」、新大阪-博多・高知・松山の「ムーンライト九州・高知・松山」もJR分割廃止の象徴にも見えます。
JR1社であっても同じ結果だったかどうかになりますが、新大阪と四国ならば、JR西日本またはJR四国の特急電車による「ムーンライト松山」の存続はなかったかと感じます。
「サンライズ出雲・瀬戸」の貴重なJR4社連携
「サンライズ出雲」の本州JR3社直通、「サンライズ瀬戸」のJR四国を含めた4社直通は、国鉄時代の伝統が今も生きている唯一の例であり、その意味でも存続が望まれる貴重な存在です。
今一度、東京-大阪、大阪-博多にJR西日本683系余剰車による昼間の観光列車、夜行の「銀河」「ムーンライト博多」などはできないかと、無い物ねだりは承知の上で夢だけは描き続けたいと思います。
(※ 記載にあたり、2023年10月15日付けMerkmal、「JRはなぜ『直通列車』を削減するのか? 国鉄分割がなかったら今より多く存続していたかもしれない」を参考にさせていただきました。)