ハイブリッド気動車が電化から非電化区間目前で電化区間に折り返すJR境界悲劇
JR西日本では、立山黒部アルペンルートの周遊用として京阪神、姫路、岡山、広島を起点とした「立山黒部アルペンきっぷ」を4月から11月まで発売しています。
そのコースの内訳として「北陸線・中央線経由タイプ」と「往復北陸線経由タイプ」があります。
「北陸線・中央線経由タイプ」は、発駅-東海道・湖西北陸・北陸新幹線-富山-富山地方鉄道-立山-アルペンルート-信濃大町-松本-名古屋-東海道・山陽新幹線-発駅の経路で、逆回りもあります。
信濃大町-松本-名古屋は列車本数のある一般的なコースです。
JR西日本・JR東日本・JR東海の3社路線を通過する意味では貴重な切符とコースです。
一方、「往復北陸線経由タイプ」は、発駅-東海道・湖西・北陸・北陸新幹線-富山-アルペンルート-信濃大町-大糸線-糸魚川-北陸新幹線・北陸・湖西・東海道線-発駅の経路です。
逆回りもあるのは同様です。
JR西日本とJR東日本の2社のコースで、JR東海の路線を通過しないのが特徴です。
今回は、「立山黒部アルペンきっぷ」の「往復北陸線経由タイプ」について考えてみました。
往復北陸線経由タイプのコースでは、利用が少なく、将来が議論されようとしている大糸線非電化区間の南小谷-糸魚川経由でコースが組まれているのが特徴です。
南小谷-糸魚川の直通列車は7往復で、アルペンルートを経由しての乗り継ぎ時間を考慮すると乗れる列車は狭まります。
信濃大町または糸魚川で宿泊しない場合、7往復中、日中3往復程度の列車選択になります。
同じ大糸線経由でも、「北陸線・中央線経由タイプ」で松本へ向かう列車は20往復以上あります。
大糸線は南小谷で電化と非電化とに分かれ、同時に南小谷でJR東日本とJR西日本とに所管が分かれています。
ここで2022年度の大糸線の区間別平均利用人員を見てみます。
〇 松本-豊科:7,944人
〇 豊科-信濃大町:3,170人
〇 信濃大町-白馬:666人
〇 白馬-南小谷:188人
アルペンルートでは大糸線が通過コースに組まれるのが自然ですが、糸魚川方面で組まれた場合、JR会社の違い、電化の違いもあって列車利用が不便になっているようにも思われます。
JR東日本はJR西日本と協調連携で「リゾートビューふるさと」の糸魚川延長を
JR東日本は篠ノ井線・大糸線の長野-松本-南小谷に、観光列車としてハイブリッド気動車「リゾートビューふるさと」を運転しています。
気動車でありながら、運転区間は全区間電化されている区間であり、せっかくの気動車投入ですが非効率にも映ります。
南小谷をまたぐ松本-糸魚川の全線直通運転列車は設定されていません。
JR東日本が大糸線に貴重な観光列車として「リゾートビューふるさと」をハイブリッド気動車で投入しているならば、JR西日本と連携、協調して長野-松本-糸魚川の直通列車は設定できないでしょうか。
糸魚川延長運転すれば、それこそハイブリッド気動車の特性を活かすこともできます。
「リゾートビューふるさと」の運転時間は、長野10時04分発→南小谷14時04分着、南小谷15時16分発→長野18時31分着となっています。
「リゾートビューふるさと」の長野発を8時30分前後とし、南小谷12時30分頃着→糸魚川13時30分頃着で設定し、折り返しは糸魚川14時00分発→南小谷15時00分着として、南小谷以降は現在と同様、南小谷15時16分発→長野18時31分着で設定してはどうでしょうか。
JR西日本はJR東日本に対して車両使用料の支払い等が生じますが、大糸線末端区間の活性化と合わせ、アルペンルートとしての利便性向上、誘発策として効果はあるのではないかと考えます。
大糸線南小谷-糸魚川を現状のまま、地道に普通列車を走らせるだけでは現状のままの状況が続くだけのように思います。
また、本来、東京-富山の鉄道通過ルートには中央線、大糸線経由による新宿-松本-糸魚川-富山のルートもあります。
このルートの開拓もしてほしいところですが、大糸線で南小谷からJR西日本の区間に変わることにネックがあるようにも感じます。
北陸新幹線が東京-金沢で上越妙高の境界に関係なくJR東日本とJR西日本が協調していることとは対照的ですが、次元や状況が異なります。
蛇足ですが、「立山黒部アルペンきっぷ」で、富山地方鉄道宇奈月温泉側に乗車できないのは残念です。
2024年は黒部キャニオンルートも開拓されます。
それを機に、電鉄富山-宇奈月温泉-立山のコースも含めてはいかがでしょうか。
大糸線を電化区間の状況も加味して、南小谷でJR東日本とJR西日本とに分割しましたが、この判断が正しかったかどうかは疑問も残ります。
結果論ではありますが、大糸線全線をJR東日本にする考えはなかったのでしょうか。
当時の北陸線全線がJR西日本だから、糸魚川の側はJR西日本、松本側は東京からの直通客を考慮してJR東日本ということでしょうか。
少なくともJR東日本が大糸線全線を管理していたならば「リゾートビューふるさと」は糸魚川まで運転していたのではないかと思われます。
少なくとも南小谷で折り返すことはしないように感じます。
南小谷での分割はJR境界駅によるマイナスの産物にも映ります。
前記、2022年度の平均利用人員で、南小谷-糸魚川の108人が全線では最も少ないながらも、白馬-南小谷は188人、信濃大町-白馬は666人であり、将来の不安が伴います。烏山線、男鹿線のような蓄電池駆動電車システムにより、南小谷側の電化設備については、南小谷折り返し停車中に充電することでの、途中区間の電化設備の撤去も想定されます。
大糸線全線がJR東日本なら、南小谷-糸魚川の非電化区間の気動車をそのまま白馬、信濃大町まで延伸運転もできるのにと思います。
高山線猪谷-富山のJR西日本と、岐阜-猪谷のJR東海も同様です。
猪谷-富山の貨物列車事情もあったようですが、高山線全線がJR東海でないのはいけなかったのだろうかと、大糸線と類似した印象を抱きました。