山陽「のぞみ」対前年6%減の状況と利用回復策を考えます
旅行総合研究所タビリス、2024年5月8日付け、「『のぞみ』全車指定席化の影響浮き彫りに。新幹線利用者数ランキング2024年GW版」を拝見しました。
JR各社から発表のあった2024年ゴールデンウィークの新幹線利用状況をまとめたもので、分かりやすい内容と鋭い分析はいつもながら素晴らしく思います。
この記事の後段で、山陽新幹線の利用者離れに触れた内容があります。
記事の一部を運用させていただきます。
(以下引用)
山陽新幹線は、新大阪~西明石間で対前年度比が3%減です。内訳は、「のぞみ」が6%減、「ひかり」「こだま」が1%減、「みずほ」が8%増、「さくら」が6%増となっています。「みずほ」「さくら」の人気が高まったことがわかります。
全車指定席化により、「のぞみ」の利用者が減り、「ひかり」「さくら」「みずほ」といった自由席連結の速達列車に流れたことが見て取れます。「のぞみ」全車指定席化の影響が浮き彫りになったといえるでしょう。
~中略~
山陽区間の6%は減りすぎの観があります。
全国的に見ても、今年のゴールデンウィークで利用者を全区間で減らしたのは、山陽新幹線だけです。
山陽新幹線は「のぞみ」の加算料金が高く、ピーク時の指定席料金が割高なので、全車指定席化による利用者離れが生じた可能性もありそうです。
(以上引用)
今回は、山陽新幹線区間における「のぞみ」の利用減について考えてみたいと思います。
山陽新幹線「のぞみ」の割増料金値上げ、最繁忙期料金、自由席着席不可の三重苦の結果?
記事の最終段で、山陽新幹線「のぞみ」利用減の要因として加算料金、ピーク時の指定席料金、全車指定席化と分析されており、ご指摘のとおりと思います。
ここでゴールデンウイーク期間に、博多から新大阪までを事例に、山陽新幹線で移動の際、利用者は列車の選定について、どのような思考の流れがあったのか、平均的なところを想定してみたいと思います。
毎回のことですが、何の根拠もない勝手な想像ですので予めご了承ください。
【博多→新大阪のゴールデンウィークの列車選定順序】
1「さくら」指定席 → 2「みずほ」自由席 → 3「さくら」自由席 → 4「みずほ」指定席 → 5「のぞみ」指定席 → 6「のぞみ」の自由席特急券でのデッキ立席 →7「こだま」指定席、の順序かと考えます。
【列車選定の流れ】
① 博多-新大阪で「のぞみ」が「さくら」に対して、740円割り増しとなる。
最繁忙期の400円割り増しと併せて計1,140円の負担増なる。
「のぞみ」乗車の場合、自由席がなく、空席利用不可のため、デッキでの立席となる、
② 博多-新大阪の所要時間で「のぞみ」(所要2時間28分)は「さくら」(同2時間36分)より8分速いだけで差額740円は見合わない。
③ 「のぞみ」指定席の3&2席より快適であり、通常期と比べ最繁忙400円増だけで済む2&2席の「さくら」指定席が第1候補。
④ 「さくら」指定席が満席で自由席なら、同じ料金で「さくら」より速い「みずほ」自由席を選ぶ。
途中停車駅で運がよければ着席の機会があるのも「のぞみ」より有利な「みずほ」自由席が第2候補。
⑤ 「みずほ」自由席同様、運次第で着席の機会がある「さくら」自由席が第3候補。
⑥ 運がよければ座れるとはいえ、ゴールデンウイークでの「さくら」「みずほ」自由席は全区間立つ可能性が高いので、料金負担と列車設定時間に制約はあるが2&2席の「みずほ」指定席が第4候補。
⑦ 上記と同様の理由だが、座席配置が3&2席の「のぞみ」指定席が第5候補。
⑧ 料金は節約でき、所要時間も最短だが、一切着席できないことを承知で約2時間半のデッキ乗車となる「のぞみ」自由席特急券でのデッキ乗車が第6候補。
⑨ 最後に「こだま」の2&2席の指定席が第7候補。
博多-新大阪直通「こだま」で所要約4時間から4時間30分前後。
日中の一部時間帯は岡山止まりで「ひかり」(新大阪まで各駅停車)乗り継ぎは40分から50分前後の待ち時間のため、避ける。
のぞみ割増料金、最繁忙期料金、自由席特急券着席不可が「のぞみ」を避けた
博多-新大阪も、新大阪-東京も「のぞみ」所要時間は同じ2時間30分以下です。
東海道新幹線東京-新大阪では、「のぞみ」(所要2時間30分)と「ひかり」(同2時間54分)では所要24分差、料金差320円です。
これに対し、博多-新大阪は「のぞみ」と「さくら」が8分差、740円差です。
740円に最繁忙期400円加算もあって山陽「のぞみ」が避けられたと思われます。
「さくら」は東海道「ひかり」の2タイプ列車の合算的な停車駅と役割で
ゴールデンウイークの「のぞみ」全車指定席の方針は、JR東海の考えに合わせるしかないと思われます。
ただし、JR西日本は2023年4月から山陽「のぞみ」料金を改定したことでJR東海とは状況が異なります。
加算額は新大阪を基準にみると、岡山まで110円、広島まで320円、博多まで420円の増額でした。
コロナ禍、テレワーク等の影響はあるにせよ、東海道と比べ山陽「のぞみ」が割高の印象を与えました。
ゴールデンウイーク期間中、博多-新大阪の利用者は飛行機、高速バス、マイカーなどに転移したかどうかは定かではありません。
しかしながら「みずほ」「さくら」の利用が前年より増えているということは、「座れなくても乗れれば十分」という山陽での「のぞみ」立席の利用者の受けとめ方が、東海道のようには理解してもらえなかったということになるでしょうか。
それは、同じ2時間30分前後の乗車時間でも東海道とは異なること、「のぞみ」料金の高額、「さくら」とほぼ同じ移動時間、「さくら」より劣る座席設備、空席での着席不可等の総合的な結果でした。
「のぞみ」の利用回復は博多-新大阪の「のぞみ」割増料金を再度見直し、最終的には引き下げるしかないと思われますが、2023年に料金を改定したばかりなので現実的でないかもしれません。
しかし博多-新大阪の740円差は大きすぎました。
「さくら」は東海道の「ひかり」相当の役割とすれば、後続「のぞみ」に追い抜かれない前提で今後、停車駅を姫路、福山、徳山、新山口は全列車停車、西明石、新下関は一部列車停車とするのはどうでしょうか。
東海道に例えれば静岡停車型「ひかり」と、米原停車型「ひかり」とを同一列車で一本化するようなイメージです。
また、それにより「のぞみ」の現行所要時間の速さを打ち出すもので、「さくら」の若干の所要時間増は「のぞみ」待避がないことで理解を得る趣旨ですが、いかがでしょうか。
(※ 記載にあたり、旅行総合研究所タビリス、2024年5月8日付け、「『のぞみ』全車指定席化の影響浮き彫りに。新幹線利用者数ランキング2024年GW版」を参考にさせていただきました。)
(※ 写真は本文と無関係です。)