平行普通列車

常磐線と新京成に魅せられた者のブログです

「スーパーはくと」が姫路折り返しになった場合の効果と影響を考える

もしも「スーパーはくと」が姫路-倉吉の運転に変わった場合の影響を考えます

鉄道コらム、2023年11月5日付け、「『スーパーはくと』が京都駅へ来なくなるかも? 運転区間短縮でも利便性向上目指すカラクリは」を拝見しました。

この中で、現在の山陽線智頭急行経由の特急「スーパーはくと」の京都-倉吉を姫路-倉吉として山陽線区間のほとんどをカットすることにより、毎時1往復運転も可能となる反面、JR西日本から車両リース収入がなくなる悩ましさに触れた部分があります。

記事の中から一部を引用させていただきます。

 

(以下引用)

「(JRとの交渉において)内々に向こうから話があるのは、(略)それは姫路で折り返すということです。姫路で折り返せば、当然ながら、それだけこっちに回す時間帯が増えますので、山陰側のほうの増便の可能性というのは確かにあるのです(後略)」

~中略~

一方で平井知事は、仮に「スーパーはくと」が姫路駅発着に短縮された場合、京都~姫路間の「車両使用料」が入ってこなくなることに懸念を示しています。「スーパーはくと」の場合、智頭急行が所有する車両を、JR線内ではJR西日本に貸していることになるので、その分のレンタル料がJR西日本から智頭急行に支払われています。この分の収入が減るということは、鳥取県などが出資する第三セクターである智頭急行の経営悪化につながりかねず、平井知事はこの件に関しては「簡単にはちょっと乗れない」「私どもとしては非常に悩ましい」と答弁しています。

(以上引用)

 

スーパーはくと」姫路発着でのJR西日本の考え方が、東海道山陽線京都-姫路でのレンタル料を避けたいことだけが根本にあるのか、新幹線と重複する区間は新幹線誘導の方向性もあるのかは定かではありません。

 

姫路で新幹線との接続は良好か?

現在の「スーパーはくと」と新幹線の列車ダイヤの現況を整理してみます。

 

〇 現在の「スーパーはくと」の姫路発着時刻は、下り姫路発は20分発、上り姫路着は24分着が基本

〇 姫路停車の新幹線「のぞみ」は、下り46分着、上り59分発が基本

〇 姫路停車の新幹線「ひかり」は、下り33分着、上り11分発が基本

なお、新幹線「さくら」「みずほ」は、姫路を通過する列車もあり、毎時同時刻発着ではない。

〇 現ダイヤのまま京都-姫路の運転をなくす場合、姫路での新幹線接続待ち時間は下りで34分、上りは35分となる

〇 姫路-新大阪は「のぞみ」で所要29分だが、指定席料金2,810円、自由席でも1,760円が伴う

※「ひかり」の場合、所要35分、指定席は2,490円

 

スーパーはくと」を姫路止まりとして毎時運転とした場合の車両状況

スーパーはくと」は定期6往復、週末と多客期は7往復で、現在は京都-倉吉を約3時間30分、京都-鳥取は約3時間で結んでいます。

姫路-倉吉の区間だけ見ると所要約2時間、姫路-鳥取は約1時間30分です。

スーパーはくと」の車両は智頭急行所属のHOT7000系気動車、一列車5両編成で1994年から2002年にかけて計34両製造されています。

 

京都発着をやめて、仮に姫路-倉吉に毎時1往復設定とした場合、鳥取側にその需要があるかどうかになってきますが、34両保有の必要性は薄れてきます。

政府公開の統計データでは、2022年度鳥取駅の1日の平均乗降客数は7,836人、倉吉駅3,186人です。

鳥取県全体の住民基本台帳年報人口は、2023年1月1日現在546,558人ですが、全国でもっとも低い数値なのはやや気になります。

 

一方、伯備線で来春から投入される「やくも」用新型273系は4両編成で投入されます。

スーパーはくと」を姫路発着で毎時1往復化の設定ならば3~4両編成が適当かと思われます。

 

スーパーはくと」姫路止まりの影響について

次に「スーパーはくと」が、京都-大阪-姫路の設定がなくなった場合の影響を見てみます。

 

〇 智頭急行にとっては、JR西日本から支払われている車両レンタル収入を失う

〇 旅客にとっては、大阪-鳥取利用の際、姫路での山陽新幹線乗り換えの手間のほか、新幹線特急料金の支出が増える

〇 姫路で新幹線との接続時間が長すぎると、新幹線乗り継ぎ効果が薄れる

〇 新幹線では新神戸、新大阪での乗降となり、在来線「スーパーはくと」の神戸、大阪発着に比べて不便。

また、新神戸、新大阪から神戸、大阪に移動する必要性から、新幹線の時間短縮効果が薄れる。

※ 現ダイヤで姫路-大阪の所要時間は「スーパーはくと」で54分、新快速で62分

 

スーパーはくと」の姫路発着時刻見直しについて

山陽新幹線姫路発着の定期列車は、「スーパーはくと」と姫路での接続は考慮していない時刻設定です。

現在は大阪直通運転なので問題はありませんが、姫路止まりとなりと乗り継ぎ時間は重要になってきます。

 

姫路での山陽新幹線山陽線の乗り継ぎ標準時分は8分とされています。

山陽新幹線ダイヤが変わらない前提で考えれば、上り「スーパーはくと」は姫路49分着で、59分発の上り「のぞみ」に乗り継ぐのが理想となります。

下りの場合、「のぞみ」は45分着なので、「スーパーはくと」は55分発が理想となります。

「ひかり」接続ダイヤとする場合、西明石で「のぞみ」通過待ちがあり、新幹線乗り継ぎのマイナス面がさらに表面化すると思われます。

 

姫路-大阪移動で新幹線を選ぶか

スーパーはくと」が姫路折り返しの場合、大阪まで新幹線を選ぶかどうかを考えてみます。

 

〇 新幹線で新神戸、新大阪乗り継ぎよりも、在来線での神戸、大阪発着の方が便利

〇 「スーパーはくと」で姫路-大阪は所要54分

〇 新快速で姫路-大阪は所要1時間02分

〇 姫路-新大阪の「のぞみ」指定席料金2,810円、自由席でも1,760円が必要

 

姫路乗り換え、新幹線特急料金負担、新神戸、新大阪発着は新幹線誘導に不利な状況です。

新大阪-岡山の新幹線と伯備線、四国特急乗り継ぎもこれと似ていますが距離、所要時間、新快速発着の有無、山陽線網干-和気の列車本数の少なさ等が姫路と岡山で異なります。

 

その結果、姫路から大阪に向かう際、15分間隔の新快速に乗り継ぐのではないかもと想定されます。

前記しましたが、姫路-大阪の所要時間は「スーパーはくと」で54分、新快速で62分です。

8分の時間差と姫路乗り換えが生じますが、特急料金は不要となります。

姫路始発の点も新快速に目を向ける要素です。

ただし大阪から鳥取へ向かう場合、新快速は大阪始発でないため、着席保証はなくなります。

新快速利用に流れていくとすれば、JR西日本は新快速9号車のAシート化の増加による座席確保の対応が望まれるところです。

 

大阪発着の播但線はまかぜ」はどうか

山陽線大阪-姫路に乗り入れるという意味では、播但線経由の特急「はまかぜ」も「スーパーはくと」と似たような状況です。

ただし「はまかぜ」はJR西日本車両であり、「スーパーはくと」の智頭急行所有車両とは異なります。

はまかぜ」ならばレンタル料の必要がないので大阪発着を継続するのか、「スーパーはくと」同様に「はまかぜ」も姫路発着として大阪直通を見直すのかも注目されるところです。

 

以上の拙論は鳥取-大阪移動を列車選択することが前提の内容です。

姫路乗り換えが負担になって高速バス等に転移しないかも慎重に見極める必要があります。

スーパーはくと」の新車の話題が出てきていますが、どのような編成内容か、「はまかぜ」の大阪発着とともに状況を注視したいと思います。

 

※写真は本文と無関係です。