「奥出雲おろち号」の木次線全線と「あめつち」出雲横田止まりのとの差異の将来暗示
5月2日付けでJR西日本と日本旅行から、木次線の団体旅行企画として「観光列車あめつちが木次線を特別運行します 松江・出雲市・備後庄原発日帰り旅行商品発売」が公表されました。
今回は、木次線とこの旅行プランについて考えてみました。
木次線「あめつち」乗り入れについては、2022年12月4日の拙「奥出雲おろちの後、あめつち投入でどう変わるか?」でも触れましたが、一部重複する箇所はご了承ください。
旅行内容は以下の3コースです。
(1)松江8:49発で下り「あめつち」乗車【6月4日(日)・11日(日)発、8,800円】
出雲横田11:19まで「あめつち」乗車後、沿線をバスで観光し松江17:15頃。
(2)出雲市8:10頃発で上り「あめつち」乗車【6月4日(日)発、7,500円】
バスで途中観光後、出雲横田11:56(昼食弁当付き)-松江14:07で「あめつち」乗車。
(3)備後庄原8:40発で上り「あめつち」乗車【6月11日(日)発、9,800円】
バスで途中の「道の駅おろちループ」で約25分停車し、備後落合9時20分発木次行き列車を見送ってから別の観光地を見ながら、出雲横田11:56(昼食弁当付き)-松江14:07で「あめつち」乗車。
松江からバスで観光し備後庄原18:00頃。
いずれのコースも「あめつち」は片道のみ2時間11分または2時間30分の乗車で、往復「あめつち」乗車はありません。
行程の半分はバスでの観光移動です。
とくに備後庄原のコースは列車よりもバスの乗車時間が長くなります。
以前、「奥出雲おろち号」は木次線内の停車駅での停車時間が短すぎ、地元店舗が潤わないという内容の記事を見たことがあります。
「あめつち」は沿線での買い物が期待でき、歓迎することも書き添えられていたのが頭をよぎりました。
今回の3コースには木次線の見どころ、出雲横田-備後落合は入っていません。
備後庄原のコースには、道の駅おろちループで休憩し、木次線列車を見送る企画が組み込まれています。
しかし木次線乗車を楽しみに申し込んだとしたならば、道の駅からの列車見学では欲求不満にならないでしょうか。
おろちループからの展望と、木次線列車を見ることは観光ポイントではありますが、乗れない区間の列車走行を見送るのは複雑な思いを抱きます。
今回の「あめつち」松江発のコースを例にとれば、出雲横田11時19分到着後、出雲横田13時11分発備後落合行き定期列車まで約2時間は「あめつち」列車内での昼食や、同駅付近での昼食、買い物で過ごして備後落合行き列車に乗り継ぎ、備後落合14時33分着後、そのまま14時43分発列車で折り返し、出雲横田へ15時54分に戻った後、再び「あめつち」を出雲横田17時00分発で設定し、松江に戻る企画も立ててほしいところです。
その際、出雲横田-備後落合の列車は49席のキハ120形単行のため、「あめつち」と木次線全線乗車体験企画の際は2両編成化の配慮が望まれます。
なお、出雲横田からの帰路を17時00分発とするのは、下り列車との交換駅(加茂中、木次、出雲三成)を考慮したものです。
「あめつち」木次線特別運行プランは今後も随時行われると予想されますが、出雲横田-備後落合の先行きが気になってきます。
「あめつち」を出雲横田止まりで設定する背景には、表面上はキハ47形による急勾配不可事情があるものの、出雲横田-備後落合を将来の方向性議論対象として進めようとしているのではないかと、うがった見方をしてしまいます。
また、「あめつち」は「瑞風」よりもさらに手ごろに、身近に感じられつつ山陰を満喫できる列車」の触れ込みで、山陰線鳥取-出雲市を主体とする列車であり、木次線への設定はその間合い運用のようにも映ります。
少なくとも「奥出雲おろち号」のような木次線主体の列車と映らないのは惜しまれます。
区間別平均通過人員(輸送密度)で、出雲横田-備後落合は2020年度18人、2021年度35人でした。
芸備線東城-備後落合の2020年度9人、2021年度13人に次ぐ下位順でした。
利用状況からすれば出雲横田-備後落合の将来論議は避けられないところですが、少なくとも現路線があるうちは定期列車ダイヤを活かした団体旅行企画も望みたいところです。
※写真は本文と無関係です。