洗面所をトイレ内に配置したことで、利用回転率を悪くしていないか?
昨日の「JR東海373系は2号車にもトイレ洗面所の増設を」の関連編です。
洗面所・トイレの話題が続きますがご了承ください。
JR九州の特急は他のJR5社の特急と一線を画す存在で、JR特急の中でももっとも華やか、優雅、デラックスであり、ビジネス列車であっても列車に乗る楽しみを作った功績は大きいものがあります。
国鉄時代の485系を受け継いだ際は他社に先駆け、いち早く車体色を自社カラーの赤色に変えてレッドエクスプレスとも呼ばれ、過去の時代から脱却しようとする姿勢が感じられました。
今さらですがJR九州の特急車両形式と列車名を順不同で整理します。
●電車特急
〇 783系:みどり、ハウステンボス、きらめき、かささぎ
〇 787系:にちりん、にちりんシーガイア、ひゅうが、きりしま、リレーかもめ、きらめき、かささぎ、かいおう、36ぷらす3
〇 885系:ソニック、リレーかもめ、みどり、みどり(リレーかもめ)、かささぎ
●気動車特急
〇 キハ47形:指宿のたまて箱、かわせみ やませみ
〇 キハ125形:海幸山幸
〇 キハ183系:あそぼーい!
以上のほかに新幹線車両として800系、N700系、N700系S、クルーズトレインとして77系客車「ななつ星 in 九州」があります。
◆洗面所・トイレを一体化したJR九州の特急
JR九州特急の特色の一つに、在来線特急の洗面所とトイレの一体化(トイレ内に洗面所設置)があります。
簡易の手洗い場や鏡設置ならまだしも、本格的な洗面所をトイレ内に移動、組み込みました。
他のJR特急、私鉄のトイレ設置特急では国鉄時代からの伝統を受け継ぎ、洗面所とトイレを分離しているのが通常です。
他のJR5社にないJR九州特有のこだわりの配置です。
トイレの歴史をさかのぼれば、列車内のトイレから直接線路に放出していた環境上の経過もあって、特急・急行の洗面所はトイレの向かい側に別配置としています。
その後、列車トイレは地上線路上の環境問題の観点から貯留式、循環式、浄化排水式、真空吸引式汚物処理装置へと変化していきました。
いわゆる垂れ流し問題は解決しました。
JR九州は汚物処理、トイレ内の臭気解決と併せ、洗面所とトイレを一体化し、洗面所の独立配置を廃止しました。
トイレの後は手洗いの流れになる意味ではトイレ内の洗面所設置は合理的とも言えます。
◆洗面所・トイレ一体化配置の二つの課題
しかしながら、洗面所・トイレ一体化には二つの課題があります。
一つは、トイレは使用しないが手を洗いたい時や大きな鏡で容姿を見たい時に、トイレに入るほかには術がなくなったことです。
列車下車後に駅ですぐに人と合流する場合など、列車洗面所の大きな鏡を見て、容姿を整えてから降りたくなるのは自然な流れです。
洗面所が独立した配置であってこそ、それが果たせます。
もう一つは、トイレ使用後、洗面台の鏡を見ながら容姿を整えるケースが発生する結果、トイレ入室時間が長くなり、次の人の待ち時間が延びることです。
通常ならば用が終わればすぐに出て、洗面所へ移動し、次に待っていた人はすぐ入室できます。
しかしJR九州の列車ではトイレ内で容姿も整えることとなり、その間、トイレは活用されずに遊休化します。
トイレ使用が済んでいても室内使用時間が長くなり、外で待っている人は下車駅到着時間が近づいてくると、列車トイレの使用を見送らざるを得なくなります。
通常の洗面所・トイレ分離型ならば少なくともJR九州のような両者一体型方式よりもそれぞれの使用時間は短くなり、利用回転率はよいはずです。
他のJR、私鉄特急が一体型方式に追従していないのは、洗面所のみの単独利用時の配慮や、トイレ内で容姿を整えること等でのマイナス面、トイレ回転率等の総合判断と感じられます。
同じJR九州でも九州新幹線、西九州新幹線の洗面所・トイレは分離型方式です。
とくに九州新幹線800系はJR九州内のみの運用であり、洗面所・トイレの一体化配置はできたはずですが、N700系を考慮したのか、一体型配置を見送っています。
JR九州は新幹線利用者の分離型方式との使用状況、利点と課題を今一度比較してみる余地があるのではないでしょうか。