特急編成で3両に1か所だけのトイレ洗面所では混雑する
特急として、身延線「ふじかわ」、飯田線「伊那路」、臨時急行として「飯田線秘境駅号」、東海道線「ホームライナー静岡」「(同)浜松」「(同)沼津」、一部普通列車の間合い運用があります。
JR東海は汎用形車両を持たない会社ですが、他のJR汎用形車両形式と比べていくと、373系は汎用形に位置付けられる中庸型タイプの電車です。
臨時列車として特急、急行、快速、普通列車まで、JR東海のすべての直流電化区間で対応可能な、応用範囲の広い柔軟性のある形式だからです。
373系は1995年から1996年にかけて製造され、すべて3両単位で14編成、計42両あります。
新製後28年が経過しますが、まだしばらく活躍すると思われます。
今後とも長く活躍するならば、373系で希望したいこととして洗面所、トイレ(以下、「トイレ」)の増設があります。
373系のトイレは1号車クハ372形の1両のみの設置で、2号車と3号車にトイレは設けませんでした。
◆特急のトイレ状況
国鉄時代の特急列車は各車両にトイレの設置のケースがほとんどでした。
寝台列車では1両に2か所のトイレ配置でした。
新幹線も2両に1両単位のトイレ配置ですが、トイレのある車両では2か所にトイレが設けられ、男性小用もあるのが特徴です。
JRになってからは、特急列車のトイレの配置数が見直され、2両に1か所のケースが多く見られるようになりました。
そのかわりに和式から洋式化に変更されたほか、一部車両の電動車椅子対応化、男性小用を併設したケースが定着したほか、おむつ交換台、ベビーチェアの併設事例も見られます。
トイレの設置数は減ったものの、内容は充実したと言えます。
373系の3両全体の定員数は179人で、1両平均約60人ですが、ここで特急列車の始発駅から終着駅までの平均乗車時間を見てみます。
飯田線「伊那路」豊橋-飯田は平均2時間33分、最長2時間40分。
臨時急行「飯田線秘境駅号」は飯田→豊橋4時間49分、豊橋→飯田5時間40分です。
「飯田線秘境駅号」は乗車率が高い反面、5時間40分もの長時間、179人乗車でトイレ1か所では無理があります。
列車の性格上、秘境駅で一定時間停車しても駅トイレ配置自体が期待できません。
「ふじかわ」「伊那路」は2時間30分近い乗車で、3両に対してトイレ1か所では少なすぎると考えます。
◆373系の2号車のトイレ増設による1編成でのトイレ2か所化を
373系は短い3両編成でありながら、3か所計6区画24席分のセミコンパートメント席を配置したのが特徴です。
トイレは3両に1か所でいいだろうという考えのフォローとして、セミコンパートメント席を配置したようにも感じます。
1号車クハ372形は51席、編成中、唯一トイレのある車両(号車)で「ふじかわ」「伊那路」では指定席となります。
2号車サハ373形は68席、室内の両側の車端部にセミコンパートメント席を設けたのが特等です。
3号車クモハ373形は60席、2号車寄りにセミコンパートメント席を設けています。
3両編成の状況からすれば、1号車と3号車にトイレがあることが理想なので、3号車のセミコンパートメント席を撤去してトイレ化改造するのが望ましいと考えます。
ただし3号車は編成中唯一の電動車なので、床下機器が多い事情があります。
そのため、3号車ではなく2号車を対象として、3号車寄りのセミコンパートメント席を撤去してのトイレ化改造の方が問題が少ないと考えます。
トイレ設置の場合、床下に真空式汚物処理装置の設置が伴います。
1号車クハ372形の既存のトイレの客室側にトイレを増設して、真空式汚物処理装置は既存のトイレと共用する選択肢もあります。
この場合、汚物処理装置の増設置がなくなる利点はあります。
新幹線や寝台列車のような、トイレは2か所、汚物処理装置は1か所で共用と同じ思想にするものです。
しかしトイレ側の乗降ドアを運転席側に寄せる工事が伴うほか、3号車側から離れたトイレ位置のイメージは変わらないため、2号車へのトイレ増設の方が適当です。
373系の今後の稼働年数にもよりますが、「飯田線秘境駅号」の5時間40分走行も加味して、JR東海には「ふじかわ」「伊那路」「飯田線秘境駅号」の運用編成を中心にトイレ増設の検討をお願いしたいところです。
編成定員は8人減、171席となりますが、8人分減収とトイレ工事費負担を考える前に、利用がさほど多くないローカル特急とはいえ東海道線・中央線静岡、甲府、豊橋発着の列車であり、3両編成には2か所のトイレが必要との認識が望まれます。
※写真は本文と無関係です。