平行普通列車

常磐線と新京成に魅せられた者のブログです

大井川鉄道旧型客車列車 金谷-家山3往復の哀愁

片道17.1km、3往復102.6kmの鈍行列車再現

大井川鉄道大井川本線の金谷-千頭39.5kmは、2022年9月24日の台風15号による土砂災害で全区間の運転を見合わせていましたが、12月16日から金谷-家山17.1kmで運行を再開しています。

金谷-千頭の本線全体で見ると全線に対して43%の走行距離です。

不通区間の復旧は被災状況と資金繰り(資金援助)、復旧後の鉄道のあり方等について様々な角度から今後の方向性を探っています。

 

金谷-家山の区間で、客車普通列車の話題があります。

「令和に蘇った、昭和の日常 普通客レ」として、6月20日から6月末までの間の7日間に、定期普通列車の一部を電車から客車列車の代走に変更して運転していますが、好評により7月1日から13日までの毎日、運転日を延長しました。

全車自由席で特別料金不要、乗降扉付近の一部の座席は通勤・通学利用の地元の人の優先座席としています。

 

◆旧型客車列車の持ち味

金谷-家山の同区間3往復ゆえに車窓変化はないものの、貨物列車と同じ自動連結器同士での空間ができるため、発車、加速、ブレーキ、停車時、それぞれに特有の揺れがあります。

木製車体の空気感、文字どおりの「網」の荷物棚、素朴な小型蛍光灯、白熱灯、乗客が手動する扇風機、手動ドアなど懐かしさがあります。

暑い時期、暑がりの人は扇風機をすぐに回すボタンを押し、寒がりの人が来ると扇風機を停めるボタンを押すことの繰り返し光景が見られました。

 

手動扉で開閉自由のため、機関車が発車前に警笛を鳴らすのも旧型客車の風物です。

同鉄道HPでは旧型客車の魅力について、鉄道ファンの心理を捉えて語られています。

昭和の日常は令和の非日常、動き出すときの独特な揺れ、機関車から聞こえる重厚なモーター音、開いた窓から感じる爽やかな風、無骨で不器用な列車での旅も今ではあまり体験できない懐かしい思い出、過ぎ去ってしまった懐かしい日常に浸れる列車、昭和10年代~30年代製の年季の入った渋い客車、渋い電気機関車牽引、令和の日常を昭和の客車列車が走る、等々。

なお、電気機関車は家山側がE101形で1949(昭和24)年製、金谷側が元は西武鉄道のE32形で1986(昭和61)年製です。

 

◆運行行程

新金谷16:10発(※金谷ではありません)→家山16:37着、16:52発→金谷17:25着、17:38発→家山18:10着、18:25発→金谷18:58着、19:10発→家山19:42着、19:57発→金谷20:30着、20:40発→新金谷20:44着で、金谷-家山3往復です。

日が長い時期のため、家山最終折り返しの19:57発までは車窓も見られます。

なお、終着駅の到着時刻が最大5分ほど遅れる場合があるとのことですが、旧型客車に揺られている間、時間を忘れる気持ちの余裕を持ちたいものです。

 

東京へ戻る場合、東海道線金谷20:56発→静岡21:27着→東海道新幹線乗換→22:11発「ひかり666号」→東京23:06着です。

静岡では新幹線に4分間でタイミングよく乗りかえられれば、静岡21:31発「ひかり522号」→東京22:27着になります。

ただし優雅だった旧型客車の余韻をよそに、慌ただしい4分乗り換えで、新幹線の別世界高速列車で東京に戻ることは今回、お勧めしません。

 

◆客車3往復の思い入れの乗り方

せっかくの懐かしい客車列車に乗れるなら、無理をしてでも3往復に乗っておきたくなります。

金谷-家山は830円で、3往復なら大井川本線フリーきっぷ3,500円で乗ります。

時間が許せば金谷駅近郊での宿泊、余裕がなければ新幹線での東京日帰りもできます。

 

鉄道車窓は右側と左側では異なります。

下りと上りでは、同じ方向を見ているとはいえ、賑やかな方向を目指すか、ローカルな方向かによっても印象は変わります。

夜は、車窓が得られない分、客車列車の走行音、線路のつなぎ目やポイント通過時の音、機関車の警笛、踏切、連結器など、音を中心に浸り、薄暗い車内での暗い夜の孤独感を味わいます。

 

新金谷16:10発列車では進行方向右側、家山折り返しも右側。

金谷折り返し16:52発列車では左側、家山折り返しも左側。

最後の1往復の金谷19:10発は夕暮れの車窓。

家山19:57発→金谷20:30着は列車走行音と揺れに浸ります。

 

◆余談1:直流機関車の片側パンタグラフ光景

以下は余談です。

筆者の大井川鉄道の隠れた楽しみは、電気機関車の、前側パンタグラフを下ろしている状態を見ることです。

直流電気機関車は通常、2基のパンタグラフを上げますが、大井川鉄道では後ろ側のパンタだけを上げて走行するのは珍しいことです。

一見すると交流電気機関車のような光景です。

かつて、東北線黒磯駅をはじめとする直流機関車の入れ替えでは、片側パンタの光景が見られましたが、本線走行は両パンタ使用が原則です。

大井川鉄道の片パンタ理由として、架線張力がJR線ほど強くなく、一方、機関車のパンタは上昇力が強いため、両パンタを使用すると張力の弱い架線の上昇により離隔不足の可能性があるためとみられます。

その分、機関車はパワーを制限して運転しますが高速運転は要求されず、架線保守面でもパンタは少ない方がよいこともあるかと思います。

 

◆余談2:上野発の客車普通列車

過去の旧型普通客車列車の話です。

1982年の東北新幹線開通前まで、東京付近でも普通客車列車は案外多くありました。

筆者の愛好した普通列車は以下の列車でした。

〇 上野11:23発東北線123列車→一ノ関22:42着

〇 上野12:36発常磐線223列車→仙台21:32着

〇 上野15;13発常磐線425列車→平19:52着(現:いわき)

〇 上野6:15発高崎線2321列車→高崎8:53着→乗換→高崎9:49発→信越線321列車→長野12:52着

 

蛇足の蛇足ですが、上野15時13分発普通列車平行きの「平」は拙ブログの題名にしている愛好列車、愛好の行き先でした。

常磐線の機関車EF80形、同じく東北線EF57形にも魅せられましたが、EF57がEF58に代わって牽引していると元気が薄れたりした、贅沢な時代でした。

交直流機EF80は、直流区間の両パンタと交流区間の両パンタとで、どちらが似合うのだろうかと、今は少なくなったEF81形を見ながら思い起こします。

(※大井川鉄道は正式には「大井川鐵道」です。)

 

※写真は本文と無関係です。