平行普通列車

常磐線と新京成に魅せられた者のブログです

JR東日本の機関車は今後何両残るか?

事業用機関車の電車・気動車化で、観光列車のみの運行に特化

JR東日本は6月1日付けニュースリリースで、「上野駅開業140周年 ~感謝の気持ちを込めて上野駅の魅力を発信します~」と題した記念列車の運転や行事を実施する内容を公表しました。

記念列車として、上野駅開業日の7月28日(金)に昭和レトロをコンセプトに、団体専用臨時列車「上野駅高崎線開業140周年記念号」をEF64電気機関車牽引の12系客車で運行します。

上野11時30分頃発、高崎14時32分頃着、所要約3時間の片道運行です。

募集人員は300人、企画・実施はJR東日本びゅうツーリズム&セールスです。

また、8月18日(金)には上野から秋田へ「カシオペア紀行秋田行」を運行します。

この二つの企画の共通点は、機関車牽引の客車列車であることです。

 

◆事業用の機関車用途の廃止

JR東日本は2021年に機関車牽引列車の代替として、新型砕石輸送気動車と事業用電車の導入、2022年5月には新型砕石輸送気動車および事業用電車の量産車新造を発表しており、レール輸送にキヤE195系事業用気動車、砕石輸送にGV-E197系気動車、E493系事業用電車を導入しています。

 

リリース内容によると、電車・気動車方式により、機関車・貨車特有のメンテナンス方法や運転操縦を廃し、効率的なメンテナンスを可能とする。

GV-E197系においては、編成の両端に運転台を有するため、機関車の位置を付け替える作業を廃し、作業効率化を実現する。

GV-E197系は高崎エリアに、E493系は首都圏エリアに、それぞれ2021年春以降に先行投入。性能試験を実施した後に、運用を開始する。

機関車固有の多くのメンテナンスを要する複雑な構造から、最新の電車・気動車と同様の構造にすることで、省メンテナンス化を実現する。

電気機関車はカム軸、接点などの機械部品を多用による保守のほか、直流電動機のブラシ、整流子の保守が必要。

ディーゼル機関車は、液体変速機、推進軸、減速機などの機械部品の保守が必要。

新型の電気式気動車、事業用交直流車への置き換えにより、主変換装置に半導体を使用し、電車と同じシステムで動力を伝達するほか、誘導電動機はブラシ、整流子がなくなり、いずれも省メンテナンス化を実現する。

以上の概要が謳われています。

 

◆「SLばんえつ物語」「SLぐんまみなかみ」「SLぐんまよこかわ」用の機関車確保

JR東日本保有の主な機関車として電化区間用EF81、EF64EF65ED75、非電化区間用DE10があります。

機関車牽引の事業用列車は2024年度末までに置き換わるとの話がありますがその後、JR東日本に機関車はどの程度残るのでしょうか。

 

事業用の用途がなくなると、観光用の用途だけになります。

「SLばんえつ物語」の蒸気機関車と予備用(補助用)ディーゼル機関車、「SLぐんまみなかみ」「SLぐんまよこかわ」の蒸気機関車と補機用電気機関車です。

蒸気機関車の検査等の都合により、「SLばんえつ」「SLぐんま」は「DLばんえつ」「ELぐんま」「DLぐんま」に変わることもあります。

 

「ばんえつ」「ぐんま」はSL・EL・DL、客車それぞれの機関車の保守、維持管理、部品確保等の状況にもよりますが、この2列車の電気機関車ディーゼル機関車の両数としては数量程度の保有で十分かと思われます。

 

◆「ばんえつ」「ぐんま」以外の観光需要

ただし、「ばんえつ」「ぐんま」以外にもJR東日本には以下の三つの機関車需要が残っています。

① 「カシオペア」の牽引

カシオペア」用E26系は1999年の新製です。

上野-札幌の列車がなくなったとはいえ、JR東日本の豪華列車の一つであり、上野-新津-秋田-青森を中心に当面は走ると想定されます。

上野-札幌に「カシオペア」があった時、専用機関車EF510形500番台を新製しながら、北海道への用途がなくなるとともにJR貨物に転属させたのは象徴的です。

カシオペア」を当面運用するならEF510を残してもよかったように感じます。

EF81の車齢の高さを踏まえながらもEF81で十分との考えかと思われますが、それだけJR東日本は「カシオペア」への意欲減退のように映ります。

意欲は2017年登場の「TARAIN SUITE 四季島」に傾いていったと思われます。

しかしながら「カシオペア」への一定需要も評価しているはずです。

したがって、高崎・上越信越・中央線用のEF64EF65、東北・常磐線用のEF81は限度いっぱい使用すると思われます。

 

② 12系客車、旧型客車の、各地への団体臨時列車設定に伴う機関車用途

団体列車、臨時列車として客車列車が設定されれば、おのずと機関車が必要です。

DE10は非電化区間であっても、機関車乗り入れの軸重制限のある路線であっても柔軟性があり、使いやすい機関車です。

ED75は交流専用のため秋田、仙台周辺に用途が限られます。

近年の、他地区への主な設定列車を見てみます。

〇 「房総西線客車列車の旅」2022年6月11日、内房線千葉-館山往復、DE10と12系。

〇 急行「津軽」2022年7月2日~3日、奥羽線秋田-青森往復、ED75と12系5両。

〇 「水郡線復旧記念感謝号」2022年3月26日~27日、DE10と12系3両。

〇 「喜多方しだれ桜満喫号」2023年4月16日、新津-喜多方往復、DE10と「SLばんえつ物語」12系7両

〇 「左沢線全線開通100周年号」2022年4月23日~24日、山形-左沢往復、DE10形と旧型客車3両。

〇 「ツガル ツナガル号」2023年4月1日~2日、秋田-弘前を両日1往復、12系の前後にDE10形連結。

〇 「DLすいぐん号」2022年12月3日~4日、水戸-常陸大子往復、DE10重連と12系5両。

〇 「再会、只見線号」2022年10月1日~2日、会津若松-只見を両日往復、DE10と旧型客車3両

 

これらのイベント列車は、機関車と客車で設定してこそ価値や意義があるものかどうかの判断となります。

これまでの実績から、車両が使用できる範囲ならば電車、気動車でなく機関車と客車の設置でいこうかとの姿勢が感じられます。

今回の「上野駅高崎線開業140周年記念号」でいえば、EF64形+12系客車と、185系やE257系との効果比較の結果といえます。

その意味でまだしばらくは機関車需要もあると感じられます。

 

③ 車両基地等での機関車イベントの扱い

ぐんま車両センターを中心に、機関車見学、運転体験等を数多く行なっています。

これらの集客力、話題性、費用対効果の見極めです。

近年、参加費が高価になっていますが、参加者が多いということはそれだけ参加者が参加の価値を認めていると言えます。

通常の列車運行の合間として、行事用にも機関車を活用するのか、見学専用に機関車を残していくのかになりますが、臨時列車運行の必要機関車数を精査し、列車運用のない時は機関車見学をする形になるかと思われます。

何両残すのかは難しい所ですが、一例としてED75でいえば走行区間が短く特定される(秋田-青森、仙台-山形・郡山・盛岡)ため、秋田と仙台に各1両で充分ではないかと考えます。

今後の機関車状況を見守りたいと思います。

 

※写真は本文と無関係です。