「72本」だから36往復?「72往復」で144本?
2023年6月23日付け「JR『羽田アクセス線』は特急専用路線になる、その3つの根拠」(ITmedia ビジネスオンライン)を読みました。
インパクトのある、読みごたえのある内容です。
今回は、この中で驚いたことが2点あった箇所に触れたいと思います。
随所に引用箇所がありますが、ご了承ください。
◆1日72本とは36往復か?72往復(144本)か?
冒頭部分で、「報道によれば『当面は毎時4往復』(東京新聞)、『1日72本の運行が予定される』(朝日新聞)とのこと。」とあります。
そして、「毎時4往復だと、等間隔で運行したとしても片道15分間隔だ。1日72本は36往復で、単純に割り算すると稼働時間は9時間だ。都心の通勤電車は5時ごろから24時過ぎまで19時間も稼働する。概算工事費2800億円の大プロジェクトなのに、9時間稼働は短すぎないか。」と続いています。
9時間稼働では短すぎるのは確かです。
ここで「1日72本の運行が予定される(朝日新聞)」こと、「1日72本は36往復で、単純に割り算すると稼働時間は9時間」で「9時間稼働は短すぎないか」の疑問点のあと、「その貴重な運行本数を普通列車や快速列車に使うにはもったいない。JR東日本は『成田エクスプレス』と同様に特急料金をいただく『特急羽田エクスプレス』専用にするつもりではないか」との内容で展開されます。
また、中段では「朝ラッシュ時、夕方ラッシュ時の運行は避けて、10時~17時、20時~22時台の運行になる。これで9時間稼働とつじつまが合う。」としています。
「(JR東日本は)運行本数が少ない中で利益を最大化するために特急料金をいただきたい。」ということが1日72本、36往復とすれば全列車特急設定に説得力を持ちます。
36往復設定というのは確かなのでしょうか。
ここで、話の前提となる「1日72本、36往復」について、ほかではどのような記述をしているかを見てみました。
タビリスの2020年5月11日記事、「羽田空港アクセス線、列車本数『当初案の2倍超』の振り分けは?」の中で、「2019年5月に公表された東山手ルートの環境影響評価書によりますと、羽田空港アクセス線の運転本数は毎時8本、1日144本を予定しています。」とあります。
また、同2021年1月21日記事、「JR羽田空港アクセス線、鉄道事業許可の詳細。2029年度開業めざす」の中では、「運行計画は片道あたり1日72本で、毎時4本です。」との記述です。
次に、乗りものニュースでは、2019年5月30日の「羽田空港アクセス線、区間ごとの建設方式が明らかに 東京都が環境調査の計画書を公表」の中で、「(JR東日本が提出した『羽田空港アクセス線(仮称)整備事業』の環境影響評価⦅環境アセス⦆調査計画書の)運転計画では、15両編成の列車(1両の長さは20m)に対応。運転本数は1時間8本、1日144本とされています。」とあります。
また、2021年1月23日の「羽田空港~東京駅18分 大きく動き出すJR東日本『羽田空港アクセス線』どんな路線に?」では、「運転本数は?」の項で「片道1時間あたり4本、1日あたり72本の運行が計画されています。」とあります。
「1日あたり72本」は、往復72本だから36往復なのか、72往復だから144本なのかまでは判別できませんでした。
Wikipediaでは、運転計画の項で「15両編成まで対応し、運転本数は8本/時・144本/日を計画する。2020年5月には、『当初案の2倍強の運転本数を確保』との報道があった。」との記述で、144本/日=72往復と理解されます。
◆1日「72往復」では?
すべて調べたわけではありませんが、以上を見ていくと72の数値は往復本数=36往復ではなく、片道本数=72往復ではないかと思われます。
また、はたして1日36往復設定、始発から10時前までと、17時以降20時前までは運転しない前提の中で、総事業費約2800億円をかけた大プロジェクトを実施するかとなると、72往復の結論になってきます。
最後の部分で、「特別料金なしで行きたい人には東京モノレールも京急電鉄もある。」という割り切りがありますが、羽田空港アクセス線で全列車特急による特定時間のみの運用は、現実的にないように思われます。
◆東海道線上り「踊り子」「湘南」が東京折り返しで羽田空港へ向かうか?
2点目として、毎時4往復の特急列車の路線内訳で、常磐線(「ひたち」「ときわ」のどちらか)、高崎線、宇都宮線方面(久喜から伊勢崎線または栗橋から日光線)、東海道線(熱海方面からの「踊り子」「湘南」)ということに触れます。
以下は、1日72往復設定であろうとも、JR東日本の営業施策的に、全列車特急列車で設定するだろうという仮定での内容です。
常磐線は勝田まで主要駅停車の「ときわ」ならまだしも、上野-水戸ノンストップのいわき方面の遠距離「ひたち」が羽田空港に乗り入れるとは思えません。
東北線(宇都宮線)方面は、久喜から伊勢崎線または栗橋から日光線に触れていますが、東武とだけ直通して、県庁所在地の宇都宮発着列車を設定しないとも思えません。
むしろ東北線(宇都宮線)方面の直通主体は宇都宮であり、一部が久喜から伊勢崎線または栗橋から日光線という位置づけと想定しますが、逆でしょうか。
高崎線は、「草津・四万」「あかぎ」の5両編成のまま羽田空港直通とは思われず、高崎で分割併合して、高崎-羽田空港は10両編成運転と思います。
東海道線は、いくら羽田空港直通が便利であっても、そもそも上り「踊り子」「湘南」で東京駅まで乗車後、そのまま折り返して東京-田町を重複走行しながら羽田空港に向かうとは想定できません。
東海道沿線の人は、乗り換えの億劫さはあっても横浜で下車し、京急のエアポート急行で羽田空港に向かうと思われます。
ちなみに、特急「踊り子」で横浜-東京は22分、東京駅折り返しを5分、東京-羽田空港18分で合計すると45分を費やします。
京急のエアポート急行で横浜-羽田空港は約27分、横浜で10分の乗り換えと列車待ちを加味して37分です。
約40分とすれば東京折り返しと5分しか差がなく、それなら東京折り返しで乗り換えのない方がよいと判断するでしょうか。
東海道線として見れば田町-東京4.6kmの重複ですが、京急と比較して見れば蒲田-東京14.4kmもの重複があります。
以上ですが、筆者は2023年4月9日付けの拙「JR東日本羽田空港アクセス線 2031年度開業ダイヤを予測する」で触れましたが、羽田空港に乗り入れるのは特急でなく普通列車であり、常磐線2往復、東北線と高崎線が各1往復と想定しています。
また、この4往復の中で、常磐線特急と、久喜経由で太田までの東武伊勢崎線特急設定の話題にも別途触れましたが、それは一部時間帯だけの例外であり、基本は普通列車と考えています。
羽田空港アクセス線の列車設定にはいろいろな考えや視点があると改めて認識しました。
いずれにしても、JR東日本の路線網を活かした羽田空港へのアクセス利便性向上を前提に、いろいろな考え方や知恵を出しながら、利用者にとって良い方向に向かえばと思います。
(※記載にあたり、ITmedia ビジネスオンライン、タビリス、乗りものニュース、Wikipediaを参考にしました。)