平行普通列車

常磐線と新京成に魅せられた者のブログです

スマホ、ネットにはない時刻表冊子の意義とは?

デジタルにはないアナログの時刻表の話です

インターネット、スマホタブレット等(以下、「ネット」)が普及・定着してから社会全体が大きく変わり、鉄道関係も変化してきました。

鉄道での変化の一つとして、時刻表を見る機会が減った、見なくなったことがあります。

一例として駅から駅への列車移動時刻を調べる際、ネットでは発車時刻、到着時刻、列車名、発着番線、運賃、料金、乗り換え回数、途中停車駅数、距離数、第2から第6候補列車等まで、瞬時に示されます。

列車だけでなく飛行機、高速バス、路線バス、フェリーの情報も迅速で、結論を急ぎたい時に重宝します。

その点、時刻表での手間と時間ではネットに及びません。

 

一方、ネットにより失ったものの一つとして、人との会話がありました。

ネットのない時代は、鉄道旅行での列車相談(移動時間、お勧め列車等)で他の人から相談を受けては時刻表を見て回答し、結果的にそれが人との距離を縮めてくれる効用がありました。

今は各自がネットで調べ、瞬時に正確な回答が出るので相談の必要がなくなり、人に相談する気遣いがないかわりに会話がなくなりました。

 

ネットで十分だからと時刻表がなくなったとしたら、鉄道趣味で見れば楽しみを一つ失います。

筆者は時刻表の意義、価値を以下のように考えます。

 

◆鉄道の全体像が見えやすい

全国の鉄道路線網、路線名称、駅名、並行する鉄道路線、主要バス路線網、フェリー等が索引地図で瞬時に理解できます。

地図で全体像を把握してから各地の路線のページに移る、森を見てから木を見る流れができます。

ネットは最初から木を見る(自分の知りたい情報部分だけを見る)もので、鉄道路線全体の森は見ない結果、別に鉄道全体を見る必要はないという考えを生みます。

 

ここでふと、仕事に例えるのも不謹慎とは思いますが、職場全体の動きを踏まえてから自分の位置づけや役割を見るか、自分の担当分野だけを見るかの違いを思い起こしました。

 

◆他の路線ページ移動がしやすい

時刻表は索引地図でページを1枚めくれば隣の地方が瞬時に見られます。

元のページに戻りたければ、1枚戻せば見られます。

パソコンのマウス、スマホの指先による画面移動作業と、その画面からの地図を見るよりも、時刻表の地方別地図の方が勝ります。

 

◆付箋紙が貼れる

時刻表という紙の媒介には、後でもう一度見たい箇所がある時、該当ページに付箋紙を貼付する行為ができます。

メモ書きも添えられます。

パソコンのリターン機能、検索履歴よりもすぐに戻ることができます。

戻れる早さ、重要箇所の付箋紙行為は、スマホタブレットに勝ります。

 

◆紙上旅行がしやすい

事前に旅行計画を立て、列車を調べることは実際の旅行よりも面白い旨を、「時刻表二万キロ」の著者、紀行作家の宮脇俊三氏も随所で書いていました。

時刻表での乗り換え路線、接続列車を調べ、想像をめぐらすのも時刻表の楽しみの一つです。

接続が良ければ喜び、接続が悪ければ嘆く、一喜一憂の世界です。

 

実際に出掛けず時刻表での列車乗り継ぎの紙上旅行もできます。

いわば自己満足の想像旅行です。

これらを楽しみと思えば鉄道趣味になります。

通常ならば億劫、面倒がり、その結果、時刻表から遠ざかります。

旅行会社のツアーに申し込んだ方が楽で安く、効率的ということで定番コースをたどることになります。

 

◆自分のこだわりを楽しみやすい

過去の国鉄時代の事例です。

東海道・山陽新幹線東京-博多の最速列車が6時間56分の頃、0系「ひかり」編成の8号車は食堂車、9号車にはビュフェがありました。

食堂車の営業は日本食堂、ビュフェとうきょう、帝国ホテル列車食堂、都ホテル列車食堂の4社があり、とくに都ホテルの営業列車は少ない状況でした。

その中で、東京-博多を4列車の乗り継ぎで、全4社の食堂車で食べ比べをすべく、効率よく乗れる時間帯はないかを調べるのも楽しみのうちでした。

 

東京-札幌は東北線か、青函連絡船か、函館線か、いずれかで夜行列車(船)を選択しました。

東京-九州は新幹線か、東京から夜行か、新大阪で新幹線から夜行乗り継ぎか、寝台特急か、座席急行か。

選択肢が多くあり、どれが自分に効率的かを思案します。

夜行は移動には便利ですが、車窓が得られないので、また昼間に乗り直す必要があるかにも悩みます。

 

また、本数の少ないが路線は多いローカル線を、北海道・東北・山陰・四国・九州の各ワイド周遊券でいかに効率よく回るかという時、ネットならすぐに答えが出るにせよ、時刻表で調べる行為を楽しみます。

前記、宮脇俊三氏は、時刻表は見るのではなく読むという説でした。

 

◆頭の衰えを予防する

時刻表であれこれ列車を調べることは、結果的に頭の老化予防にもなると思われます。

ネットは回答が即座に出る分、考える時間を与えないので楽(らく)をする習慣が身に着きます。

楽を覚えると、手間をかけていた時代には戻れなくなります。

ネットの便利さゆえ、自分の必需品になり、スマホやネットがないと居られなくなり、それがスマホ依存症、ネット依存症になってきます。

 

再度の蛇足ですが、その依存症になると、自分の電話番号さえ覚える発想をしなくなります。

電話番号を覚えなくても必要ならその都度、スマホで番号を見ればよいという発想に変わります。

窓口で自分の情報を書く際、電話番号欄になるとスマホで探すのも日常的になりました。

自分の番号でさえ覚えないのですから、他の人の番号など覚えません。

道を覚える際もGPS機能に頼り、交差点にある目印の店舗を覚えることもしなくなりました。

調べること、覚えることをしない結果、脳が遊んでしまい、それが衰えを早くするようにも思いますが言い過ぎでしょうか。

蛇足、余談が多くなりましたが何卒ご寛容ください。

 

ダイヤ改正後の列車状況や、定期列車と臨時列車の時刻関連を見る時も時刻表の方が便利です。

冊子のページをめくることは、パソコンで次画面に移る時とは違う安心感があります。大げさかもしれませんが、時刻表の紙という媒介と、ページをめくるという行動に気分転換、癒しがあります。

ネットが普及するほど、時刻表に判官贔屓、感謝の気持ちもあります。

だったらこんなブログなどやめろということとは、話は別です。

おこがましいですが、拙ブログの提言で、考え方の違いや誤りもあるでしょうが、多少でも鉄道界のお役に立てればと思っています。

ネットの恩恵に授かりながらも、時刻表冊子を脇に置いて調べては悩み、その悩みも楽しみのうちと理解しています。

いつも拙ブログを見てくださっている皆様には、この場を借りて改めてお礼と感謝をいたします。

今後ともよろしくお願いします。