新たな豊肥線肥後大津直通2往復が更に熊本延長の可能性を考えてみました
2023年7月14日のNEWSポストセブン「被災をきっかけに廃止やBRT転換が目立つローカル線 それでも全線復旧した南阿蘇鉄道と只見線がとった方法」を見ました。
その中で、待望の7月15日全線開通に沸く南阿蘇鉄道の話で、南阿蘇鉄道の列車の熊本直通に触れている箇所がありました。
以下、引用させていただきます。
南阿蘇鉄道の列車が熊本市まで直通できれば、通勤・通学の足としての需要も期待できる。
しかし、南阿蘇鉄道は非電化路線で、豊肥本線は肥後大津駅から熊本駅までが電化区間となっている。
直通列車が走らない理由は電化・非電化だけではないだろうが、現段階では「熊本駅まで乗り入れるという話は出ていない」(南阿蘇鉄道再生協議会事務局の担当者)という。
引用箇所は以上です。
今回は、南阿蘇鉄道の熊本乗り入れについて考えたいと思います。
南阿蘇鉄道の全線運転再開で、豊肥線肥後大津まで2往復が乗り入れることも話題となっています。
自社線内にとどまらず、豊肥線の乗り入れたことは画期的であり、政令指定都市熊本への将来の乗り入れを期待させる第一歩とも感じます。
熊本-肥後大津-立野の所要時間の状況
肥後大津は熊本空港の最寄り駅であり、阿蘇くまもと空港駅の愛称を持ちます。
同駅から空港までは運賃無料、所要15分の「空港ライナー」(ワンボックスカーの乗合タクシー)が運行されています。
この所要時間からすると肥後大津駅の愛称は「阿蘇くまもと空港入口駅」の方が適切と感じますが、同駅から熊本空港までは2034年度開業を目標に熊本空港アクセス鉄道として熊本県とJR九州が建設に合意しています。
豊肥線熊本-肥後大津22,6kmは電化されていて、約33分程度で結びます。
豊肥線は単線のため、特急でも普通列車と同程度の時間を要しています。
肥後大津-立野は約16分です。
熊本-立野は所要50分程度となりますが、熊本-肥後大津の電車所要時間との合算時間のため、気動車の南阿蘇鉄道による直通と、途中の列車交換待ち時間を加味すると55分から60分となりそうです。
肥後大津乗り入れ列車の熊本接続列車状況
現在の豊肥線直通列車の肥後大津到着時刻は7時12分と9時09分です。
7時12分着列車は7時15分発の電車に引き継がれる形で熊本7時57分着です。
ただし土曜休日は、肥後大津7時32分発、熊本8時11分着です。
肥後大津9時09分着列車は、9時27分発電車乗り継ぎで熊本10時06分着となっています。
逆のコースでは、熊本6時39分発→肥後大津7時25分着で、7時28分発高森行きに乗り継ぎます。
もう一本は、熊本8時48分発→肥後大津9時23分着、9時26分発高森行き乗り継ぎです。
熊本からの場合、肥後大津接続はいずれも3分で効率的です。
主役のJR九州815系電車は20m車、2両合計定員271名、最高速度120km/hです。
同区間を1往復だけ走るキハ200系気動車は21m車、3扉で2両合計定員248名、最高速度110km/hです。
南阿蘇鉄道のMT‐4000形は18m車、2扉で定員115名、最高速度95km/hです。
豊肥線の最高速度は95km/hで、速度的にはMT‐4000形でも支障はありません。
現ダイヤで朝のラッシュ時MT‐4000形での熊本乗り入れは困難
熊本-肥後大津直通列車の設定本数は熊本発で49本、肥後大津発で51本の状況です。
その中で前記、肥後大津7時12分着の南阿蘇鉄道の列車が、現在の7時15分発、熊本7時57分着電車の役を担うことは可能かどうか。
同じく、肥後大津9時09分着列車が9時27分発電車の役にもなって、熊本10時06分着とすることはどうかを考えます。
豊肥線乗り入れ車両はMT‐4000形となり、現在は2両の保有です。
この2両で肥後大津2往復の乗り入れを行なっているため、熊本乗り入れの話とは別に、今後の車両検査時に予備車1両の増備が必要になります。
熊本7時57分着電車の役をMT‐4000形直通で担うには4両編成化が必要です。
ただし、それ以前に平日朝のラッシュ時に20m3扉電車を18m2扉気動車に置き換えることは混雑と遅延を招く要因となり、MT‐4000形4両としても困難と考えます。
次に、熊本10時06分着の場合は、ラッシュ時が終わっている意味では乗り入れは可能と思われますが、ラッシュ時以外でも熊本-肥後大津の利用は多いため、最低限3両編成化が求められます。
利用の多い豊肥線内各駅において、乗降位置が異なることはあまり好ましいとは言えません。
熊本乗り入れを行なうなら、特急「あそ」「九州横断特急」同様、主要駅のみの快速列車タイプになるかと考えます。
ただし快速化した場合、列車設備は全く異なりますが、特急料金の必要な「あそ」「九州横断特急」との兼ね合いの問題が出てきます。
そうしたことから熊本乗り入れは難しい面があります。
熊本直通よりも日中の肥後大津乗り入れを増やす方が効果的
現在の状況と、今後の豊肥線熊本空港乗り入れも加味すれば、南阿蘇鉄道は肥後大津までの乗り入れ列車を増やす方がよいのではないかと考えます。
熊本乗り入れを果たすならば、815系との併結運転が一番の解決法ですが815系、MT‐4000形ともそこまで機能上の考慮、対応はしていないと思われます。
将来の夢として、両形式の機能上の協調を望みたいところです。
(※今回の記載にあたり、NEWSポストセブン「被災をきっかけに廃止やBRT転換が目立つローカル線 それでも全線復旧した南阿蘇鉄道と只見線がとった方法」を参考にさせていただきました。)
※写真は本文と無関係です。