「函館市・大泉潤市長の公約『北海道新幹線函館乗入れ』実現できるか」を拝見しての感想と意見です
マイナビニュースの2023年5月3日付け「函館市・大泉潤市長の公約『北海道新幹線函館乗入れ』実現できるか」を読みました。
筆者は4月28日付け「北海道新幹線函館直通の投資効果を考える」で同テーマについての拙論を書きましたが、考え方の相違、正反対が逆に興味深く感じました。
函館市の方々は北海道新幹線函館乗り入れをほどんどの人が歓迎していると思います。
東京と札幌からの函館直通の魅力、便利さはもちろんですが、夢があること、夢を叶えることも大事と感じます。
今回は、拝見させていただいた記事についての私論を述べたいと思います。
新函館北斗-函館がミニ新幹線により東京、札幌から函館直通が前提での話です。
予めご了承ください。
◆山形・秋田新幹線の山形・秋田直通と北海道新幹線函館直通との違いについて
新幹線函館直通の是非、経費等については視点が異なるため意見は避けますが、1点だけ触れます。
「乗り入れによる効果」の「心理的効果」の項で、「乗換えが面倒だという気持ちは、実際の乗り換え時間よりも大きく感じ、一回の乗換えで25~30分程度多く感じるという研究報告もある」という画面があります。
山形新幹線の福島乗り換え、秋田新幹線も盛岡乗り換えを想像すれば、函館も直通した方が効果的なことは明白です。
ただ筆者は福島-山形87.1km、盛岡-秋田127.3kmに対し、函館-新函館北斗が17.9km、乗車時間最短14分という短い距離と所要時間の差が、直通列車設定効果の差にもなるとだけは思っています。
東海道・山陽新幹線が新大阪・新神戸発着よりも大阪・神戸発着の方がよいと主張するのと、ある意味では似ていると思います。
◆併結列車の位置について
東京発札幌行きと函館行きを併結する前提です。
函館行きは新函館北斗からスイッチバックとなるため、連結位置は山形・秋田新幹線とは反対に、東京側になります。
ここで、ミニ新幹線の連結位置が分かれることをJR東日本は了承するかどうかです。
筆者は、函館直通列車の機会に山形・秋田新幹線の連結位置も東京側にしたらどうかと考えます。
山形・秋田の所要時間短縮も重要ですが、山形・秋田よりも遠距離であり、列島を縦断して北海道まで行く東北・北海道新幹線の時間短縮、盛岡停車時間短縮が優先と考えるからです。
◆編成両数について
東北新幹線の両数を現在の10両から7両へと減らし、函館直通列車を4両とする考え方であり、盛岡以北のホーム有効長としては限度の編成案です。
しかしJR東日本が札幌行き列車の7両化をすぐに理解するとも思えません。
10両と7両の2編成管理になり、一筋縄でいかないように感じます。
7両化してもグランクラスとグリーン車連結とすると普通車は5両となり、輸送力が小さすぎます。
グランクラスの非連結やグリーン車の半車化が出てきそうですが、それ以前のそもそも7両化の必然性の話になります。
◆列車ダイヤについて
「新幹線・在来線時刻表例」はわかりやすく明快です。
下り列車ダイヤの時刻表例を見てみます。
東京発6時46分発札幌・函館行きで、新函館北斗10時30分着後、函館行き編成を分割後、10時32分発で札幌11時22分着です。
函館行きは新函館北斗10時34分発、函館10時51分着です。
東京-函館は所要4時間5分です。
次に、7時10分発新函館北斗行きを設定しています。
新函館10時54分着を受け、道南いさりび鉄道の気動車を充当し、新函館北斗11時2分発、函館11時24分着です。
そして函館10時38分発札幌行きを設定し、単独列車として札幌11時52分着です。
この3つの列車パターンを毎時間繰り返すのが基本の提示案です。
この点については最後に触れたいと思います。
◆JR東日本の協力、支援について
協力、支援を仰ぐには解決の必要な課題がいくつかあります。
東北新幹線10両編成列車の7両化、付属編成連結位置の山形・秋田新幹線列車との整合、東北新幹線の線路容量、盛岡以北のホーム延伸、東北新幹線札幌編成のグランクラスとグリーン車の位置がホーム端になるサービス低下、東京-函館直通本数、東京-新函館北斗列車設定の是非などです。
◆新函館北斗行きでも函館行きに乗り継げる列車の紹介について
東京7時10分発新函館北斗行きが10時54分着後、11時2分発列車接続で函館に11時24分に着く方法もあるという紹介事例は疑問が残ります。
東京-新函館北斗列車設定をしても、新函館北斗乗り換えでは冒頭の「乗換えが面倒だという気持ちは、実際の乗り換え時間よりも大きく感じ、一回の乗換えで25~30分程度多く感じる」考えと整合しません。
基本編成は新函館北斗止まりでよいとしても、函館行き付属編成を併結して函館直通を含めなければ函館市にとって意味がないのではない考えではないのでしょうか。
一方、山形、秋田へのミニ新幹線直通列車が毎時1往復の状況で、函館直通は2往復とするのも課題があります。
新函館北斗止まり列車の価値は、函館接続列車があることではなく、函館発札幌行きに乗り継げるという意義です。
ちなみに2023年4月1日現在の人口は函館市242,767人、山形市242,924人、秋田市300,257人となっています。
函館線函館-長万部の在来線運営は先行きがまだ見通せていません。
一方、JR貨物から新幹線貨物列車構想が出されましたが、これが実現すると函館線新函館北斗-長万部、道南いさりび鉄道の前途にもかかわってきます。
道南いさりび鉄道は貨物列車がなくても経営を続けられるかどうか。
函館市は北海道新幹線だけでなく、道南いさりび鉄道にも配慮が必要です。
函館への新幹線乗り入れは、道南いさりび鉄道の存続による「はこだてライナー」の兼務運用、さらに新函館北斗-大沼公園の第三セクター構想実現の前提要件だからです。
◆東京-函館列車は秋田新幹線「こまち」と併結を
筆者の結論は、東京-函館列車は秋田新幹線「こまち」との併結です。
先程の東京7時10分発新函館北斗行きを、函館行きと秋田行きにします。
それにより東北新幹線の10両と7両の編成区分けは10両編成のみでの継続ができます。
さらに函館直通列車は4両編成でなく6両、7両化もできます。
東京-函館の最短所要時間の実現は、函館直通列車の数往復を盛岡以北で新青森、新函館北斗だけとすることで行ないます。
函館直通全列車の札幌速達列車との併結は札幌側の7両化が必要となり、現実には難しいと考えるためです。
◆話は逸れますが
以前、2023年1月21日付けで大阪-奈良の「臨時特急まほろばはどこまで利用が伸びるか」を書いたときはまだ当該列車運転前でしたが、ある人から「夢を壊すと嫌われるぞ」と助言されたことがあります。
4月28日付けの拙記事でもそれを思い出しますが、ただ批評、批判するのではなく、建設的なたたき台の提示により議論のきっかけになれば先が見えてくることもあるというのが筆者の考え方です。
北海道新幹線の函館の話についても同様です。
現場を何も知らない者に何がわかるのか、ましてや鉄道の一趣味者の雑言など聞く必要はないという主旨の、一部の鉄道関係の方の言葉を見聞きしたことがあります。
正論ではありますが、趣味的視点はさておき、現場を知らない者の方が時には先入観のない有用な意見を出すこともあるのではないでしょうか。
また、その時には無用であっても、後になってから「そういえばこんな意見もあったな」と思い出すこともあるかと思います。
筆者の場合、「時には」ではなく「いつも?」的外れ、机上の空論、個人の単なる偏見もありますが、そこは若気の至り(年齢的には老気ですが)で寛大に見ていただければと、この場を借りて言い訳を付け加えさせていただきました。