北海道新幹線で東京と札幌から函館直通の費用対効果を考えます
2023年4月23日に函館市長選挙があり、北海道新幹線の函館乗り入れに意欲を見せる新市長が誕生しました。
函館-新函館北斗に新たな新幹線の線路を敷くかどうかについては、ミニ新幹線方式との情報が多いようです。
今回はミニ新幹線を前提に、北海道新幹線の函館直通について考えてみました。
まず現在の区間別の最短所要時間を見てみます。
函館-新函館北斗は14分、函館-札幌は3時間33分、東京-新函館北斗は3時間57分の状況です。
函館-新函館北斗は17.9kmなので、ミニ新幹線による標準軌の線路幅になっても大幅な時間短縮はできないと思われます。
すなわち所要時間短縮効果よりも東京、札幌から乗り換えのない函館直通効果です。
北海道新幹線札幌開業後の新函館北斗-札幌は最短1時間5分との情報があります。
「はこだてライナー」による新函館北斗での新幹線乗り継ぎ時間8分を加えると、函館-札幌は1時間30分前後です。
ミニ新幹線による函館-札幌直通で1時間20分程度とみられます。
ミニ新幹線による10分の短縮効果と函館-札幌直通で75億円投資が見合うかどうかになります。
ただし実際に75億円で済むかどうか、額が減るか増えるかは工事が終わるまで不明です。
しかしながら現在の北海道新幹線、北陸新幹線の建設工事では当初よりかなり高騰しています。
ミニ新幹線の場合、新幹線の新線建設ほどではないにせよ、費用の高騰は避けられないのではないかと思われます。
◆東京-函館の北海道新幹線函館直通の課題点
〇 盛岡以北の東北新幹線ホームは最大12両編成までの有効長であり、各駅ホームを延長する必要がある。
〇 「はやぶさ」の大部分は秋田新幹線「こまち」で、単独「はやぶさ」はほとんどない。
〇 単独「はやぶさ」に函館新幹線列車を併結する場合、「つばさ」「こまち」との関連で札幌側の併結となるが、新函館到着後の函館行き列車はスイッチバックとなる。
「はやぶさ」を切り離した後、一旦、札幌側に向かって函館へ折り返すことになり、運転方法が非効率になる。
〇 函館新幹線列車を東京側に連結すれば、新函館北斗で分割後すぐに発車できるが、「つばさ」「こまち」と逆の位置関係になる。
「つばさ」「こまち」の東京側変更はしないと思われる。
以上のことから、東京-函館直通は不可能ではないものの実際の設定はないと考えられます。
可能性があるとすれば「はやぶさ」「こまち」の併結を見直し、函館直通単独列車での運転または「こまち」を函館直通列車との併結に変えることです。
つまり「はやぶさ」は単独運転になりますが、東京-大宮の線路容量がそこまで許容範囲かどうかになります。
◆函館-札幌「北斗」の状況
「北斗」は5両編成で11往復運転です。
最大9両編成になることもありますが、基本5両は輸送力としては小さい方の列車に属します。
札幌からの北海道新幹線に併結して新函館北斗で分割し、単独での函館直通は東京側とは異なり、容易に運転できます。
函館への新幹線直通は東京側を目指すのでなく、札幌を目指しての効果と言えます。
◆北海道新幹線函館直通の投資効果
結論として、函館直通の利便性は大きいものの、ミニ新幹線での時間短縮効果は10分程度、在来線乗車時間14分の状況を総合すると、政治的なことはさておき、費用対効果で函館新幹線75億円投資は見合わないのではないかと考えます。
同じ額の投資なら以下の内容を充実させる方が効果的と思います。
〇 新函館北斗駅の線路とホームの配置を、西九州新幹線武雄温泉のような同一ホーム横付けにする。
そのため、北海道新幹線発着ホーム11番線と12番線の間に「はこだてライナー」を入れる構造に変える。
北海道新幹線列車と「はこだてライナー」の乗り換え時間は、西九州新幹線の武雄温泉同様、短時間(5~6分)とする。
西九州新幹線6両編成に対し、北海道新幹線は10両編成のため、武雄温泉のような3分接続では混乱すると思われる。
次案として、下り「はやぶさ」12番線脇と、上り11番線脇に「はこだてライナー」列車を横付けする構造にする。
北海道新幹線東京-札幌最速列車の新函館北斗停車、通過の是非は、ここでは触れない。
〇 「はこだてライナー」の本数増、「はやぶさ」上下列車にすべて短時間接続のダイヤを組む。
〇 「はこだてライナー」を全列車6両化する。
〇 「はこだてライナー」は全列車を五稜郭のみ停車とし、14分以内で運転する。
各駅停車列車は別に設定する。
函館線の貨物列車関係は別の機会に触れ、今回はここまでとします。
函館への新幹線乗り入れを夢に見る人には水を差す話であり、夢を壊すようで申し訳なく思いますが、新幹線直通と新函館北斗乗り換え容易構造型ホームとの75億円投資効果バランスを冷静に比較検討されることを望んでいます。