全国最大の東海道新幹線輸送実績での決断により他社でも影響は避けられないか?
JR東海が2023 年8月8日付けで「東海道新幹線の新しい車内サービスの展開について」のニュースリリースがありました。
同年11月から普通車の車内販売全廃という衝撃的な内容です。
今回は、全国各地の車内販売に対する波及、影響度を探ってみたいと思います。
以下、ニュースリリースから一部を引用させていただきます。
(以下引用)
駅周辺店舗の品揃えの充実、飲食の車内への持ち込みの増加、静粛な車内環境を求める
ご意見、また将来にわたる労働力不足への対応等をふまえ、「のぞみ号」「ひかり号」の全号車で実施している車内ワゴン販売を終了し、新しい形態のサービスを導入します。
(中略)
普通車の車内販売は取りやめとなりますが、ホーム上等の自動販売機を拡充するなど、駅における飲食の提供を強化します。新しい車内サービスにより、さらに快適な車内空間の提供を目指してまいります。
(中略)
車内ワゴン販売でニーズの高いドリップコーヒーやアイスクリーム等、自動販売機の
ラインナップを増やし、ホーム上等に順次拡充することで、ご乗車前にご購入していただきやすくなります。
※11月1日(水)までに東海道新幹線におけるのぞみ停車駅のホーム等に設置します。
その他の駅についても拡大することを検討します。
(以上引用)
東海道新幹線は全国一のドル箱路線であり、1列車1,232人定員、毎時最大12往復の「のぞみ」は定期列車を筆頭にほとんど年間満席近い印象があります。
その東海道新幹線の普通車から車内販売(以下、車販)がなくなるのは、「駅周辺店舗の品揃えの充実、飲食の車内への持ち込みの増加、将来にわたる労働力不足への対応」が背景にあることは理解できますが、短区間列車から徐々に削減ではなく一挙に全廃は想定外でした。
「えちごトキめき鉄道社長(いすみ鉄道前社長) 鳥塚亮の地域を元気にするブログ」
の2023年8月4日付けで、「サンダーバードは終わってる!!」という記事があります。
8月4日、午前の金沢行き「はくたか」から大阪行き「サンダーバード」に、金沢駅で乗り継いだ時の話です。
金沢では9時32分着、9時54分発の乗り継ぎで、乗り換え時間は22分でした。
金沢駅在来線ホームに2か所ある売店は閉店、飲料自動販売機もほとんどすべて売り切れ状態、駅弁屋では駅弁が3種類のみの状態が紹介されています。
さらに、発車前の特急列車内での車内放送で、車販、自動販売機がないこと、駅売店、ホームの自動販売機での事前の買い求めのアナウンスを聞かされては、火に油状態だったことが伝わってきます。
駅構内で飲食が整う保証があるか?
世の中、何事も100%ということはありません。
東海道新幹線で「ホーム上等の自動販売機を拡充するなど、駅における飲食の提供を強化します。」とのことですが、万が一ということがあります。
ホーム上の売店や自動販売機があっても品物の売り切れや仕入れ前だったりすれば、飲食物は手に入らなくなります。
それを駅に苦情を言っても、無い物は無いということで結局、事前に駅の外の店舗で購入してから新幹線に乗る方が確実ということになってきます。
北陸新幹線と在来線特急乗り継ぎの金沢駅での話は決して対岸の火事ではないと思われます。
全国各地で十分に起こり得る話、あるいは既に他地区でも起きている話です。
車販がなくても駅ホームや駅周辺の売店や自販機がある、駅ホームになくても駅周辺の店舗はある楽観して高を括り、当日になって慌てても発車時間が近づき、飲食類が皆無のまま長時間列車に乗り続けることになりかねません。
そのため、駅到着前に予め購入して駅に向かう方が安心という発想になってきます。
それが駅の売店や自販機の売り上げ減少につながっていき、最終的に駅店舗閉店、自販機撤去の悪循環が懸念されます。
他の列車への影響はどうか
東海道新幹線の乗車人員を超える路線、特急列車、観光列車はないので、全国各地の新幹線や在来線、私鉄へも今後の影響は避けられないと思われます。
ビジネス列車と行楽列車とを分け、車販について前者は基本的に廃止方向、後者は長編成列車を最優先に存続と思われます。
以下、鉄道会社別に今後を想定してみたいと思います。
毎回のことですが、内容には何の根拠もありませんので予めご了承ください。
◆ JR東海
行楽列車を持たないので、東海道新幹線同様に車販廃止、グリーン車も定員が少ないので東海道新幹線と同内容のグリーン車サービスはないと思われます。
◆ JR西日本
山陽新幹線は東海道新幹線と直通してこその利用率確保の面があることは否定できません。
また、西に向かうほど利用は低くなります。
そのため、利用の多い東海道区間で車販がないのに、利用が減る山陽区間で車販が多いという光景は想定しにくい面があります。
山陽区間は独自にJR西日本のポリシーで車販を維持していけるかとなると、乗車率の大きさを秤にかけると難しいと言わざるを得ません。
東海道新幹線に合わせて、グリーン車のみ列車内サービス継続と思われます。
駅ホーム等での売店確保は、東海道新幹線同様、「のぞみ」停車駅中心に整備するものの、逆に言えば「のぞみ」通過駅の整備は除外ということになると思われます。
「みずほ」「さくら」は列車全体の定員、グリーン車の定員ともに少ないので、グリーン車でもサービスはしないと想定します。
山陽新幹線接続のビジネス中心の在来線特急は車販、グリーン車サービスとも行なわないと考えます。
一方、JR西日本には観光列車が多くあります。
観光列車はビジネス特急と性格が異なり、列車内サービスが重要な要素でもあるので、車販というよりも車内サービス係員の確保は新幹線や特急よりも優先の面があると思われます。
クルーズトレイン「瑞風」のサービス継続、人員確保がその中でも最優先です。
◆ JR九州
九州内の新幹線は路線距離、乗車時間とも短いので、列車サービス継続は難しいと思います。
在来線特急はワンマン運転を実施している列車もある状況の中で、車販サービス維持は望めないと思われます。
JR九州も観光列車の多い路線です。
ビジネス列車は車販、列車内サービスを整理して割り切り、観光列車内では列車内サービス係員配置優先の方向性はJR西日本と同様と思われます。
「ななつ星」のサービスのための人員確保はJR西日本「瑞風」と同様です。
◆ JR四国
「伊予灘ものがたり」をはじめとする185系使用の観光3列車だけは、列車内サービスの充足を今後とも継続と想定されます。
◆ JR北海道
北海道新幹線の車販は数年先の札幌開業時であっても最初から行なわないと思われます。
開業予定の2030年頃にはまた情勢も変わっているかと思われますが、JR東日本に合わせてグリーン車のみサービス継続となりそうです。
在来線特急は編成両数も短いので車販は全廃、観光列車中心の列車内サービス維持は他のJRと同じと思われます。
◆ JR東日本
東北新幹線は新函館北斗への速達「はやぶさ」中心に当面は残るものの、最終的にはグリーン車、グランクラスのみの列車内サービスになるのは避けられないと思われます。
停車駅の多い「はやぶさ」、仙台、盛岡発着の「はやぶさ」、「やまびこ」の全列車まではサービス維持の余裕はないと考えられます。
車販は東海道新幹線と同様のほうこうになるかと思います。
グリーン車定員の少ない「こまち」「つばさ」も同様で、座席サービスで割り切ると考えます。
上越新幹線はグランクラスでさえ車内サービスを行なわない状況なので、グリーン車でも座席サービスのみの方向になります。
「かがやき」は今後の北陸新幹線敦賀延伸の明るい話題があるのでグリーン車、グランクラスを中心とする列車全体での車販サービス等はしばらく継続と考えられます。
「はくたか」は上越新幹線同様のグランクラス状況なので列車内サービスは「かがやき」に集中させ、座席サービスだけで割り切ると思われます。
在来線特急は東京起点という強みはあるものの、東海道新幹線も同じ状況下での今回の判断の影響は避けられないと思われます。
グリーン車の定員も少ないので、最終的には列車内サービスは「サフィール踊り子」だけになるように思われます。
行楽列車は今回、料金を見直したこともあり、列車内車販サービスは継続と思われます。
◆ 私鉄
東武「スペーシアX」を筆頭に、小田急、西武の行楽列車は列車内サービスが売り物であり、東海道新幹線ほどの膨大な列車本数、列車定員でもないので、人員確保の上でサービス継続を鉄道の目玉商品の一つとして継続していくと考えられます。
他の私鉄行楽列車も同様です。
◆ その他
列車内での自動販売機設置は、過去の経緯から期待できないと思われます。
自動販売機での支障等で対応に追われると、列車内全体の他のサービスや他の乗客全体に影響しかねないためです。
乗車前に自分で用意するしかなく、そのためには乗車直前にホームで冷たい状態または温かい状態での販売により、飲料等を手にしたいものです。
「のぞみ」停車駅以外で、どこまで他の駅ホームでの販売が充実するかは、人手不足や駅以外での商品購入の理由を持ち出されれば、あまり期待できない、期待しない方がよいような気もします。
車内販売は多すぎる、うるさいという声もありました。
それは車内販売があったからこそ言えることで、車内販売が全廃されてすっきりした、静かなになったと評価、歓迎する人はどの程度いるのでしょうか。
最終的には車内販売全廃も時代の流れ、時代の変化ということで、頭を切り替え、受け止めていくしかないでしょうか。
車内サービスを求めるなら飛行機の機内サービスと空港内の販売充実、購入の気軽さなら車に一層転移しないか、状況を見守りたいと思います。