大阪-和倉温泉が直通から2回乗換に変わることで客離れは起きないか
北陸新幹線は2015年3月14日の金沢開業前までは、七尾線、和倉温泉発着特急は大阪への「サンダーバード」4往復、名古屋への「しらさぎ」と越後湯沢への「はくたか」が各1往復設定されていました。
金沢開業後は「サンダーバード」1往復、金沢止まりの「能登かがり火」4往復となりました。
新幹線敦賀開業後は「能登かがり火」のみとなり、大阪直通はなくなります。
大阪-和倉温泉は、北陸新幹線を間に挟んで敦賀と金沢での2回乗り換えに変わります。
今回は、大阪-和倉温泉の移動を中心に考えてみました。
福井県が特急乗り入れを断念
2021年6月20日付け、マイナビニュース「北陸新幹線敦賀延伸後、在来線特急の福井方面直通を断念した事情」から、一部を引用させていただきます。
(以下引用)
JR西日本としては、現行の「サンダーバード」をすべて北陸新幹線に接続させる意向だという。敦賀駅では北陸新幹線の真下で折り返すから、並行在来線に直通する「サンダーバード」は別途増便で対応する必要がある。その増便の余地が京都~大阪間にはない、ということだ。大阪駅から近江塩津駅あたりまで併結運転すれば解決しそうな気がするものの、次項の費用も考慮する必要がある。
増便にしても、近江塩津駅などで併結・分割するにしても、在来線の特急用車両を増やす必要がある。運転士も必要だろう。JR西日本だけでなく、並行在来線にも負担が発生する。並行在来線でJR西日本の特急列車を走らせるならば、JR西日本の車両を借りて運行することになり、車両使用料が発生する。あるいは並行在来線会社でも車両を新造し、走行距離で使用料を相殺する方法もある。この場合は車両調達費がかかる。福井県の試算では、「サンダーバード」を1日3往復するための車両購入費は約80億円とされている。
JR西日本にとっては北陸新幹線の収入が減る。並行在来線会社にとっては特急料金が増える一方で、車両設備の維持と人件費が増える。並行在来線会社側で約1.3億円の赤字、JR西日本と合わせて年間で約7億円の赤字だという。
(中略)
とにかくいまは並行在来線のコストを下げて、赤字を減らすことが県民全体の利点だという考えのようだ。経営が安定し、やはり乗換えは不便と考えられるなら、そのときに並行在来線直通列車や団体臨時列車などを検討してもいい。線路がつながっていれば、列車はいつでも直通できる。
(以上引用)
敦賀・金沢2回乗換と時間短縮効果、特急料金負担増は
北陸新幹線敦賀開業後、大阪-金沢の所要時間は現在よりも22分短縮するとされています。
現在、金沢での七尾線乗り換え標準時間は8分です。
そうすると大阪-和倉温泉の所要時間は、単純計算では14分短縮となります。
大阪-和倉温泉直通の特急料金3,370円は、新幹線から在来線への乗継特急料金廃止もあり2,000円前後の負担増とも言われます。
関東から和倉温泉に行く場合は従来通り、金沢での1回だけの乗り換えであり、敦賀開業後の影響はありません。
対して関西からは、直通で行けたのが敦賀と金沢の2回乗り換え、15分前後の短縮時間に対する特急料金の負担増によって、旅客離れが起きないかが気になります。
高速バスと列車の比較
和倉温泉へ、関西方面からの鉄道利用の観光客が、新幹線での2回乗り換えと特急料金負担増から避けていくとすれば、高速バス利用や、団体ツアーへの転移等も考えられます。
大阪-金沢の高速バスは所要約6時間、6,000円、金沢-和倉温泉のバスは約2時間、1,000円です。
北陸新幹線大阪-和倉温泉は、乗り換え時間を含めて約3時間20分程度とみられます。
交通費、乗り換えの手間と、時間短縮のどちらを選択するかになります。
JR西日本は、ハピラインふくいから七尾線への直通列車を一切認めないか
JR西日本は「サンダーバード」を含め、特急列車の在来線敦賀-金沢乗り入れを認めない方針で、大阪-和倉温泉の場合、敦賀と金沢で2回乗り換えで割り切る姿勢です。
それによって新幹線と「能登かがり火」の利用減があれば、新幹線利用が全般的に定着してからの検討事項となるでしょうか。
大阪-和倉温泉の2回乗り換えを、敦賀での1回だけにすることがもっとも手近な方法です。
すなわち敦賀発和倉温泉行き直通列車の設定であり、これ以外には乗り換え1回だけの大阪-和倉温泉移動はありません。
ただし、敦賀-金沢の特急列車は不可の条件をクリアする必要があります。
具体的には、大阪-敦賀の「サンダーバード」接続を受け、第三セクターとなった在来線快速がそのまま七尾線にも直通、和倉温泉行きとするようJR西日本に協力を仰ぐことです。
特急乗り入れは認めないとしても、普通列車用の521系により、敦賀-福井-金沢-和倉温泉の直通快速の設定です。
この場合、JR西日本から見れば、在来線敦賀-金沢から手が離れる分、収入にはなりません。
それを乗り越えて在来線経由で敦賀-和倉温泉発着の快速を認めるには、大阪-敦賀と七尾線の利用減、収入源が、第三セクター路線経由列車設定により、客足が戻るかどうかによります。
北陸新幹線は大阪-金沢の新幹線需要で十分とするなら、この話は進まなくなります。
並行在来線を受け持つハピラインふくいとIRいしかわ鉄道は、機会を捉えながら快速列車での敦賀-和倉温泉直通列車効果をJR西日本に伝えていくことが望まれます。
敦賀開業後の七尾特急は「能登かがり火」5往復ですが、「花嫁のれん」も引き続き同じ七尾線内だけの運行にとどまるでしょうか。
「能登かがり火」とは異なり、完全な観光列車であり、土休日、多客期中心に年間約150日の運行となっています。
列車定員は52名です。
JR西日本の車両で特急扱いなので、第三セクター会社から金沢以西の延長運転はお願いしても却下されそうではあります。
しかし観光列車ゆえ、金沢から足を延ばして、敦賀、小浜方面や、富山、城端、氷見方面に足を延ばす列車を、年に数回でも設定してはどうかと思います。
今回の案件はJR西日本の垣根が高そうですが、新幹線並行在来線を受け持つ第三セクター会社には、自社路線としてだけの話でなく、JR西日本所管の在来線を含めた直通列車効果を根気強く伝えていってほしいと願っています。
「線路がつながっていれば、列車はいつでも直通できる」(再掲)、その「いつでも」を2024年度終了後に実績数値から見極めてほしいと思います。
(※ 掲載にあたり、マイナビニュースの2021年6月20日付け、「北陸新幹線敦賀延伸後、在来線特急の福井方面直通を断念した事情」を参考にさせていただきました。)