平行普通列車

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西九州新幹線 佐賀空港経由のルートを考える

佐賀空港経由の迂回ルートと、博多―長崎の時間短縮の両立はできるか?

2023年11月2日付け、毎日新聞九州新幹線長崎ルート『南回り』協議の用意 佐賀知事、与党委に伝達」と、読売新聞「西九州新幹線佐賀空港近く通る案『フル規格』の場合で議論…佐賀県知事と与党検討委員長」の記事を拝見しました。

同県知事が、西九州新幹線新鳥栖-武雄温泉間の未着工区間を巡り、佐賀空港経由の南回りルートを軸に、国との協議に応じる考えを伝達した旨の内容で、佐賀空港経由が一考に値する、検討に値する見解は以前からも伝えられていました。

九州新幹線からの分岐は新鳥栖でなく、筑後船小屋となり、筑後船小屋佐賀空港-武雄温泉のルートとなります。

 

西九州新幹線新鳥栖-武雄温泉には、佐賀市北部経由の「北回りルート」、在来線に沿って佐賀駅を通る「佐賀駅ルート」、筑後船小屋から分岐して佐賀空港経由の「空港ルート」の3つのルート案があります。

新鳥栖-武雄温泉の距離の短さ、速達、時間短縮、県庁所在地の佐賀駅経由の点では佐賀駅ルートですが、当該記事は佐賀空港のルートの方向性に関連した内容です。

今回は、佐賀空港経由の南回りルートについて考えてみました。

 

佐賀空港ルートによる迂回

博多側から長崎へ、博多-筑後船小屋佐賀空港-武雄温泉のルートを地図で見ると、博多-筑後船小屋の南下ルートから、ほぼ直角に近いイメージで西側の佐賀空港を指向します。

佐賀空港からは長崎へ短絡せず、北上して江北、武雄温泉を目指します。

武雄温泉からは現在の西九州新幹線ルートで長崎に向かいます。

 

新鳥栖-武雄温泉で緩やかに南下する佐賀駅ルートに対し、佐賀空港ルートは三角形の二辺よりもさらに長い台形、四角形の三辺に相当するイメージの迂回です。

武雄温泉から長崎への再度の南下により、新鳥栖筑後船小屋佐賀空港-武雄温泉-長崎では折れ線グラフで上下するような印象を受けます。

 

在来線特急と大差ない新鳥栖-武雄温泉の新幹線所要時間

長崎から博多を目指す際、武雄温泉、江北まではよいものの、佐賀を避けて佐賀空港まで南下し、博多へ遠ざかった佐賀空港に接続してから博多へ向かうルートでは、在来線の方がよほど短く、むしろ速く感じます。

武雄温泉で新幹線から特急「みどり」に乗り換え、佐賀経由で博多へ向かったほうが速いイメージさえあります。

 

ここで新鳥栖-武雄温泉の距離、所要時間を比較、想定してみます。

在来線は50.4km、最速特急で約30分です。

筑後船小屋佐賀空港経由の新幹線は、新鳥栖筑後船小屋が22.9km、筑後船小屋佐賀空港が約20km、佐賀空港-江北が約20km、江北-武雄温泉が13.7km、約75km前後と想定されます。

あくまで概算ですが佐賀空港経由は25km前後の迂回となります。

新鳥栖-武雄温泉が約70kmとしても、武雄温泉-長崎の新幹線とほぼ同距離です。

佐賀空港経由の新鳥栖-武雄温泉は、所要30分は要すると思われます。

そうなると在来線特急と差がなくなります。

佐賀空港経由の迂回距離の分だけ運賃は在来線より高くなると想定されます。

とはいえ、新鳥栖-武雄温泉の運賃計算に在来線距離を充てることは困難と思われます。

 

佐賀県知事と国の思いとの差

これまでの経過をたどってみると佐賀県知事の思いは、概して以下のようなところかと想定します。

・ 新鳥栖-佐賀-武雄温泉ルートの、在来線に沿った新幹線は不要。

・ 佐賀-博多は在来線特急で十分。

・ 新幹線建設の負担金を伴うなら、佐賀空港経由の方に意義がある。

 

一方、国側の考え、JR九州の考えはどうでしょうか。

・ 西九州新幹線佐賀空港ルートは、博多-長崎速達としては迂回しすぎであり、博多-長崎の時間短縮効果が弱まる。

・ とくに博多-武雄温泉では時間短縮できない。

・ 西九州新幹線は県庁所在地の佐賀経由が望ましい。

以上のようなところかと思います。

 

福岡空港の門限時間に対する佐賀空港の補助役、代替役位置づけは

福岡空港の離着陸制限22時を超えた場合に、佐賀空港が代替役になるとの話も聞きます。

ただし、仮に22時以降になって佐賀空港に着陸できたとして、新幹線しかない佐賀空港から博多へ向かうには、24時を越えては走行できない新幹線の時間制約が絡んできます。

また、福岡空港の補助役の面では、北九州空港での代替え、利便性も考慮する必要があります。

深夜の北九州空港経由での小倉-博多での在来線は、実際の輸送対応有無は別として、夜間における柔軟性は新幹線よりもありそうです。

 

佐賀県は博多-長崎間の速達は別に置く次元?

繰り返しになりますが、佐賀経由の新幹線は不要、佐賀-博多は在来線特急、鉄道のない佐賀空港経由に新幹線という点について、佐賀県全体として新幹線は佐賀駅経由よりも佐賀空港経由の方が望ましいでしょうか。

博多-長崎の西九州新幹線佐賀空港経由により所要時間短縮効果が薄れようとも、佐賀県には無関係の姿勢でしょうか。

国のフリーゲージトレイン導入断念の経緯から、佐賀経由の新幹線不可を今後もずっと貫いていくのでしょうか。

 

一方、長崎県や国、JR九州は、佐賀空港経由であっても博多-長崎の全体の所要時間は短縮するという見解かどうか。

佐賀空港経由を受け止めなければ、武雄温泉-長崎のみの新幹線運行となるので佐賀空港経由を受けとめるか。

佐賀県、近隣県、新幹線網全体、長期的視野から見て、いずれも新幹線佐賀空港経由、佐賀-博多は在来線特急が適当な形か、冷静に、客観的に将来像を見直す余地があるのではないかと感じました。