各地での新幹線建設優先の綱引きの中での四国新幹線の位置づけはどうか
北陸新幹線敦賀開業の2024年3月16日まで半年を切りました。
敦賀開業後の新幹線整備は北海道新幹線札幌開業に移りそうですが、すでに次の新幹線着工の綱引きは始まっています。
〇 北陸新幹線新大阪延伸
敦賀開業後の優先順位として、同新幹線の敦賀-小浜-京都-新大阪の声が高まるのは明白で、2046年度の開業を目指しています。
〇 西九州新幹線
西九州新幹線は、新鳥栖-武雄温泉で佐賀県との調整ができず長引いています。
最近では、9月22日の毎日新聞記事によると、「佐賀知事、西九州新幹線整備で空港ルート『一考に値する』」の見出しで、佐賀県知事が「そうした着想で議論することは一考に値する意義深いものだ」と語ったとのことです。
佐賀駅経由でなく佐賀空港経由なら、佐賀県は西九州新幹線の建設に前向きに変わっていくのでしょうか。
佐賀空港経由による博多-武雄温泉の迂回、空港付近の地盤、飛行場付近の鉄道建設時の制約条件等、課題が見受けられますが、前に進んで行くでしょうか。
完成までにはまだ時間を要しそうです。
最近になって、大分県から東九州新幹線博多、久大線沿いルートの話題が新たに出てきました。
全国的には四国新幹線、羽越新幹線の富山-新潟-秋田-新青森ルート、奥羽新幹線の福島-秋田ルート、山陰新幹線大阪-鳥取-松江ルート、北海道新幹線札幌―旭川延長などの話も入り混じり、錯綜しています。
今回は、その中で四国新幹線の近況を中心に考えます。
過去の四国新幹線記事等との一部重複がありますが、ご了承ください。
四国全体の鉄道の危機感と四国新幹線の救済
Yahoo!ニュース、南海放送の2023年9月30日付け記事で「松山-大阪間が1時間38分に!『四国新幹線』で未来はどう変わる?実現の先にある“光と影”」を拝見しました。
また、乗りものニュース、同年10月1日付けで「『四国新幹線』実現へ加速か!? 愛媛県がJR西日本に直接要望へ 新大阪~松山『たった1時間半』」の記事もありました。
Yahoo!ニュース、南海放送の記事から一部を引用させていただきます。
(以下引用)
中村(※愛媛県)知事: 「収益事業たる新幹線が四国になければ、鉄道そのものが四国中から消え失せてしまうことも、将来あり得るんじゃないかと危惧をしている」
(以上引用)
この発言の背景には、四国全体の鉄道に対する存廃の危機感が感じ取れます。
四国の鉄道が生き続けていくには四国新幹線が不可欠との危機意識が伝わります。
同じ乗りものニュースの記事でもう一つ、2022年6月6日に、「『四国新幹線』は実現するか 全国の新幹線フィーバーから蚊帳の外 地元の危機感」があります。
ここから一部を引用させていただきます。
(以下引用)
四国の政財界からなる四国新幹線整備促進期成会は、地銀のシンクタンクが調査した「新幹線が都市を変える~新幹線と四国のまちづくり調査~」を公表、
(中略)
背景には、北海道から九州までの4島で、四国だけ新幹線の整備計画が具体化しておらず、取り残されてしまうのではないか、という思いがあります。
(中略)
報告書では、「北陸新幹線、北海道新幹線、西九州新幹線など整備新幹線の完成が見え始めた今、四国の新幹線を具体化できなければ、四国に新幹線が走ることはない。それは、未来永劫、四国が高速鉄道網から切り離された地域であり続けることであり、地域の未来が閉ざされることに他ならない」との強い危機感をにじませています。
四国に新幹線は必要か、地元でも懐疑的な声があることは期成会も認識しているようです。しかし、JR四国は経営難に陥り、在来線の高速化も望めず、このままでは既存の鉄道の維持すら困難になる--そのような悪循環を断ち切る抜本的な解決策として、新幹線が必要だといいます。
このため、期成会は2つの基本計画を整備計画へ格上げすべく、国の調査を実現させることが第一歩だとしています。
(以上引用)
前記、愛媛県知事発言同様、四国の鉄道に対する危機意識が感じ取れる内容です。
岡山県の理解協力が得られるか
四国新幹線の熱意の中で、岡山県では四国新幹線に対し、政令指定都市が一つもなく、短い2~3両編成の特急が走る四国の状況に対し、岡山県が県内の宇野線、瀬戸大橋線費用を負担する必要があるのかと疑問を投げかけています。
岡山県は岡山-瀬戸大橋約30kmに対し、約300億円の実質負担が伴い、負担に対する岡山県での恩恵が見出せないとの見解です。
岡山県の理解協力を得るには相応の時間を要しそうで、四国全体が一丸となって岡山県を説得することが求められます。
四国新幹線の3方向枝分かれルートで「二兎を追う者」にならないか
乗りものニュース、2022年6月6日記事の後段では、瀬戸大橋から高松・徳島方面、高知方面、松山方面の3方向へ枝分かれする、通称「3方向枝分かれルート」にも触れています。
この3方向枝分かれルートが、費用対効果として最も高いとの内容ですが、四国4県は真に3方向ルートでの整備を前提に考えているのでしょうか。
岡山から瀬戸大橋を渡って四国に入った新幹線は、現ルート同様、坂出-高松-徳島へ向かう高松経由の高徳線ルート、宇多津から高知への土讃線ルート、同じく松山への予讃線ルートの3つを同時に整備することに意義があるとの考えでしょうか。
国側から見てみれば、全国各地から新幹線建設要望がある中の一つとして四国新幹線自体がある位置づけの中、四国だけ3方向枝分かれルートで、3路線の同時整備を前提に話を進めることは、着工の優先度を得ることに際して逆効果にならないでしょうか。
岡山から瀬戸大橋までの岡山県側でさえ、政令指定都市等の話で四国への新幹線自体に疑問を投げかけ、特急の2~3両編成にも言及される中、四国内の3方向ルートは逆にそもそも四国新幹線の必要性かとの議論を一層深める印象を持ちます。
3方向ルートの同時整備があってこその四国新幹線なのかどうか。
二兎を追う者は一兎をも得ずにならないでしょうか。
まして三兎なら、なおさらです。
四国内は3ルートとも単線で整備すれば経費が削減できるということ以前の話と考えます。
また、並行在来線の話が保留されているのも気にかかります。
それらの結果、他の新幹線に整備優先順位が回ったら四国全体にとって元も子もなくなります。
とくに人口比較において、東九州新幹線の大分県全体と大分市、愛媛県全体と松山市とは、いずれも愛媛側が多いものの、数値はかなり接近しています。
少なくとも岡山-松山の予讃線ルートに集中させた方が、四国新幹線建設の話は前に進んでいくのではないでしょうか。
(※ 記載にあたり、下記の記事を参考にさせていただきました。
・ 毎日新聞、2023年9月22日付け「佐賀知事、西九州新幹線整備で空港ルート『一考に値する』」
・ Yahoo!ニュース、南海放送、同9月30日付け「松山-大阪間が1時間38分に!『四国新幹線』で未来はどう変わる?実現の先にある“光と影”」
・ 乗りものニュース、同10月1日付け「『四国新幹線』実現へ加速か!? 愛媛県がJR西日本に直接要望へ 新大阪~松山『たった1時間半』」
・ 乗りものニュース、2022年6月6日付け「『四国新幹線』は実現するか 全国の新幹線フィーバーから蚊帳の外 地元の危機感」)
※写真は本文と無関係です。