平行普通列車

常磐線と新京成に魅せられた者のブログです

東九州新幹線の基本計画路線 宮崎県の今後の鉄道対応を考える

九州で新幹線の話題がない県が宮崎県だけになった時、どう動くか

昨日(2023年7月17日)の「東九州新幹線日豊線ルートでなく久大線ルートと予測」の続編です。

元来、東九州新幹線は、福岡県福岡市から大分県大分市付近、宮崎県宮崎市付近を経由して鹿児島県鹿児島市にに至る基本計画路線とされています。

今後、仮に東九州新幹線の話が大分県側で進んでいった際、気になってくるのが宮崎県側の動きです。

佐賀県長崎県は今現在、まだ西九州新幹線博多-長崎の全通が実現していませんが今後、大分県東九州新幹線とともに話が進んでいったとすると、九州内で新幹線の話題がない県は宮崎県だけになります。

そうなると宮崎県にも新幹線、あるいはミニ新幹線といった声が出てくることも想定されます。

今回は、宮崎県と新幹線について考えたいと思います。

 

宮崎まで九州新幹線鹿児島中央または東九州新幹線から延伸するか?

宮崎県の代表駅宮崎まで、九州新幹線鹿児島中央または東九州新幹線から延伸することは考えられるでしょうか。

日豊線全体の2021年度輸送密度を見ると、小倉-中津18,655人、中津-大分8,110人、大分-佐伯3,988人、佐伯-延岡431人、延岡-南宮崎4,527人、南宮崎都城2,701人、都城-国分830人、国分-鹿児島8,729人となっています。

宮崎県から見ると、大分県と鹿児島県の県境をまたぐ利用が1,000人に満たない状況です。

 

現在の日豊線で、宮崎-鹿児島中央は125,9km、特急9往復で所要約2時間、4両編成です。

宮崎-大分は207.0km、特急8.5往復で約3時間、4両または6両編成です。

他に、宮崎・宮崎空港-延岡の区間運転特急が8.5往復あります。

なお、普通列車は西都城-国分は9往復、佐伯-延岡は1.5往復のみの状況です。

 

2022年4月1日現在の宮崎県の人口と世帯数は1,078,313人、530,291世帯です。

参考までに、鹿児島県は1,605,419人、810,877世帯。大分県は1,131,140人、542,048世帯。長崎県は1,320,055人、632,206世帯。福岡県は5,108,507人、2,488,624世帯となっています。(総務省住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」による)

 

宮崎にフル規格の新幹線を走らせるとしたら、鹿児島中央からの九州新幹線延伸の方が、大分からの東九州新幹線接続よりも距離が短い分、対博多への時間短縮効果がありますが、その前に現状の日豊線特急列車9往復の本数と4両編成の現況を見る限り、フル規格の新幹線は困難と思われます。

 

宮崎-鹿児島中央ミニ新幹線は?

では、ミニ新幹線はどうでしょうか。

山形新幹線秋田新幹線の状況を見てみます。

山形新幹線は1992年7月1日に福島-山形87.1km、1999年12月4日に山形-新庄61.5kmが開業し、福島-新庄の計148,6kmがミニ新幹線区間となり、東京から「つばさ」として直通運転をしています。

福島-山形の総工費は630億円(車両費273億円、地上整備費357億円)、山形-新庄は343億円(車両65億円、地上278億円)、福島-新庄の総合計では973億円(車両338億円、地上635億円)です。

秋田新幹線盛岡-大曲-秋田は127.3km、1997年3月22日開業、総工費966億円(車両310億円、地上656億円)で東京-秋田を「こまち」として直通運転しています。

 

宮崎-鹿児島中央の125,9kmは、盛岡-秋田127.3kmとほぼ同距離ですが秋田新幹線総工費966億円は1997年時点の数値です。

なお、秋田県の人口は952,824人、423,422世帯(2022年4月1日現在、前出)で、宮崎県より少ない数値です。

2022年度の田沢湖線盛岡-大曲の輸送密度は4,794人、同じく奥羽線大曲-秋田は5,843人の状況です。

 

飛行機と高速バスの需要

秋田新幹線は東京-盛岡-秋田の直通運転で、これを宮崎に当てはめた場合、博多-鹿児島中央-宮崎の直通運転になりますが、東京対秋田と福岡対宮崎を同じ尺度で測ることはできないので、様々な状況を勘案する必要があります。

飛行機は福岡―宮崎に13往復あり、博多駅宮崎空港駅とも鉄道が乗り入れており、しかも福岡空港へは博多から5分、宮崎空港は宮崎から10分の至近距離で、アクセスに便利な区間です。

飛行機の搭乗時間も最速わずか40分です。

博多-宮崎の高速バスは所要約5時間弱ですが、21往復の設定で、運賃は6,000円です。

鉄道の運賃・料金は直通の「にちりんシーガイア」一本で約5時間30分、10,500円、九州新幹線鹿児島中央経由で約3時間40分、14,530円です。

 

鹿児島中央-宮崎のミニ新幹線による博多からの直通は3時間を切るのも容易でないと思われます。

 

九州新幹線鹿児島中央駅ホームに「きりしま」横付け、同一ホーム乗り換えと振子特急化が現実的

平成30(2018)年3月付けで宮崎県から「日豊本線高速化調査業務報告書 概要版」が公表されています。

宮崎県内の日豊線時間短縮についていろいろ探っていますが、費用対効果、資金面の調達は容易ではないことを再認識しました。

細かな改良の積み重ねをしても、九州新幹線と併せての博多―宮崎2時間台の実現は難しいものがあります。

一方、飛行機と高速バスの充実度から、宮崎対福岡(博多)を考える時、鉄道以外の交通機関が先に浮かんでくるイメージもあります。

地図で見た時、宮崎から熊本へ短絡する高速バスと、鹿児島中央経由の迂回コースの鉄道の差は、三角形の一辺対二辺の違いに近く、鹿児島中央経由はいかにも遠回りの印象を持ちます。

高速バスルートに沿った形で吉都線肥薩線(現在、八代-吉松間不通)での宮崎-熊本の短絡線ルートがありますが、単線・非電化・急勾配等で、速達に寄与することは困難です。

 

話は戻りますが、博多-鹿児島中央-宮崎は、乗り換えを含めて約3時間40分の状況です。

3時間を切って2時間台にするのが理想ではありますが、一挙に40分以上の短縮は難しいと思われます。

 

鹿児島中央駅での新幹線と日豊線の乗り換え標準時分は7分と案内されています。

現状でもっとも効果的な方法は、西九州新幹線の武雄温泉と同様、九州新幹線ホームに日豊線特急「きりしま」を横付けさせて鹿児島中央での乗り換え時分を短縮するとともに、乗り換え階段の心理的な億劫さを無くすことと考えます。

鹿児島県内での話なので、JR九州と鹿児島県の理解・協力が必要です。

 

九州新幹線の速達「みずほ」は山陽新幹線内での「のぞみ」との兼ね合い上、毎時設定は困難と思われますが、停車駅を絞った「さくら」による準「みずほ」的な「さくら」増強が望まれます。

 

次に「きりしま」を現在の787系から885系振子式に変更し、地上設備の一部改良、曲選通過速度の向上、駅構内の1線スルー化と併せて、所要3時間台前半に努力すること、「きりしま」と「みずほ」の毎時1往復運転が先決と思います。

宮崎での大分側特急「にちりん」接続時間については、大分での「にちりん」「ソニック」接続も日豊線全体から見て重要であることから、宮崎接続が多少犠牲になるのはやむを得ないと考えます。

 

今後の宮崎県と日豊線の動きに注目したいと思います。