スイッチバックのないスルー運転は大分-博多と、大分-新大阪のどちらが望ましいかを考える
旅行総合研究所「タビリス」、東九州新幹線、日豊本線ルートがわずかに有利。調査報告書を読み解く」を拝見しました。
東九州新幹線博多-大分間の、日豊本線と久大本線の両ルートについて、大分県が「東九州新幹線調査報告書」を公表したことに対する解説記事ですが、いつもながら分かりやすい冷静沈着、客観的な論調で参考になります。
日豊本線ルートに対しての久大本線ルートの優位性が乏しかったことに触れていますが、もう一点、日豊本線ルートの山陽新幹線接続が小倉駅の東側、すなわち新関門トンネル側、新大阪側である点も注目されます。
今回は、東九州新幹線日豊本線ルートの小倉駅接続について考えてみました。
以下、「タビリス」から引用させていただいた部分は太字、自分の意見は「→」で述べさせていただきますので、ご了承ください。
(以下引用)
日豊本線ルートは、博多方面からのスムーズな接続のため、小倉駅東側で分岐し南向きに転じるルートを想定しました。
(中略)
博多方面への直通を優先させる想定としているわけで、大分県として福岡方面へのアクセスを重視する姿勢を示したと言えます。
(以上引用)
→ 今回の調査報告書は新大阪接続よりも博多接続を重視しました。
東九州新幹線の日豊本線ルートは、在来線の日豊本線と同様、博多-大分列車と新大阪-大分列車の両方ともスイッチバックなしで行き来することはできません。
元々の東九州新幹線構想は全国新幹線網の構想の中で、東京・新大阪から大分・宮崎の遠距離時間短縮、直行列車を想定したものでした。
新幹線と趣旨は異なりますが在来線も同様、日豊本線は本州方面直行前提の線路配置になっています。
その中で、東九州新幹線が博多接続を重視したことは注目されます。
小倉での折り返し最短停車時間は2分で、気にならない時間と言えますが、座席は逆向きになります。
その際、座席を回転して前向きにする人と、後ろ向きでも割り切る人とで対応が分かれます。
博多-小倉は新幹線では15分ですが、在来線特急は最短40分から42分です。
山陽新幹線開通により、関西側の列車は新幹線に委ねることになり、大分の列車が目指す方向は関西から博多に変わりました。
さらに小倉-博多は、在来線はJR九州の所管ですが、山陽新幹線は九州島内、福岡県内の走行でありながらJR西日本の所管になりました。
これはJRの旅客6社分割に際し、東京-博多の東海道・山陽新幹線は新大阪を境に、東海道側はJR東海、山陽側はJR西日本の2社の方がよいだろうとの判断によるものですが、そもそも新幹線博多開業に際し、東京-博多の東海道・山陽・九州新幹線開業という発想がありませんでした。
(以下引用)
とはいえ、新大阪へ直通しにくい線形の場合、長距離輸送で威力を発揮する新幹線の特性を活かしきれなくなります。したがって、本当に日豊本線ルートで作るとなると、この点は議論になるでしょう。
(以上引用)
→ 大分県から見れば鉄道輸送として大分-新大阪よりも大分-博多の方をより一層重要視したいことは、九州全体の政策面、経済面等の要素からも理解はできるところです。
それゆえに、大分-博多の新幹線列車をスルーで運転したいこと、大分-新大阪の新幹線は小倉のスイッチバックはやむを得ないと判断したとみられます。
大分発着の新幹線列車を想定すると、新大阪行きは山陽新幹線の線路容量や博多を経由しないこともあって毎時1往復にとどまるが、博多行きは2往復の可能性があることも理由の一つと思われます。
(以下引用)
日豊本線ルート(小倉~大分)が31分、久大本線ルート(新鳥栖~大分)が32分です。
博多~大分間は、日豊本線ルートが47分、久大本線ルートが46分とほぼ同じです。
新大阪~大分間は日豊本線ルートが156分、久大本線ルートが187分となり、久大本線ルートが30分以上長くなります。
(以上引用)
→ この引用させていただいた部分は冒頭に出てくるものですが、あしからずご了承ください。
博多-大分は、「日豊本線ルートが47分、久大本線ルートが46分とほぼ同じ」となっており、所要時間の点では久大本線ルートのメリットは薄れたようです。
久大本線ルートにすれば、博多・新大阪の両方ともスイッチバックせずにスルー運転できる強みがありますが、新大阪側から見ると小倉から博多へ迂回して大分を目指すため新鳥栖-大分での逆戻り、小倉-博多-新鳥栖-大分で三角形の二辺の線形となり、新大阪-大分ルートとしては望ましいとは言えない配置です。
ただし、日豊本線ルートの所要時間は、博多-大分が全区間でスイッチバックしない、スルー運転を前提とします。
現在の「ソニック」同様、小倉でスイッチバックとすると、小倉1分停車が2~3分停車に延びて、所要時間も48~49分はとなります。
仮に博多-大分が所要49分とすると、久大本線ルートより3分延となります。
3分延の捉え方が「久大本線ルートなら3分も早い」か、それでも「ほぼ同じ」かどうかによっても変わってきます。
小倉で進行方向が変わること、座席の回転または後ろ向きに進行することの抵抗感、不快感の議論が出てきます。
進行方向が変わるなら博多側列車でなく、新大阪側列車の方でというのが今回の調査報告書の前提になっています。
◆ 日豊本線ルートのスルー運転は博多-大分の方が適当か?
以上のことを総合した、今回の調査報告書に対する自分の感想、意見は以下のとおりです。
〇 全国新幹線網による遠距離速達を考慮すると、大分起点の東九州新幹線は博多重視よりも新大阪重視が望ましいこと
〇 熊本-大分では久大本線ルートの方が23分、同じく長崎-大分では38分の時間短縮となるが、新大阪-大分の時間短縮度の方がより重要なこと
〇 日豊本線小倉-大分と、久大本線久留米-大分との列車本数で見ると、
・普通列車においては、日豊本線小倉発着普通列車58往復、大分44往復に対し、久大本線久留米発着は平均25往復、大分28.5往復
・特急列車においては、日豊本線小倉発着33往復に対し、久大本線久留米発着6往復で、いずれも差があること
〇 新大阪重視とすれば、久大本線ルートよりは日豊本線ルートの方が望ましいこと
〇 日豊本線ルートの小倉での山陽新幹線接続は東側でなく西側、博多側から小倉へ向かう配置の方が望ましいこと
〇 新大阪-大分の直通列車が小倉でスイッチバック運転となることは、遠距離乗車の観点から望ましくないこと
〇 博多-小倉のスイッチバック運転は、山陽新幹線15分の乗車時間を考慮すれば、新大阪-小倉の2時間05分よりは許容の範囲と考えること
〇 博多-大分の新幹線列車は、博多-小倉のJR西日本と、小倉-大分のJR九州との2社にまたがるが、連携協調が望まれること
以上ですが、大分に対する博多と新大阪の両立の難しさ、優先度は意見が分かれるところです。
対関西よりも対福岡という時代変化の考慮も必要ですが、列島縦断、遠距離時間短縮、全国新幹線網の原点に立ち返ると日豊本線新大阪スルーの方が、博多スルーよりも望ましいと考えますが、いかがでしょうか。