平行普通列車

常磐線と新京成に魅せられた者のブログです

京急のワイヤレスマイクと車外スピーカー状況を見る

京急は都営浅草線・京成乗り入れ車に車外スピーカー設置考慮を

京急というと何をイメージするでしょうか。

赤色車体、高速運転、前面展望、クロスシート、「快特」の列車種別、先頭車両は必ず電動車など、独特のこだわりを持つ鉄道です。

これらのこだわりが総合化されて、やがて京急ファンとなり、京急を通じて鉄道ファンになり、鉄道趣味の広がりや鉄道研究に深入りしていくケースも見られます。

筆者もその一員で、先頭車が電動車であることにより、前面展望とモーターの音の両方同時体感は他の路線では得られない魅力があります。

都営浅草線、京成の車両は先頭車が電動車要件を満たさないと京急に乗り入れることはできません。

京急にはかつて前照灯の1灯化、片開きドアのこだわりの時代もありました。

 

車掌のワイヤレスマイク落下による隣駅まで駆け足追いかけ騒動

車掌のワイヤレスマイクも京急のこだわりの一つです。

車掌が乗降ドアを閉める前に、ワイヤレスマイクで「ドアを閉めます」と放送する光景は京急の風物ともなっています。

京急のワイヤレスマイクというと、かなり前の話ですが2015年10月14日の北品川駅でのマイク落下騒動を思い起こします。
その日の午前0時過ぎの下り最終電車の車掌が北品川駅で乗降ドアを閉めた直後、手に持っていたワイヤレスマイクをホームに落としました。
車掌がホームに降りてマイクを拾う前に、運転士は車掌からの発車合図のブザーを確認していたため、車掌がマイクを拾っていることは知らないまま、次の新馬場駅に向けて発車しました。
拾ったマイクを持ちながら駅に取り残された車掌は、北品川の改札口を出て、次の新馬場駅まで約700メートル、一般道路を駆け足で走って電車を追いかけました。
電車は新馬場駅到着後、ドアの開かないことに気づいた運転士が最後部の車掌のところまで確認に行ったところ、車掌の不在に気づきました。
そして5分後、北品川から走ってきた車掌が新馬場ホームに停まっている電車に追いついたということです。
当時の同日付けの神奈川新聞「カナロコ」から、記事の一部を引用させていただきます。
 
(以下引用)
北品川、新馬場の両駅ともホームに駅係員はいなかった。ワイヤレスマイクは駅係員がいないホームで車掌が発車やドア閉めなどをアナウンスするため、京急電鉄が1973年に先駆的に導入している。
 ワイヤレスマイクは落下防止のために手に巻き付けるひもが付いており、駅でアナウンス後、車掌は乗務員室のドア近くにある専用の台に置く決まりになっているという。
 京急電鉄広報課は「今回のケースでは車掌は運転士に停止合図を送るか、非常ブレーキを掛けるなどの方法があった。基本動作の指導をあらためて徹底したい」と話している。
(以上引用)
 
他の路線では起こり得ない、こだわりのワイヤレスマイクを使用する京急ならではのエピソードでした。
 
車外スピーカーを設ける都営、京成、北総車両
ワイヤレスマイクを活用している鉄道は京急のみとみられ、他の鉄道では車体の窓上や冷房装置内に組み込んだ車外スピーカーによって、車掌は駅ホーム上での案内を行なっています。
京急車両が乗り入れる都営浅草線、京成、北総(以下、「京成等」)の車両は車外スピーカー方式です。
京急のように、発車前にワイヤレスマイク放送をするのではなく、電車の発車時刻が近づいている時または所定時刻を過ぎている時、注意喚起が必要な時を中心に使っている点は京急と異なります。
 
京急を代表する1000形では2016年度製造の16次車での6両、8両編成から車外スピーカー設置を開始しました。
15次車以前の1000形や1000形以外の形式には備わっていないようで、今後の増設までは行なわないようです。
 
京急ワイヤレスマイク方式で車外スピーカー案内ができない都営浅草線、京成線内
ワイヤレスマイク方式ゆえに車外スピーカーは不要としてきた京急は、1000形16次車以降ではそれを設置したものの、15次車以前の1000形、600形、1500形等は車外スピーカー未設置の状態で京成等に乗り入れてきます。
京急線内ではワイヤレスマイクでの車外放送であっても、京成等でもワイヤレスマイクを使うようにすればよいとまではいきませんでした。
京成等は車外スピーカー方式で行なっているため、京急編成で車外スピーカーのない車両が乗り入れてくると車外放送案内はできません。
もちろん京成等でも全車両に車外スピーカーが設置されているわけではありません。
車外スピーカーがない編成では、自社の電車を含め、車内放送で行なうことになります。
 
しかしながら京急のかたくななワイヤレスマイク姿勢の反動で、京成等で車外放送ができないこともあるのは残念な現象です。
 
京急から京成等への配慮は
京急が先頭車は電動車のこだわりを京成等に求め、それを実行しているならば、逆に京急も京成等での状況を考慮する配慮も時にはあってもよいのではないかと感じます。
ワイヤレスマイクの事例でいえば、このマイク案内は京急のみのものであり、京成等は車外スピーカーで案内している実態に即し、京成等の状況を鑑みて車外スピーカーを設置する配慮は以前からあってもよかったのではないかとも感じられます。
2015年度製造の1000形15次車までは、車外スピーカー設置により、ワイヤレスマイクを不要にしていく結果を招くことを避けたかったようにも思われます。
 
1000形では2023年製造の最新22次車まで、1000形総勢486両のうち16次車以降の6両・8両編成154両、31.7%が車外スピーカー付きです。
 
車外スピーカーは列車設備のごく一部にしかすぎませんが、京急でのワイヤレスマイクでの放送を聞く都度、この列車は京成等に入ったら車外放送で流れるのかと気になってきます。
ワイヤレスマイクから車外スピーカーに移行していくのも時代の流れです。
京急がワイヤレスマイクから車外スピーカーに移行するのは1000形15次車の引退後の、先の長い話か、その前に設置するか、経過を見守っていきたいと思います。
 
(※ 記載にあたり、2015年10月14日付け、神奈川新聞「カナロコ」を参考にさせていただきました。)