平行普通列車

常磐線と新京成に魅せられた者のブログです

京葉線 もしもJR東日本が沿線に事前説明していたら展開は違っていたか?

実施時期から逆算しての、地域への事前周知はがあれば混乱は回避できたか?

2024年春のダイヤ改正における京葉線の通勤快速・快速の各駅停車化(以下、「各停」)関係について、いろいろと触れさせていただいています。

今回は、JR東日本千葉支社が沿線自治体等にダイヤ改正概要について、事前に説明を行なっていたら展開は違っていたかどうかについて考えてみたいと思います。

 

鉄道側が沿線に事前説明を行なう効果と、ダイヤ改正内容の修正との兼ね合いについて

デイリー新潮、2024年1月8日付け、「京葉線ダイヤ改正で大騒動 通勤快速の廃止でJR東日本千葉支社と沿線自治体が対立」で印象に残った箇所がありましたので、一部を引用させていただきます。

 

(以下引用)

(※冒頭発言一部略)「今回の京葉線のダイヤ変更に関しては事前にJR東日本千葉支社から説明や相談はありませんでした。いきなり発表された形です。京葉線の利用実態について、JR東日本千葉支社がどんなデータを持っていて、どんな考えで通勤快速を廃止しようとしているのかまったくわからない状況でした。それなので、ますはちゃんと説明してほしいとお願いしたのです」

と困惑するのは千葉市都市局都市部交通政策課の担当者だ。

~中略~

JR東日本千葉支社も、(今回のダイヤ改正に)周到に準備を進めていたことだろう。当然ながら、沿線自治体の反発も想定していたはずだ。

ただ、JR東日本千葉支社が準備段階で沿線自治体などにダイヤ改正の相談をしていなかったことは批判されても仕方がないかもしれない。

(以上引用)

 

次に、産経新聞、2024年1月10日付け「京葉線ダイヤ改正、千葉県の外房線沿線の茂原市大網白里市一宮町も撤回要望」から一部を引用させていただきます。

(以下引用)

茂原市大網白里市一宮町外房線沿線3市町からJR千葉支社へ、ダイヤを)改正する際は地域の意見を反映する仕組みを創設するよう提案した。

(以上引用)

 

以下、「JR東日本千葉支社が準備段階で沿線自治体などにダイヤ改正の相談をしていなかったこと」(デイリー新潮)と、「改正する際は地域の意見を反映する仕組みを創設するよう提案した」(産経新聞)ことについて考えてみます。

毎回のことですが何の根拠もない勝手な想像ですので、予めご了承ください。

 

通勤快速の各停「変更」のJR千葉支社と、「廃止」の沿線自治

一般論ですが、事業側が事業を行なうにあたっては、従来と同様なら問題ないのですが、以下の3種のケースについては急に公表すると混乱をきたし、事業計画に影響を与える場合があります。

① 新たな事業を開始する場合 → 鉄道に例えれば「新たな路線開業や列車運行を開始する場合等)

② 既成の事業方法を大きく変更する場合 → (同上)「従来の列車体系を大きく変更する場合等)

③ 既成の事業を廃止する場合 → (同上)「既存の列車種別の廃止、路線の廃止等)

 

とくに、「③ 既成の事業を廃止する場合」については、そのフォローがあるかどうかもポイントになります。

フォローがなく、ただ廃止するだけの場合、影響を受ける側の理解を得ることは容易でないのが通常です。

 

今回の京葉線通勤快速で見れば、JR千葉支社にとっては②の通勤快速から各停への「変更」の認識ですが、沿線自治体は③の通勤快速の「廃止」と受けとめられています。

地域では通勤快速「廃止」反対、廃止に対する何のフォローもない認識ですが、JR千葉支社は通勤快速が各停に変わるだけの「変更」、所要時間の若干の延長だからフォローはないという違いがあります。

スタート時点の認識が違っているのも混乱をきたした一要因です。

 

事前に沿線自治体などに相談していれば今回の混乱はなかったか?

この認識の違いを共通化するためには、JR千葉支社は沿線自治体等に事前説明を行なった方がよかったでしょうか。

 

一般的にも、事業廃止は影響が大きいため、事前に関係機関等に説明回答で概要を伝えることにより、事業廃止を円滑に進めようとする方法は、よく行なわれているところです。

急な公表による混乱、本番実施への影響、支障をきたすことを避けるためであり、世間一般に根回しとも言われます。

 

今回、通勤快速廃止の事案を、JR千葉支社は事前に沿線自治体に説明する計画はあったのでしょうか。

通勤快速から各停への種別「変更」、各停として継続運行するので、そもそもそうした気持ちはなかったでしょうか。

 

仮の話ですが、事前に説明した方がよいかどうかの可否をJR千葉支社が検討していたとするならば、以下のような流れになっていったのではないかと想像します。

 

JR千葉支社が、事前に沿線自治体への説明を行なうかどうかを討議する。

→ 理解されればよいが、自治体から反発、反対されるとダイヤ改正が出来なくなる恐れがある。

実施の難しい代替え条件を提示された場合も同様。

→ その場合、京葉線全体の効率化という2024年3月ダイヤ改正ができなくなる。

→ 京葉線輸送の効率化は懸案事項であり、2024年3月改正で実施したい。

→ 仮に事前説明をしたとして万一、沿線や関係機関には理解されない場合、早くから地域に改正案を打ち出した分、2023年12月のダイヤ改正の公表にも影響してくる。

→ 混乱を生じるならば2023年12月のダイヤ改正の公表まで、動きをしない。

また、公表後に反対意見・苦情・要望等が出されたとしても、一先ず2024年3月改正を実施し、反対意見に対してはその後の課題または調整してダイヤ修正を検討する。

 

以上のような流れかと想像します。

今回の混乱は、通勤快速廃止(変更)を早めに伝えても理解されるのは難しく、それが逆に一層混乱すると考えられるので、事前に関係機関に伝えることはしない方がよいと考えたか、またはその認識自体がなかった結果ではないでしょうか。

 

一方、地域側の認識はどうでしょうか。

JR千葉支社が通勤快速の各停化を重要視する認識ならば、少なくとも1年以上前に沿線自治体等にダイヤ改正内容を伝え、地域から出された意見を支社に持ち帰って検討し、改めて意見・要望の反映結果を再度説明するのが順序であり、ダイヤ改正実施までに時間がないというなら、ダイヤ改正をしたい年月から逆算して1年以上前から地域に説明すべきである、その時間がないならダイヤ改正時期を遅らせよ、という認識かと思われます。

 

ただし今回の京葉線に限らず、そうなってくると全国の鉄道ダイヤ改正について、鉄道側が改正を計画する時期に実施できなくなる恐れがあります。

 

JR千葉支社はどのような流れにする方法が良かったのか?

今回、京葉・房総地域では、快速を設定しないダイヤ改正は認められない、という地域の姿勢はどんなに事前説明をしても変わらないと思われますが、事前に話をしないよりは話をした方が混乱を避ける意味ではよかったのではないかとは感じます。

全列車各停の種別にしたかったが地域の意見が多いことを反映して通勤快速を快速にすることを検討するJR千葉支社側。

通勤快速でないと本来は納得しないが最小限、快速にしてでも運行すべき、各停だけにすべきでないという地域側。

両者の意向は違いながらも、共通点を見い出していき、ダイヤ改正を行なうのが理想的だったということになりそうです。

 

ダイヤ改正案の作成には年月を要します。

JR千葉支社が2024年3月からどうしても実施したい結論があるならば、2022年度中には地域に話をするというのが順序と思われます。

コロナ禍の影響、混乱等で、2年前では先行きが読めなかった点はありますが、事業者側が実施したい時期からの逆算は、どの業務にも必需の要素です。

 

事業実施側の、事前の想定質問と回答準備の重要性

もう一つ、これも一般論としてですが、事業の説明に際して重要なことがあります。

主催者側の話を聞いた相手側からの質問に対する回答を事前に整えておくことです。

持ち帰って検討しないと答えられない重要事項は別として、軽易なことでも「この場で回答できないので後ほど別途回答」を何度も繰り返すと信頼性を失う結果を招きます。

 

今回の場合、JR千葉支社は沿線自治会等から想定される質問と回答についてどの程度、事前に内容を詰めていたでしょうか。

沿線自治体や住民側の立場だったら、事前説明を聞いた後、どのような展開が予想されるだろうか。

主旨が受け入れられるだろうか。

受け入れられないとすれば理由は何か。

どこが問題か。

何が不満か。

どのようなダイヤ改正を求めているか。

どうすれば歩み寄ってもらえるだろうか。

 

これらを予め想定し、「納得はしてもらえなくても理解はする」回答を用意しておくことが事前説明のポイントです。

その回答が平準化、各停駅の利便性向上、各停の所要時間短縮の3点を通り一遍に繰り返して理解を求めるほかはないのか。

ただ3点の意向を繰り返すだけでは理解は得られないのではないか。

理解が得られなかったら、今回のダイヤ改正はどうするのか、次回のダイヤ改正の宿題にするのかといったことの、事前の準備です。

結果論ですが、通勤快速の各停化により所要時間が長くなることについて、10分台の所要時間の延長は理解の範囲という以上の詰めはなかったかと思われました。

 

物ごと、心配し過ぎても何事もできなくなりますが、どうにかなるさと楽観的過ぎるのも場合によっては収拾がつかなくなります。

事前の措定問答の作成、いわゆる鉄道側のQ&Aの事前の用意は必要なことです。

 

まず相手の声を聞き、受け止めてから、様々な声に対して鉄道側は誠意ある回答姿勢で理解を求めること、その誠意さとともに、ダイヤ改正の決定権は鉄道側にあるんだよということを相手方に感じさせない空気感、一緒に問題点を共通認識して解決策を見い出していきましょうよという協調、歩み寄り姿勢が重要な要素と感じました。

 

(※ 記載にあたり、デイリー新潮、2024年1月8日付け、「京葉線ダイヤ改正で大騒動 通勤快速の廃止でJR東日本千葉支社と沿線自治体が対立」(新潮社)、及び産経新聞、2024年1月10日付け「京葉線ダイヤ改正、千葉県の外房線沿線の茂原市大網白里市一宮町も撤回要望」を参考にさせていただきました。)