「減車より新車」の話題、6両編成12分間隔よりも10分間隔5両編成による現状ダイヤ維持がポイント
東武から、2024年4月16日付けで「2025年から東武アーバンパークラインに5両編成の新型車両80000系を導入します 」のニュースリリースがありました。
アーバンパークラインへの新型車両80000系の投入が話題を呼んでいます。
今回は、80000系の話題と併せ、ニュースリリースの内容から読みとれる東武側の事情を見てみたいと思います。
以下、リリースから引用させていただいた部分は太字で、筆者の意見・感想等は→で記載します。
毎回のことですが、筆者の意見は何の根拠もない勝手な想像ですので予めご了承ください。
また、拙ブログでは従前から東武野田線の路線名称で記載していますが、今回はニュースリリース内容の引用展開であることからアーバンパークラインの名称で表記します。
◆(※見出し部分)
5両編成の新型車両80000系を導入します
(※冒頭説明部分)
東武鉄道(本社:東京都墨田区)では、2025年から東武アーバンパークラインに新型車両80000系を導入します。最新機器の搭載や5両編成化等により、省エネ・CO2削減による環境負荷低減を図ります。
→ 新型80000系はどのような車両だろうかと、話題が車両内容に向きますが、見出しの「5両編成の」「5両編成化等により」という部分で、その頭に「現在の6両編成を1両減らした5両編成の」「6両編成の5両編成化等により」といったお断り文句を入れていないところに東武の苦心を感じます。
冒頭から減車の話を持ち出したら、せっかくの新型車両の話題が弱まってしまいますから当然と言えます。
減車の話題よりも新車の話題ということです。
しかしながら6両を5両に減じることを見出しで触れないわけにもいかず、さりげなく「5両編成の新型車両を導入」と表現しています。
一般の人には、現状の編成が6両か、5両か、何両編成だろうと関心が薄い人には「5両編成」部分を気にしないまま流していく含みがあると思われます。
◆ 小さなお子様やそのご家族が車内で快適にお過ごしいただけるよう、全編成に『たのしーと』を設定します。
~中略~
一部箇所に『たのしーと』を設定し、子供部屋をイメージしたわくわくする内装を施すとともに、ベビーカーをご利用のお客様が隣でお座りいただける構造を実現しています。
→ 「たのしーと」は80000系のポイントの一つです。
従来の優先席発想から脱却し、子供に焦点を当てたことは思い切った発想転換です。
車端部の位置に、座席の肘掛けと同じような形状の仕切り板を設置することもよい配慮と思います。
「たのしーと」と聞いた時、一瞬JR西日本の関西線(大和路線)とおおさか東線の「うれしート」を連想しました。
JR西日本の「うれしート」は「ト」がカタカナですが、東武は「たのしーと」で全部ひらがな表記の点が異なります。
「うれしート」を「うれシート」と誤記する例があるので、全部ひらがなの「たのしーと」の表現の方が誤記、誤字はなく、賢明な表記と思います。
蛇足ですが、筆者はひねくれ者なので「他のシート?」と一瞬、錯覚してしまいます。
シートの愛称が「嬉しい」「楽しい」をもじった「うれしート」「たのしーと」と続くと、通常の優先席やグリーン車もやがて「やさしーと」「すばらしーと」「うつくしーと」「あたらしーと」「いいしーと」などの愛称に変わっていくのでしょうか。
◆ サスティナビリティの観点から、60000系を6両編成から5両編成に改造する際に派生する1両を80000系に流用します。
→ サスティナビリティとは、持続可能性、環境や経済等に配慮した活動を行なう意味とされています。
サスティナビリティという言葉は、一般の人がすぐ理解できるなじみの言葉になっているのでしょうか。
筆者の未熟な次元では「サスティナビリティ(環境負荷低減、経済性)」のように、さりげなくフォローする表現の配慮をしてほしいと考えます。
そもそも、サスティナビリティが環境負荷低減、経済性の意味でないとすれば、単なる筆者の未熟さと自戒します。
後段に出てくる「DX」も同様で、デラックスのことかと誤認識する程度で、逆に時代の変化に追いついていけない年齢を再認識させられます。
◆ 東武アーバンパークラインに新型車両を導入するとともに、現行6両編成の列車を5両編成化することで、さらなる省エネ化を図り環境問題に対応し、また5両編成化後も適正な列車本数の維持に努めることで、新しい生活様式に伴うご利用状況の変化に対応してまいります。
→ 6両編成の5両編成化と、さらなる省エネ化と環境問題とは、どのように結びつくのでしょうか。
省エネ化と環境問題に取り組むために5両編成化したのでしょうか。
1両の減車化によって省エネ化されるという理屈は分かりますが、減車するということは通勤時間帯を中心に列車内が一層混雑する、着席率が下がるということでもあります。
混雑増の影響はさほど大きくなく、減車による省エネ効果の方が大きいということでしょうか。
環境問題に対応という箇所も同様です。
1両減車することが環境問題にも対応するというのは、減車後の結果であって、そもそも今回、なぜ減車したのかを理解してからの話と思います。
◆ ご利用動向に合わせた対応を図りながら、引き続き安全・正確かつ利便性の高い輸送サービスを継続するために、より一層の効率化を図るとともに、環境にやさしい鉄道を目指す必要があると考えています。
→ 「ご利用動向に合わせた対応を図りながら」という表現から、輸送実態からみて6両編成の輸送力が過剰であること、今後も利用回復が見込めないことの意味合いがあると思われます。
「利便性の高い輸送サービスを継続する」ことと、「より一層の効率化を図る」こととは相反しますが、それを両立化するのが、今回のアーバンパークラインでの1両減車化の結果と受けとめました。
具体的には、以下のとおりです。
【現在の普通電車と急行】
〇 普通電車10分間隔→毎時6本→6両で毎時36両分
〇 急行30分間隔→毎時2往復→6両で毎時12両分
◎ 毎時合計 延べ48両
【6両編成のままで毎時1往復減とした場合】
→ 6両編成のままで輸送力を調整すると、毎時10分間隔6往復を、12分間隔5往復とせざるを得ない
〇 6両で12分間隔の場合→毎時延べ30両分
〇 急行30分間隔→毎時2往復→6両で毎時延べ12両分
◎ 毎時合計 延べ42両
→ ただし、10分間隔が12分間隔になって、毎時1往復減の不便さが生じる。
また、編成両数は6両のままではあっても、12分間隔化、毎時1往復減により、5両編成化での毎時6往復と比較して、列車内での混雑としては大差はない。
【普通電車を10分間隔、毎時6往復のままで5両化した場合】
〇 普通電車10分間隔、毎時6往復で毎時延べ30両分
〇 急行30分間隔→毎時2往復→5両化で毎時10両分
◎ 毎時合計 延べ40両
→ 全車6両編成に比べて8両分が削減できる。
運転ダイヤ上も10分間隔継続で不便さを与えない。
ラッシュ時の混雑、日中時間の混雑には課題があるが、割り切る。
6両継続による本数減でなく、現状ダイヤ確保のための1両減車の選択
以上を総合して、10分間隔ダイヤを継続することを最重点に、編成両数削減で効率化対応したと考えられます。
減車を機に旧型車を新型80000系に置き換えることで、減車の話題よりも新車の話題で明るくしようという80000系25編成125両ものアーバンパークライン大量投入趣旨を感じます。
アーバンパークラインの利用状況について、コロナ禍やテレワークによる減少は分かりますが、2023年度になって利用は戻っていないのか、全盛期の回復までは見込めないのか、回復していったとしても6両編成までの需要回復は見込めないのかが知りたいところです。
来春の80000系登場後の変化を見守りたいと思います。