平行普通列車

常磐線と新京成に魅せられた者のブログです

中央線三鷹-立川複々線化は開業前加算運賃で建設促進されるか?

三鷹-立川の複々線によって快速は平日も高円寺・阿佐ヶ谷・西荻窪の杉並3駅通過ができるか?

旅行総合研究所タビリス、2024年6月24日付け「中央線複々線化は動き出すか。JRに開業前加算運賃を解禁へ」を拝読しました。

国が、鉄道整備のための加算運賃の適用範囲を拡大する方針を明らかにしたことを受け、中央線三鷹-立川の複々線化などが整備に向けて動き出すかに触れた、興味深い内容です。

記事の一部を引用させていただきます。

 

(以下引用)

具体的な注目プロジェクトは、中央線三鷹~立川間の複々線化事業でしょう。交通政策審議会答申第198号に盛り込まれ、沿線自治体が強く要請してきたにもかかわらず、JR東日本が事業化に消極的なプロジェクトです。

この区間複々線化が実現すれば、三鷹以西の中央線や、青梅線五日市線利用者が、増発や定時性向上、速達性向上の恩恵を広く受けます。受益の範囲は広く、広範囲での加算運賃を、開業前に設定することができるでしょう。つまり、JR東日本の負担は軽くなります。

中央線三鷹~立川間の複々線化事業が進展しなかった理由は、JR東日本にとって、投資に見合う利益が期待できないことでした。新制度で事業者の負担が減り、資本費回収を早めることができるのであれば、定時性向上や速達性向上はJRの利益にもなるので、実現への可能性が高まるかもしれません。

(以上引用)

 

中央線三鷹-立川の複々線化事業については、文中にある通り、「事業が進展しなかった理由は、JR東日本にとって、投資に見合う利益が期待できないこと」であり、「新制度で事業者の負担が減り、資本費回収を早めることができるのであれば、定時性向上や速達性向上はJRの利益にもなるので、実現への可能性が高まるかもしれません」という部分について考えてみたいと思います。

 

高円寺・阿佐ヶ谷・西荻窪の「杉並3駅」の快速の平日停車と休日通過

三鷹-立川の複々線化を考える時、平日の快速は停車し、土曜・休日の快速は通過する、高円寺・阿佐ヶ谷・西荻窪の、いわゆる「杉並3駅」の通過措置が課題となります。

中央線中野-三鷹複々線化にあたり、当時の国鉄は高円寺、阿佐ヶ谷、西荻窪の3駅は快速通過を計画していましたが、通過は土曜・休日に限られ、平日に快速はこの3駅に停車となりました。

そのため、複々線の設備がありながら、快速・緩行線とも中野-三鷹が各駅停車となる平日は、国分寺・立川方面から新宿・東京への利用者、通勤・通学客にとっては、複々線化の意義は薄れました。

特別快速は中野-三鷹間無停車で、複々線を有効活用していますが、特快の場合、荻窪、吉祥寺も通過します。

ここで、乗りものニュース、2022年7月14日付け、「なぜ休日は快速通過? 高円寺・阿佐ヶ谷・西荻窪『杉並3駅』 長年続く風景の発端」の一部を引用させていただきます。

 

(以下引用)
国鉄は、三鷹以西からの速達性を重視し、総武線に加えて中央線までも停車させようとはしませんでした。しかし高度経済成長も相まって、「杉並3駅」の利用が年々増加していた時期です。「通過電車があることで買い物客が減る」ことを危惧した地元商店街の要望などもあり、杉並区は国鉄に対し、中央線のホームも設けるよう働きかけます。

 国鉄は1968(昭和43)年、杉並区に“一部の快速”を停車させることを約束。それこそが、平日のみ「杉並3駅」に快速を停車させることだったのです。なお、この際に国鉄は「将来の三鷹以西の(複々線延伸計画にあたっては、中野~三鷹間の運行形態を再検討する」としていましたが、複々線区間は延伸しないまま現在に至ります。

 かねてより中央線快速は朝ラッシュ時間帯、特に上りの混雑が激しく、遠方の通勤客からは停車駅を減らしたダイヤ設定を求める声が上がっていました。もともと「杉並3駅」を通過していた特別快速(のちの中央特快)に加え、通勤快速、青梅特快、通勤特快といった列車が、1980年代後半から90年代前半にかけ相次いで設定。1994(平成6)年12月には、それまで平日ダイヤだった土曜日も休日となったため、快速が土曜日も杉並3駅を通過する現在のようなダイヤが確立されました。

(以上引用)

 

JR東日本三鷹-立川複々線化の意思はあるか?

中野-三鷹複々線化は1969年であり、2024年基準でみると55年が経過しています。

通勤電車大混雑時代の逼迫した時と比べると、現在の電車混雑は中野-三鷹複々線効果もあって減っていることや、三鷹-立川の複々線延伸の沿線の声も大きくは聞こえてこない状況です。

三鷹-立川が複々線になった際には、「将来の三鷹以西の(複々線延伸計画にあたっては、中野~三鷹間の運行形態を再検討する」とのことですが、「杉並3駅」がはたして平日の快速通過に納得するかといえば、一筋縄ではいかないと思います。

「杉並3駅」から東京への通勤利用にとっては、まさに快速が便利であり、55年の長い歴史で快速電車通勤が定着しています。

「運行形態を再検討する」との55年前の申し合わせからは、時間が大きく経過しています。

もしも快速が通過となれば、神田・東京へは中野や御茶ノ水で、緩行線電車から快速に乗り換えとなります。

中野では緩行線と快速の停車ホームが異なります。

御茶ノ水は同一ホームで、乗り換えは容易ですが、中野-御茶ノ水が各駅停車となり、移動時間が延びてしまいます。

 

立川方面の利用者は、休日の快速と同じ停車駅措置を望んでいるはずですが、三鷹-中野は快速も各駅停車であり、新宿・東京への速達は特快ということで、慣れと諦めがあるように感じます。

平日下り、17時から22時の間の、中野-三鷹荻窪、吉祥寺停車の通勤快速が、三鷹-立川複々線化後の姿の前段の形となっています。

ただし、朝の上り快速には通勤快速の設定ができないことが「杉並3駅」課題の象徴的な姿とも言えそうです。

 

立川方面から東京への快速電車通勤において、仮に立川-三鷹では西国分寺国分寺の2駅だけの停車であったとしても、三鷹-中野が各駅停車になってしまっては立川-三鷹複々線化しても意味がありません。

かといって、立川以西の沿線市が一丸となり、三鷹-中野の快速停車駅は休日と同様にすることを求めても、通過3駅を説得するのは難しく、相当な時間を要すると思われます。

現在、立川以西からJR東日本に対する東京速達、「杉並3駅」の休日同様の通過対応の声はどの程度でしょうか。

 

余談ですが、一度停車した後の通過措置の難しさは、常磐線天王台駅のケースにもありました。

我孫子-取手の複々線完成後は、それまで天王台に停車していた快速は、緩行線電車の取手延長運転に伴い、同駅を通過するという対応が沿線の反対等により実現できませんでした。

その結果、常磐線我孫子-取手の緩行線は当初から、平日でも通勤時のみの運転であり、現在は土曜・休日は完全運休という、複々線設備がほとんど活かされない結果を招きました。

 

中央快速線では2024年度末から2025年度にかけて、快速の12両編成化、グリーン車2両の増結が予定されています。

JR東日本中央快速線ホームの12両停車化工事を進める中で、「杉並3駅」のホームも延伸しています。

さらに今後はホームドアの設置計画もあります。

三鷹-立川の複々線化により、これら3駅を快速が終日通過とすると、ホーム延伸工事、ホームドア、エレベーター等の整備は無駄になります。

JR東日本から見ると、仮に今後、三鷹-立川の複々線化を成しえたとしても、3駅の快速通過の実現は、それとは別問題であること、通過の実現は現実的に容易でないことを背景に抱えたものと考えられます。

以上のことから、JR東日本三鷹-立川の複々線化の意思はほとんどないと思われます。

三鷹-立川の複々線化は「杉並3駅」の快速通過がなければ意義は薄く、反面、この3駅のホーム延伸等の対応を行なったことも加わって、快速の平日通過は現実に難しいことから現状のまま推移していくのではないかと思われます。

また、京葉線の東京-三鷹延伸構想で、中央線快速とつなぐ構想の話も聞くことがありますが、仮にそれが完成しても新宿を経由しないことや、杉並3駅通過が成されることにはつながらないと考えます。

 

(※ 筆記にあたり、旅行総合研究所タビリス、2024年6月24日付け「中央線複々線化は動き出すか。JRに開業前加算運賃を解禁へ」、及び、乗りものニュース、2022年7月14日付け「なぜ休日は快速通過? 高円寺・阿佐ヶ谷・西荻窪『杉並3駅』 長年続く風景の発端」から、それぞれ一部を引用及び参考にさせていただきました。)