眠気を催して所定停車位置を超える話題に対する雑感です
4月に入ってから列車が所定の停車位置を行き過ぎて停まる、いわゆるオーバーランのニュースを聞くことが多くなりました。
この場合、所定の停車位置をオーバーした距離にもよりますが、どのような対応をしているでしょうか。
主に、以下の3つのいずれかと思われます。
〇 停止位置から列車を動かさず、ホームのないドアからは乗降しない前提でドアを開ける
〇 列車をバックさせて所定位置まで戻す
〇 列車をバックさせると信号機器や踏切、後続列車への影響があるため、停車を見送って次の駅まで列車を進行させる
オーバーランの原因は眠気を催す(睡魔に襲われる)ことがほとんどですが、考え事をしていたケースもあるようです。
昼食後、夕食後、残業後、飲酒後、前日の睡眠不足など、眠気を催すのは誰にでも起きる現象です。
また、列車の揺れは眠気を誘います。
列車が動くとともにすぐ眠る(眠れる)人もいます。
バスやタクシーと違い、列車は決まったレール上を走るため、ハンドル、方向指示器がない分、緊張感は少なく、運転して眠くなるのは分かる気もします。
乗務員それぞれ、睡魔対策を持っていると思います。
今回は、もしも自分が乗務員だったら、睡魔とどう戦い、打ち勝つだろうかという想定話です。
車運転時の睡魔対策とも共通点があります。
なお、現場事情を何も知らない者の勝手な素人発想話であり、他意はありませんので予めご寛容ください。
〇 運転席の椅子に座らずに立つ
疲労中に乗車し、座れない時は立っていても眠ってしまうこともありますが、少なくとも通常は座るから眠くなる、逆に言えば、立てば眠気は減ります。
運転士用の椅子があっても立って運転する光景を見ることがありますが、これは睡魔と戦っているのではなく、信号、踏切、徐行注意箇所、所定位置停車、ブレーキ操作に対する、自身に対しての適度な緊張感ゆえと見受けます。
ところで近年の乗務員室を見ると、JR東日本E233系電車のように事故対策上、運転士の着座位置を高くしたため、立って運転する行為ができなくなった列車が多くなりました。
大手私鉄や、JR東日本でのE231系までの従来型座席構造よりも土台のしっかりしたE233系固定座席、高い着座位置の方が望ましいのでしょうが、立った姿勢では運転できない構造を通勤列車にまで拡大するのはいかがなものかと考えさせられます。
〇 窓を全開にする
外からの風が車内に入ってくる刺激が、眠気防止にもっとも効きます。
ただし走行中の話であり、停車中は効果が出ません。
また、高速運転になると入り込む風が強すぎ、窓開けは危険になります。
〇 指差し動作を多用する
じっとしているから眠くなります。
指差し動作で大きく腕を動かし、同時に声を出すのも有効です。
〇 発声と会話
黙っているから眠くなるなら、声を出せば眠くなくなるのも道理です。
運転中に安全確認、踏切確認、進行、信号表示、徐行、制限速度、停止等で声を出すことは眠気にも効き目があります。
大きな声ほど効果的ですが、客室内に響き渡りすぎない「程々」が肝心です。
車掌業務では、車内放送が自動化された列車により肉声放送が減った分、眠気が起きやすくならないか、気になります。
余談ですが、会議の世界では座ると眠くなりがちです。
話を聞くだけの会議や講義研修は一層睡魔が誘いにきます。
一方、会議や研修中でも自分が声を出す場面があるほど睡魔は消えます。
椅子を配置せずに立って会議を行ない、最大60分以内で設定し、一人ずつ発言の機会を設けると、本題だけをさっさと議論する事例があります。
座ると雑談する、余談が多くなる現象がなくせる副産物効果もありますが、会話は脳が刺激されるので活用したい方法です。
飲料、ガム、音楽、唄う行為なども有効ですが、車運転では有効でも鉄道では論外です。
自分に当てはめれば体を叩いたり、つねったりするかなと想像しました。
〇 EB装置の時間間隔と音量、音の種類
運転士が列車運転中、何らかの機器を一定時間作動しないときに警報ブザー、警報ランプとともに、数秒以内に一定操作をしないと緊急ブレーキがかかるのがEB装置で、仮眠防止、事故予防の一策です。
警報までの時間を1分以下に縮めるのも一方法ですが、乗務員は逆に疲労するのが難しいところです。
警報の音量を大きくするのも同様で、非常時は良いとしても通常時は心臓にあまり良くないと感じます。
終着駅で運転士と車掌が入れ替わるときも、かなり大きな音量です。
思いつきですが、E233系型タイプの運転士の椅子では、EB装置での緊急ブレーキの際に、乗務員ベッドのように椅子が徐々に持ち上がっていく構造にするのはどうでしょうか。
〇 貨物列車の機関士と睡魔
最後にJR貨物、貨物列車の機関士の方々について。
貨物列車は乗客がいない分、また夜間走行が多い分、孤独感もひとしおと思います。
運転時間の調整や、旅客列車の通過待ちのため退避線で長時間停車のケースが多く、旅客列車とは異なる眠気が起きるのではないかと察します。
以前、無線を活用して眠気対策を兼ねて、本部と機関士とが対話する構想を何かの本で読んだことがあります。
時代も変わっているので難しいとは思いますが、深夜の貨物列車と貨物機関士が日本経済の一面を支えていることは、トラック輸送も同様ですが、もっと光を当ててもよいのではないかと感じました。