運転中のサングラス使用、水分補給、業務用携帯電話、カーテン下げ等での客室貼り紙の背景
近年、列車運転士が、直射日光のまぶしさによる事故や運転ミス、疲労等を招かないよう、サングラスを認めるケースが多くなっています。
列車乗務員のサングラスに際しては、乗客に威圧感を与えるとのことで着用に慎重になっていた経過がありますが、安全・安心の運転が最優先の中、運転士からの声にも応える形となりました。
JR東海が2023年10月24日付けで、「在来線運転士の保護メガネ着用について」ニュースリリースをしていますので、引用させていただきます。
(以下引用)
当社では、在来線運転士の前方確認時の視認性の向上及び疲労軽減による更なる安全性の向上を図るため、2022年12月1日より列車運転時における保護メガネ(サングラス)着用の試行を高山本線において実施していましたが、試行結果が良好であったため在来線の全線区(12線区)にて導入します。
1.対象者
全線区の在来線運転士:約1,300名
2.保護メガネ着用による効果
信号機の現示の認識等色覚に影響をおよぼさない偏光レンズを使用することで以下の効果があります。
・直射日光及び積雪等の反射光による眩しさの軽減を図ることでの前方の視認性向上
・直射日光及び積雪等の反射光をカットすることによる運転時の疲労軽減
(以上引用)
ネット上で調べたところでは、JR東海のほかにサングラス着用を認めた鉄道会社(試行中を含む)としてJR西日本、京急、小田急、西武、つくばエクスプレス、都電荒川線、富士急行、城北線、北条鉄道、福井鉄道、嵯峨野観光鉄道、京都丹後鉄道、智頭急行、一畑電車、井原鉄道、水島臨海鉄道、広島電鉄、アストラムライン(広島高速交通)、くま川鉄道(順不同)がありました。
JR西日本では、今回のJR東海の実施より前、2021年3月末から実施しているほか、他の鉄道会社でも既に実施しているところがあります。
着用するサングラスの一つの特徴として、信号機の確認など色覚に影響しない偏光レンズを使用し、乗客側から見るとサングラスを通して運転士と目線は合わせられるようです。
乗務員室背後の貼り紙
一部の鉄道路線や列車では、乗務員室の背後で貼り紙を見かけることがあります。
業務中のサングラスの着用のほか、水分補給、携帯電話の使用、トンネル前後での日中の運転士背後カーテンを下げる行為等を説明した内容です。
一部の利用者からの本社への投稿や、X(旧ツイッター)で画像が投稿されることへの事前防止策への意味合いもあるでしょうか。
こうした鉄道側の行為を意地悪く見ようとすれば、キリがなくなります。
水分補給は列車乗務前または交替後に行なうものとか、終着駅でホーム上の乗務員室で行なうものといった見方です。
乗務中の携帯電話使用でも、列車無線電話があるだろう、トンネル内でもカーテンを下げない鉄道会社があるだろうといったことです。
サングラスでも乗務員室内で着脱せよ、ホーム上では外してといった声や、そもそもサングラスの威圧感、印象が悪い、怖そうといったような受けとめ方があります。
鉄道以外でも、一例として救急車に乗務する人たちでは、コンビニでの水分補給、手洗い使用、ごくわずかな休憩等でも投稿され、消防関係者側で事情を説明しているケースは見られます。
投稿する側は正義感で行なっているのか、別の意図、考え方なのか、言及は避けますが、一般の事業所、営業店舗や現場で、来客の見えない場所で水分補給可能な職場と異なる列車運転士の乗務環境は理解する必要があると考えます。
以前とは違う近年の猛暑
また、同じ夏の暑さでも、十年前の暑さとは異なる近年の猛暑については加味する必要があると思います。
他の乗務員との交替後や、終着駅に到着後、ホーム上に設置された乗務員室内で水分補給を行なうべきかは路線規模、線路配置と紫外線方向との関係、列車運転時間等によっても、鉄道会社の考え方は変わってきます。
鉄道側は、それらを総合的に勘案した上で、安全確保のためには業務中、やむを得ずこれらの行為をすることがあると判断した場合は、利用者に伝えて理解を得ることも必要と考えます。