バスだけでなく鉄道も乗務員確保困難により列車削減に?
デイリー新潮、2023年9月19日付け「各地で相次ぐ運転士不足… 減便を発表した『福井鉄道』の特殊な事情」を拝見しました。
長崎県の長崎電気軌道、高知県のとさでん交通、福井県の福井鉄道など、地方都市の鉄道事業者が相次いで減便を発表したことに触れた内容です。
以下、一部を引用させていただきます。
(以下引用)
「このほど減便することを発表したのは、運転士が不足していることが理由です。福井鉄道では正常通りのダイヤで運行するには、運転士が28名いなければなりません。ところが、現在は21名で7名も不足しています。昨年度末から運転士が不足している状態で、これまでは運転士の資格を有する別部署の社員に応援を頼んでいました。しかし、それも限界に達し、やむなく減便することを決めたのです」と説明するのは、福井鉄道鉄道事業本部の担当者だ。
福井鉄道と同様に、長崎電気軌道やとさでん交通も運転士不足という問題に直面し、減便という苦渋の決断を下した。
(中略)
「運転士の賃金が低いことは鉄道業界全体で問題視されており、弊社は運転士確保の観点から賃金を含め処遇改善に取り組んでいます。それでも、すぐに運転士を確保できるわけではありません。運転士不足から減便することを決めましたが、通常のダイヤに戻す予定は現時点ではメドが立っていません」(同)
(以上引用)
本文の最後に「早晩、運転士不足は全国へと波及することは間違いない」「鉄道業界は、この難局を乗り越えることができるのか?」と書かれていますが、全般的に著者ご指摘のとおりと思います。
ここに何も付け加えることもありませんが今回は、この示唆に富んだ記事を読みながら今後、全国の鉄道路線はどうなっていくのだろうかを思い浮かべてみました。
ワンマン化後の次の施策は
人手不足の対応としてはまずワンマン運転で、各地のローカル線等で実施してきているところです。
首都圏では東京メトロ副都心線や東急など、10両の長編成通勤電車でもワンマン運転を行なっています。
JR東日本の首都圏では、ホームドア設置と合わせ山手線、京浜東北線、常磐緩行線などで準備を進めています。
次々に走る長編成列車がすべてワンマン化することは、全国の他の路線への影響も大きいものがあると考えられます。
青梅線では2023年3月から立川-青梅と青梅-奥多摩とで分け、直通運転を廃止し、奥多摩側をワンマン化しました。
JR東日本や東京メトロ、東急等の事例はいずれも、列車乗務員は削減しながらも列車本数自体は現状を維持する前提のものです。
冒頭の記事では、今後の運転士確保自体の深刻さから、それが列車本数削減につながる危機感を指摘されています。
列車の利用状況とは別に、運転士確保ができない以上、運転本数を削減するしかないのでしょうか。
列車運用、乗務員運用の見直し、終着駅での折り返し時間、途中駅停車時間を短くして一日全体の本数自体は同じとすることまでが限度でしょうか。
早朝、深夜を中心とする、始発列車の繰り下げ、最終列車の繰り上げも乗務員効率化の一つの要素です。
ただし一日の運転本数全体では本数削減になり、一部の利用者が影響を受けます。
ラッシュ時等、利用の多い時間帯を中心とする本数削減は、列車内混雑に拍車をかける反面、乗務員を最も多く必要とする時間帯です。
究極は無人運転できれば解決しますがゆりかもめ、日暮里舎人ライナーのような、駅、車両、本数、利用者の集中度等の条件の整ったケースに限られ、無人運転の拡大は通常鉄道路線では困難と思われます。
どうしても乗務員確保ができず列車本数を削減するならば、車両増結はできないかということになってきます。
簡単に言えばローカル区間で言えば1両の列車を2両化することです。
輸送規模の大きいJR東日本首都圏で言えば、中距離列車の基本編成10両編成を、付属編成を含めた15両化です。
一部の駅でのホーム有効長が短いために列車編成全体の増結ができないとすれば、短いホームの駅でははみ出した車両分のドアカットを行ない、増結する方法です。
ある大手私鉄路線の例でいえば、6両編成の5両化が近々行なわれようとしています。
利用者減によるものですが将来的に最悪、乗務員確保ができなくなったならば、机上計算上ですが、急行列車設定の見直しで毎時2人分の削減はできます。
また、普通列車5両10分間隔を6両編成継続によって12分間隔化し、急行廃止と合わせて毎時片道延べ3人分の乗務員減をすることはできます。
ただし10分間隔が12分間隔、15分間隔になることによる不便さ、利用減との影響に兼ね合いがあります。
しかし乗務員が確保できない、ワンマン化以上のことはできないならば、そうしたことも考慮しなければならなくなってきます。
運転士(乗務員)確保困難による列車本数削減にあたっては、鉄道側の現状と自助努力状況、自助努力での限度、本数減選択による何らかのフォロー等の情報開示が求められていくと思われます。
(※記載にあたり、デイリー新潮、2023年9月19日付け「各地で相次ぐ運転士不足… 減便を発表した『福井鉄道』の特殊な事情」を参考にさせていただきました。)