平行普通列車

常磐線と新京成に魅せられた者のブログです

神奈川県の東海道新幹線新駅誘致ポスターで思うこと

リニア中央新幹線の開業が遅れる状況下での新駅誘致啓発について考えます

神奈川県で4月下旬、東海道新幹線新駅を神奈川県内へ誘致するため、リニューアルしたポスターを作製したとのことです。

東海道新幹線新横浜-小田原間の、JR相模線倉見駅交差地点付近に新駅の誘致を目指す内容です。

この新駅により、リニア中央新幹線(以下、「リニア」)の橋本駅東海道新幹線倉見新駅とはJR相模線で連絡できるようになります。

新幹線新駅誘致を周知するため、神奈川県中央部の駅や公共機関等にポスターを掲出します。

ポスターには「新幹線でどこへ行く?地元に新駅できたなら。」「県央・湘南地域の寒川町倉見地区へ新幹線の新駅を誘致しています。」の文面と、イラストで東海道新幹線先頭部分及び「新横浜→みんなの未来→小田原」の駅名標が添えられています。

 

新駅周辺地域でさえ新駅誘致があまり知られていない、あるいは関心が盛り上がらないのはなぜか、いろいろ理由を浮かべてみました。

東海道新幹線と無縁または無関心のケース、新幹線は小田急東海道線で小田原から「ひかり」に乗るという新駅との無縁感、同じく横浜線や相鉄で新横浜から「のぞみ」に乗るという無縁感、新駅停車は「こだま」毎時2往復の不便感、相模線は全線単線で日中3往復しかなく最大25分待つ時間帯もあるという不便感、相模線運営のJR東日本JR東海運営の東海道新幹線とリニアのアクセス向上にどこまで協力するかという懸念、リニアの完成はずっと先という疎遠感、どうせ倉見地区の新駅はできないだろうというあきらめの境地等々でしょうか。

 

一方、リニア建設で着工を容認していない静岡県との協議が全くといってよいほど前に進んでいません。

品川-名古屋は当初、2027年度開業予定のところ延期が確実となり、2029年度以降とも予測されています。

同時に新大阪までの2037年度開業も難しいことがJR東海から表明されました。

 

静岡県はリニア建設で様々な課題、難題をJR東海に求めて着工を延ばす反面、静岡空港付近への新幹線新駅(仮称。以下「静岡空港駅」)設置を要望しているほか、静岡等への「ひかり」の運転本数と停車増加も求めています。

JR東海ではリニア開業後、「のぞみ」の本数減、「ひかり」「こだま」本数増の余地がある旨は表明しています。

静岡空港駅は掛川駅まで約18kmしかない距離から、新たな「こだま」停車により現在のダイヤが保てなくなるとの考えを説明しています。

しかし「のぞみ」の本数減を言いながらダイヤが保てないというのは奇妙な印象を受けます。

「のぞみ」本数減の分と、「ひかり」「こだま」本数増の分とは、数が一致しているのでしょうか。

現在の「のぞみ」毎時最大12往復、「ひかり」「こだま」各2往復の計16往復自体は今後とも変わらないのでしょうか。

 

静岡空港掛川の駅間距離が短いことについては、熱海-三島が16.1kmで静岡空港掛川よりもさらに短いことや、小田原-熱海でも20.7kmであることを考えると説得力に不足します。

熱海-三島が短いのは地形上、熱海では通過線設置ができないため、熱海に代わって三島が通過線の役割を担う含みがあります。

 

そもそも駅間距離の話の前に、JR東海にとっての静岡空港駅はライバルの飛行機相手に塩を送るようなものの意味合いがあります。

静岡空港駅によって新幹線の利用者が増える分よりも減る方が多い結果を招くと見ていると考えられます。

しかしそれを表面に出すとリニア建設にさらに影響しかねないこともあって、掛川との駅間距離が短いこと、他の列車への影響で理由を通しているとみられます。

また、静岡空港駅はトンネル内となるため、本線は通過線専用になり、空港駅ホーム用の単独トンネルを上下線で前後に長く掘削する必要があると思われます。

また、JR北海道の札幌-新千歳空港JR東日本の東京-羽田空港アクセス線のような、空港駅や空港線新設による飛行機客への利便性向上に対する割り切りとは事情が異なります。

 

さて、倉見地区新駅の話に戻りますが、一部の記事の中で「新駅設置について、中央新幹線が開業し、東海道新幹線のダイヤ構成に余裕が生まれれば、新駅設置の余地が高まる」とJR東海が回答していることを受け、「中央新幹線の工事が進んでいることから、新駅設置の可能性は高まっている」との見解であることに触れています。

しかしこれはリニア工事が順調に進んだ前提の話であり、JR東海にとってはリニア建設工事が遅れていることから、リニアの新大阪開業までは倉見地区新駅の話を聞く余裕はないと思われます。

少なくともリニアの名古屋暫定開業時においては、まだ新駅の話は聞けないと考えられます。

リニアの新大阪開業を果たしても、静岡空港駅の話も絡むことから、「あちら立てればこちらが」の状況になって、JR東海の両方の新駅対応は相当慎重にならざるを得ないと考えられます。

いずれにしてもJR東海はまずリニアの名古屋開業が第一であり、その後は新大阪開業に全力を傾注することになります。

名古屋-新大阪建設の際、予期しなかった展開がないとも限りません。

 

その意味で今回の神奈川県での新駅誘致ポスターは、新駅誘致の意思は理解できるものの、リニア工事の先の見通しがある程度見えてからにした方がよかったのではないかと感じました。