「のぞみ」が毎時1往復停車すれば逆に「のぞみ」の増停車議論に発展する苦渋
東洋経済オンライン、2023年11月4日付け、「静岡『新幹線停車数』リニア開業前でも増やせる?現行ダイヤで試算、『のぞみ』の停車も可能か」を拝見しました。
毎時最大12往復運転の「のぞみ」でも列車によって異なる運転余裕速度、「こだま」を追い抜く駅の状況等を分析し、現ダイヤのままでも毎時1往復は静岡停車が可能であることを指摘した、とても参考になる内容です。
今回は、当記事の一部を引用させていただきながら、今すぐにでも可能な「のぞみ」静岡停車を行なわない背景を考えてみました。
以下、太字は引用させていただいた部分、→は自分の意見、感想です。
なお、引用させていただいた箇所については本文と順番が異なる場合がありますので予めご了承ください。
余裕のある「のぞみ」がある
それは東京駅毎時42分発と、新大阪駅毎時33分発の「のぞみ」だ。これらはいずれも新横浜―名古屋間1時間22分運転で、小田原駅または豊橋駅停車の「ひかり」と1分しか所要時間の差がない。また、静岡駅通過時に「こだま」や「ひかり」とダイヤが重なっていないため、ホームのある線路が空いている。しかもこの列車は、静岡駅停車の「ひかり」との間隔も30分前後でタイミングもよい。まるで何かあればいつでも静岡駅に停められるように作ったかのようなダイヤだ。
→ 鋭い指摘です。
「いつでも静岡駅に停められるように作ったかのようなダイヤ」かどうかは、推察の域は出ないものの、JR東海にも静岡停車の可能性、含みは持たせたのだろうかとのうがった見方は出てきます。
同県の川勝平太知事は「単なる頭の体操」「国にダイヤの決定権がなく実現できるかどうかわからない」「そうしたことを10カ月かけてやったことは、お粗末でありあきれている」などとコメント。相変わらず溝が埋まらない。
~中略~
(交通評論家のコメントで)「鉄道事業法施行規則第32条により、新幹線の料金は在来線と違って事前に認可が必要。となると、『のぞみ』を静岡に停めると料金の認可申請をしなければならないと言うこともありうる。だが臨時で停めるのは簡単だ。なぜしないのか。JR東海が地元にいい顔ができるチャンスなのに」
→ まさに論点は静岡県知事の考え方がポイントです。
仮に、「のぞみ」の毎時1往復停車を実現させたとして、それで合点がいくでしょうか。
これまでの動向から、そのような楽観的な流れにはならないと考えます。
究極は、「のぞみ」の本数削減は現状12往復の継続、「のぞみ」全列車の静岡停車と思われます。
リニア開通に伴って「のぞみ」の本数削減なら、その現象本数分、列車ダイヤに余裕があるのだから「のぞみ」を静岡に停車せよ、静岡停車でも東京-名古屋の所要時間が同じであることは今回の東京毎時42分発「のぞみ」が証明しているではないか、まず東京42分発と新大阪33分発「のぞみ」を臨時列車でなく定期列車化せよ、その次に、他の「のぞみ」が静岡停車により東京-名古屋を初め、東海道区間、山陽区間で所要時間が2~3分延びようが、たかが2~3分ではないか、だから「のぞみ」を全部静岡に停車させよ、と。
1往復の「のぞみ」静岡停車が、たとえ1往復であっても「のぞみ」停車が叶えば満足ということになるとは思われれません。
最低限、「のぞみ」の半数、毎時6往復の「のぞみ」停車を求めると考えられ、さらには6往復でも満足せず全「のぞみ」停車でなければ駄目という結果になると思われます。
それは「のぞみ」静岡停車と趣旨は異なるものの、品川、新横浜、新神戸の全「のぞみ」の停車追加措置、山陽区間での西明石、姫路、福山、徳山、新山口停車という、「のぞみ」の追加停車駅の増加も横目で見ていると思われます。
本文でも指摘されていますが、静岡停車の「ひかり661号」と3分前を走る「のぞみ459号」との時間差は新横浜-名古屋で1分差であり、この所要時間なら静岡停車による所要時間延の話はほとんど議論にならなくなってきます。
東京毎時33分発の小田原または豊橋停車の「ひかり」と、その3分前の「のぞみ」も所要1分差であり、これを当てはめれば静岡に「こだま」が通過待ち停車さえしていなければ、新横浜-名古屋で静岡駅増停車でも1分増との考えが波及してきます。
仮に全列車「のぞみ」静岡停車でも前進しない、もう一つの静岡空港駅新設課題
「のぞみ」が全列車、今の本数のままリニアを認めてやるよという目論見かどうかは分かりませんが、百歩譲ってその通りになったとしても、まだもう一つ、新幹線静岡空港駅新設の課題が残ります。
同駅を新設しない限りは、隣駅との距離やダイヤ上のことを訴えても寝耳に水、火に油のように感じられます。
並行線のままであればリニア開通が遅れるだけのことと割り切っているように感じます。
仮装の話を続けても仕方ないことではありますが、これも百歩譲って静岡空港新駅が完成したならば、晴れてゴーサインかと言えば楽観的過ぎます。
毎時2往復の「こだま」停車だけでは意味がない、「ひかり」だけでも停めよということになってくると思われます。
さらには、静岡県には静岡以外にも熱海、三島、新富士、掛川、浜松がある、それらの駅にも一部の「のぞみ」停車を分散させよとエスカレートするようにも感じられます。
参考までに統計情報リサーチによる、JR東海における在来線を含んだ静岡県内の新幹線駅の2022年度駅別乗降客数は下記の状況となっています。
・ 静岡:85,178人
・ 浜松:49,939人
・ 三島:41,703人
・ 掛川:15,730人
・ 熱海:5,718人
・ 新富士:5,048人
・ 名古屋:286,117人
・ 東京:90,681人
・ 新大阪:77,967人
・ 品川:39,369人
・ 京都:38,635人
・ 新横浜:38,614人
このような数値を列記したからと言って、だから何だということになりますが、JR東海駅として特定すれば静岡は新大阪よりも上であり、浜松と三島は品川・新横浜・京都よりも上ということになります。
実際には、他のJR社とはいえ、在来線を含めた駅の乗降数を含めてこそ全体像は見えてくるのですが、ここでは省略します。
しかし、静岡の乗降客数に対して約6割の浜松、同5割の三島は、「のぞみ」の一部停車の声は出てくると考えられます。
停車しても所要時間が今と同じであれば静岡に関係ない利用者にも問題ないし、一部でも「のぞみ」が静岡駅に停まれば状況の変化が生まれるかもしれない。臨時列車としてでも、本稿で示したようなダイヤでの静岡駅停車はできるのではないだろうか。
→ 最終段での結びです。
その通りなのですが、課題は「のぞみ」毎時1往復の静岡停車ができても、それで話は前に進むか、逆に増停車議論に発展しないかという懸念です。
総合的に考えれば、一度停車すれば元には戻せないこと、もっと停車できる「のぞみ」があるのではないか、なければダイヤを工夫すればよいではないかと飛躍していき、JR東海は慎重にならざるを得ないと思われます。
「のぞみ」と「ひかり」の違いとは
以上から見てくると、「のぞみ」と「ひかり」の差は、運転する全区間の中で後続列車に抜かれないのが「のぞみ」、抜かれるのが「ひかり」ということになってきます。
山陽区間では、姫路に停車する「みずほ」に対し、通過する「さくら」もあって、新神戸―岡山の区間では所要時間の逆転現象さえ起きています。
その意味では後続列車通過待ちのない「ひかり」は「のぞみ」になっていくと思われます。
(※ 記載にあたり、2023年11月4日付け、東洋経済オンライン「静岡『新幹線停車数』リニア開業前でも増やせる?現行ダイヤで試算、『のぞみ』の停車も可能か」、及び統計情報リサーチを参考にさせていただきました。)