車両は汎用型・中庸型に徹するJR東海に今後、変化はあるか?
4月22日付け「現代ビジネス」でJR東海、葛西敬之元会長の「日本のリーダ―達へ 私の履歴書」の一部分が紹介されている記事を見ました。
同著を部分的に読んだことはありますが、全部は読んでいませんでした。
食堂車廃止には反対の声が多かったこと、新幹線に求められるのは旅情ではなく安全・正確・安定・高速・高頻度・大量輸送という部分は、葛西氏のイメージと合致する刺激的、象徴的な言葉として、現役時代を思い起こさせます。
JR東海の車両に対する汎用型姿勢に触れていますが豪華列車、観光列車を持たない、必要ないとする徹底した汎用型(中庸型)車両姿勢はJR6社でも唯一です。
東海道新幹線はN700系のみ、座席配置は300系以降、最新のN700系S編成に至るまで全編成1,323席統一で徹底しています。
バリアフリー法改正を受け、2021年度からの新製車は11号車で4座席を減らし1,319席にしましたが、今のところ2020年度新製までの1,323席の4席減はしていません。
在来線は特急からローカル列車まで車体色は同じで、車両形式も最小限です。
路線別の車体色変更や一部編成の座席変更も最小限です。
京都のPRで、主役は東海道新幹線列車でなく京都というのもJR東海の姿勢を的確に表現した指摘です。
JR東海の車両の将来像を思い浮かべると今後も変わらず、変化しても最小限と思われますが、あえて路線別に10年後の列車の姿を勝手に想定してみました。
〇 東海道線熱海側:JR東海編成がJR東日本に乗り入れる事例がないことから、JR東日本編成の沼津乗り入れを熱海で打ち切る。
通勤時の熱海-沼津は315系8両編成に置き換える。
同様に修善寺「踊り子」を打ち切り、東京-修善寺は東海道新幹線三島乗り継ぎに方向性を変更する。
ただし修善寺側を考慮し、熱海-修善寺の区間快速を下田「踊り子」接続で設定。
〇 東海道線米原側:大阪「ひだ」は存続。「しらさぎ」は名古屋-敦賀で存続。
〇 「サンライズ出雲・瀬戸」:JR東海で285系2編成を所有するが、検査等はJR西日本に委託する特殊な事例となっている。
JR東海は自社駅起終点でない列車に存続の意義を見出さないと考えられる。
JR西日本の伯備線273系投入と、285系の製造後30年以上経過を考慮し、列車自体を廃止し、後継編成は造らないと思われる。
〇 身延線、飯田線:「ふじかわ」はHC85系の電車版で373系を置き換える。
「飯田線秘境駅号」は種別が急行で臨時列車のため、373系で継続。
〇 中央線:「しなの」は制御付き自然振り子式383系から、振り子方式を採用せずHC85系の電車版で置き換える。
東海道新幹線N700系同様の車体傾斜制御を採用する可能性もあるが、HC85系が非振り子式で高山線、紀勢線に投入した割り切りから、振り子式の可能性は薄いと思われる。
〇 紀勢線:「南紀」は新宮折り返しで、新宮-紀伊勝浦を廃止。
〇 御殿場線、関西線、参宮線、武豊線、太多線等の普通列車は現状継続。
いささか淋しい内容ではありますが、主情に流されないJR東海の一貫合理的姿勢からは、在来線では以上のように想定します。
〇 東海道新幹線:1編成1,323席の執着がやや変わってきたのが興味深いところです。
1編成4席減でも1,323席の牙城は崩したくない、死守したい気概がやや薄れたように感じます。
7号車6番から10番のB席、計5席分にパーティションを立てて非売とした、S Work車両の導入が奇妙にも映るからです。
1,323席→1,319席→1,314席の減は、以前のJR東海では考えられない対応です。
葛西氏だったら5席でさえも非売にすることは認めなかった気がします。
左右のA・C席から10席分で12,000円の収入と通常運賃・料金との収入差、他にも列車内でのパソコン使用者が沢山いるのに、B席だけ5枚のパーティションを置くことに何の意義があるのかと。
過去の話で以前にも書きましたが、JR西日本「グランドひかり」時代の東海道区間でのビデオサービス禁止の一方で、当時の御殿場線371系「あさぎり」でのビデオサービスの矛盾は、東海道新幹線のビジネスと御殿場線の観光との主体相違とはいえ、乗客に対する正しい配慮、判断とは思えません。
JR東海には今後、N700系S編成の1号車と16号車の座席1列減による座席間隔の通常化、1号車トイレ2カ所化を期待したいところです。
その座席間隔配慮がないうちは、JR東海はまだまだ輸送力、座席定員確保固執思想から脱却できていないと思います。