米坂線の現況を整理します
4月27日付け、拙「米坂線被災復旧でJRが独力で復旧していくのが一番ベストと語る側の真意とは?」の続編です。
内容が一部重複しますがご了承ください。
また直近の情報で整理しましたが、あくまで筆者個人の受け止めによるものであることを併せてご了承ください。
2023年5月18日時点での現況を整理すると、以下のような状況かと思います。
〇 米坂線の存続について
山形県は、沿線地域にとって通学、通勤などの地域の生活を支える不可欠な交通機関との見識。
新潟県は、鉄路としての維持が大原則との見識。
〇 復旧費用について
JR東日本は、山形・新潟の両県に協力をお願いしたいこと。
山形県は、災害からの復旧であり、JRと国が取り組んでほしい見識。
新潟県は、復旧を第一義に考えるべきであること、JR東日本の独力復旧がベストであること、国の補助制度も使うことによって地元負担もあるとの見識。
〇 今後の対応について
新潟県は、災害復旧とローカル線問題、ローカル線の将来の在り方を分けて考えるべきであること。また、将来の存廃を議論する前に、今ある鉄道をどう生かしていくか、活性化の議論をするスタンスであること。
山形県は、復旧費の地元負担及び路線の存廃について言及を避けた(2023年4月27日時点)。
〇 米沢-今泉について
山形鉄道が、JR東日本の受託を受けて運行を目指すことを表明。
以上ですが、費用負担については地域負担の協力を求めるJR東日本と、国とJR東日本でという山形・新潟両県がまだ平行線状態で次の段階には進んでいません。
今回、気になることとして、「復旧を第一義に考えるべき」「災害復旧とローカル線問題、ローカル線の将来の在り方を分けて考えるべき」「将来の存廃を議論する前に、今ある鉄道をどう生かしていくか、活性化の議論をする」という点があります。
一部の新聞社説でも「災害復旧の視点で見るべき」と論じています。
災害復旧の議論を先にすると、路線の将来のあり方が後回しになるということは理解できるものの、約86億円に復旧費と、災害発生以前での輸送密度を脇に置くことはできないと考えます。
災害時点ではJR東日本の路線だから、鉄道側と国が復旧に取り組むべきとの一点では接点が見い出せないままになります。
米坂線の2021年度輸送密度で、小国-坂町124人、今泉-小国226人の状況を踏まえる必要があります。
輸送密度の数値を出すと米坂線に限らず、他の路線や地域においても列車本数、列車設定時間帯、列車自体の魅力など、鉄道側の増客策や経費節減の努力不足を追及する声が出てきます。
JR東日本全体の大きな路線網と収入の中でのやりくりの話になります。
一方では、米坂線の活性化、どう生かしていくかについて、被災時点の前までJR東日本、沿線地域ともに目立った動きや盛り上げはなかったように思います。
鉄道側への訴求だけ行ない続けるのはどうかと思います。
復旧は鉄道側で行なう前提の後、復旧後も同社で経営継続か、開通後は上下分離式で地元が加わるのか、第三セクター化なのか、不鮮明です。
復旧させるなら上下分離か、第三セクターの方向性はどうなっているでしょうか。
復旧後の経営も引き続きJR東日本でしょうか。
まず復旧が先であり、経営はそのあとで考えればよいというものではないと思います。
地域側は鉄道ありき、米坂線ありきのようですが、鉄道側は将来にわたって持続可能な、沿線地域の総合的な交通体系の構築の視点での考え方であり、長距離大量輸送の鉄道効力が活かされるかの視点があります。
米坂線は不可欠で、列車本数が増えれば、魅力ある列車が走れば利用も比例するでしょうか。
並行道路の影響、並行するバスの利用状況はどうでしょうか。
地域側の盛り上げ、具体的な利用促進策はあるでしょうか。
1984年まで走っていた米坂線経由、仙台-新潟の急行「あさひ」、後の「べにばな」は仙台-山形が快速「仙山」として分割され、山形-新潟の設定となり、1991年の山形新幹線開業後は米沢発着の快速になりました。
山形-新潟の需要は定かではありませんが、同区間を鉄道利用で見た場合、赤湯から山形鉄道で今泉に行く方が速達できます。
米沢経由は赤湯-米沢往復のようなイメージがあります。
もしも米坂線が復帰するとしたならば、山形新幹線「つばさ」から赤湯始発山形鉄道経由、新潟行きの速達列車、観光列車が望まれるところです。
坂町、新潟側から見た場合、山形と米沢の速達、利便性の両立は困難であり、山形を目指した赤湯速達を優先し、米沢へは今泉乗り換えで割り切るのはやむを得ないと考えます。
※写真は本文と無関係です。