車輪・レールのさび・汚れによる、レール運搬用臨時列車通過時の運行システムの未検知と、旅客用赤信号の見落としの重複が要因?
5月23日6時25分頃、JR東日本の東海道線国府津発高崎行き上り15両編成の普通電車が、藤沢から大船に向かう際、本来通るはずの旅客線から貨物線に転線し、貨物線に移ったまま横須賀線武蔵小杉まで走行したニュースがありました。
この件については複数の新聞記事やテレビ報道等で様々な情報が錯綜していますが、JR東日本からの原因と対策の公表はまだ行なわれていないようです。
今回は、6月1日現在までの情報で経過を整理してみたいと思います。
◆状況経過
藤沢-大船間の大船駅手前に、旅客線から貨物線への渡り線があります。
通常は旅客線用の信号表示に従いながら、旅客線を通過して大船駅に入線します。
大船駅の手前約0.9kmに旅客線と貨物線に分岐する配線で、トラブルの約3分前にレール運搬用の臨時列車がここの分岐器を通って貨物線に進入しました。
当日列車の旅客線、貨物線へ進入する分岐器手前の信号は、旅客線は赤信号、貨物線は黄信号でした。
線路の信号は分岐器と連動しており、普通電車の運転士は旅客線の赤信号を見落とし、貨物線は黄信号だったため電車は貨物線に転線していきました。
運転士は数十メートル先で貨物線誤進入に気付き、緊急停止し、指令所に連絡しましたが、通勤時間帯で列車本数が多く、後続列車の接近もあったため、現場に約20分停止後、指令所は貨物線を進む指示をしました。
指令に従って電車は貨物線を経由し、横須賀線武蔵小杉に停車しました。
大船、戸塚、横浜、川崎の各駅下車予定の乗客は、武蔵小杉から横須賀線横浜方面電車に乗り換えました。
電車内の乗客は約2,000人、そのうち約600人が横浜等で下車予定でした。
このトラブルで約15,000人影響を受けました。
東海道線は上下線で運転を一時見合わせ、7時頃に運転を再開しました。
◆貨物線誤進入の原因
貨物線への誤進入は、列車の運行システムがこの電車の直前に走行していたレール運搬用の臨時列車の通過を検知できず、分岐器が旅客線に切り替わらなかったためです。
臨時列車通過後、分岐部分にある検知器が反応せず、自動で旅客線方向に切り替わるはずの分岐器が貨物線方向のままの状態になりました。
検知器未反応の原因は、レール運搬用臨時列車の車輪やレールのさびや汚れにより検知を妨げたとみられます。
線路の信号は分岐器と連動しており、分岐器は貨物線側への向きのままだったため、旅客線は赤信号、貨物線は黄信号の表示となりました。
検知器未反応による貨物線側への黄信号、旅客線は赤信号表示の状態の中、電車運転士は旅客線用の赤信号を見落とし、誤って黄信号の貨物線に進入しました。
◆トラブル原因の様々な報道
トラブルの原因について、マスコミ各社等の記事を順不同で要約してみます。
〇 当該電車直前を走っていた、レール運搬用臨時列車の通過を検知できず、分岐器が切り替わらなかったこと
〇 大船駅ホーム手前で貨物線に進む信号が出たこと
〇 信号表示の間違いのこと
〇 分岐点手前の信号機で、貨物線に向かう黄信号が点灯していたが、運転士が本来向かうはずだった旅客線方向の信号と見誤ったこと
原因を整理すると、一番の原因は、レール運搬用臨時列車が通過後、分岐部分にある検知器が反応しなかったことにあります。
その背景として、レール運搬列車側の車輪、レールのさび、汚れにより検知を妨げた点があります。
そして、電車運転士が旅客用の赤信号を見落としたことです。
◆今後の再発防止策は
まずはレール運搬用臨時列車の車輪、レールのさび、汚れの対策であり、レール運搬用列車の通過を検知できるようにする必要があります。
次に、電車運転士の旅客用信号の確認の徹底です。
旅客側の赤信号を見落とさないこと、貨物線側が黄信号であっても、旅客側の信号を確認してそれが赤信号なら停止することです。
レール運搬用臨時列車は今日も各所で動いているはずです。
JR東日本では「信号確認などの基本動作を改めて指導徹底し、再発防止に努める」とのことですが、原因の究明と具体的な再発防止策の公表が待たれるところです。
要望としては、電車の乗務員室には様々な保安装備がされていますが、それに加えて旅客線を正しく通過していることの検知、本来通過しない貨物線に転線しようとした場合の、旅客用の赤信号表示を受けて、貨物線に入る直前で緊急停止させられるような装置の開発、設置が望まれます。
※写真は本文と無関係です。