飛行機の着陸時間超えに対する代替着陸(ダイバート)と新幹線の状況を比較します
新幹線の運行時間は6時から24時までです。
深夜0時から6時までは運転しておらず、24時が新幹線の門限とも言えます。
新幹線沿線での騒音問題と、新幹線線路の保守点検に充てるためのものです。
飛行機はどうでしょうか。
24時間運用可能な空港は新千歳、仙台、羽田、中部、関西、北九州、那覇の7空港です。
大阪国際空港(以下、「伊丹空港」)の運用時間は7時から21時まで、成田と福岡は24時間空港ですが、定期便は成田が6時から24時まで、福岡が7時から22時までです。
24時間空港を除いて、空港には門限があり、飛行機が着陸時間を超えそうなときは当初の着陸空港以外の別の空港に着陸することがあります。
この代替着陸をダイバートと言っています。
伊丹空港の着陸が21時を超えそうなときは関西空港へ、同様に福岡空港着陸が22時を越えそうなら北九州空港へ、それぞれ変更します。
◆代替着陸(ダイバート)ができなかった教訓事例
2023年2月19日、日本航空331便は羽田18時35分発福岡20時30分着の予定でした。
羽田離陸時は22時までに到着できる見込みでしたが、強風等もあり、福岡空港付近の上空では10機近くが着陸待ちで空中旋回中の状況で、331便が22時までに着陸を割り込むのは無理になったと見られます。
事前に着陸の遅れを申請していなかったため、22時を超えると着陸できなくなります。
燃料給油等で約3時間待機し、午前2時50分頃に羽田空港へ戻りました。
福岡空港に近い北九州空港が24時間空港となったのは、需要の多い福岡空港が22時の門限で24時間運用は無理のためのフォローと考えられます。
2023年2月19日の331便が福岡空港着陸をあきらめた後、北九州空港に着陸しなかったのは北九州空港側の受け入れ態勢が整っていなかったからとも言われますが、飛行前の北九州空港事前着陸申請があれば別として、福岡空港着陸直前になっての柔軟な受け入れ対応まで、はたしてできたでしょうか。
福岡空港の着陸が無理なら北九州空港があるというフォローができなかったことは、航空界全体にとっても損失でした。
◆代替着陸(ダイバート)で教訓を生かした事例
その後、2023年6月11日、日本航空羽田18時45分発福岡行き331便が、エンジントラブルで福岡に着陸可能な22時までに間に合わなくなりました。
機種を変更し、行き先も北九州空港に変更して21時41分に羽田を離陸、北九州空港へ23時18分に到着しました。
福岡空港の門限が要因となった初の事例でした。
偶然にも2月19日と同じ便でした。
6月15日には、日本航空羽田発福岡行き最終335便がエンジントラブルにより、福岡着陸門限時間に間に合う時間の離陸ができないため欠航しました。
臨時便により23時21分離陸、深夜1時7分に北九州空港にダイバートしました。
北九州空港からは日本航空手配のバス、タクシーで福岡へ向かい、一部の人は北九州空港で宿泊しました。
◆離陸後の、着陸空港満杯による柔軟なダイバート対応が出来るか?
福岡空港22時門限について、北九州空港ダイバートで良しとするかどうかは、飛行機に対する見方、寛容さによっても受け止め方が変わります。
繰り返しになりますが、離陸前に22時以降の着陸が明らかなら事前の北九州空港着陸の手順は整えられるものの、2月19日のような、福岡空港上空に来てみたら他の多くの航空機の待機により着陸をあきらめる際、羽田へ戻らず、柔軟に北九州空港に着陸できるかどうかです。
飛行機の場合、事前の手順、準備が必要であり、急に福岡上空から北九州への変更、着陸対応は難しいものがありそうです。
◆伊丹空港の場合
伊丹空港は定時運航率の高さで世界的にも上位の空港と言われます。
伊丹空港離着陸ができなかったら関西空港があるということは、安心感につながります。
あとは伊丹空港に着陸できなかった時に、他の空港や出発空港に引き返さず、実際に関西空港にダイバート着陸するかどうかですが、伊丹空港でそのケースはないようであり、福岡空港と状況は異なります。
◆東京-博多の東海道・山陽新幹線だったら
さて、これが東海道・山陽新幹線だったらどうでしょうか。
羽田-伊丹を、新幹線の東京-新大阪で比較してみます。
新大阪到着に支障をきたしたら東海道側は京都、山陽側は新神戸または西明石で運転を打ち切り、在来線に案内すると思われます。
京都と新神戸でなければ、米原・姫路か、名古屋・岡山で打ち切り、以降は大阪まで在来線誘導となります。
在来線移動は新幹線よりも倍の移動時間を要するものの、飛行機のダイバートによる代替え空港からの移動よりは時間が速いと思われます。
ただし東海道・山陽新幹線全線の遅れや運転見送り状態のときは別です。
次に、羽田-福岡の飛行機を、東京-博多の新幹線で想定比較してみます。
博多到着に支障をきたしたら小倉、新山口等で運転を打ち切り、以降は在来線移動です。
北九州空港に代替え着陸し、同空港からから福岡へ移動するのとどちらが早いか、手間は不安はないかということになります。
少なくとも新幹線では、途中駅での運転打ち切りはあっても、京都や小倉まで動いた同じ列車で東京へ引き返すことだけはありません。
一般論ですが、飛行機は福岡空港から北九州空港への変更ならまだしも、場合によっては東京、大阪の空港から中部空港への変更もあり得ます。
余談ですが、新幹線では到着予定時間の2時間以上の遅れによっては特急料金の払い戻しがありますが、飛行機は目的の空港に運べば、関連手配はあったとしても到着時間の遅れに対する払い戻しはありません。
新幹線では1時間55分遅れなら特急料金払い戻しにならないことに対しての不満も聞かれますが、飛行機で所要1時間が3時間、4時間になろうと払い戻しはないのに、さほどの不満が聞かれないように感じますが、なぜでしょうか。
新幹線を含めて鉄道は日常の身近な乗り物、飛行機は非日常の特別な乗り物だからというように思いました。
ダイバートなどめったにないことであり、そんなことを考えていたら飛行機に乗れないということになりそうです。
しかしながら、めったに発生しないダイバートであっても、万一の着陸空港変更時のことも含めて総合的に考えると、東京-博多5時間弱の東海道・山陽新幹線も飛行機以外の選択肢の一つと言うことはできます。
万一のことがあっては困りますが、ダイバートのない安心感では新幹線という点は強みと思われます。