中村・宿毛線とごめん・なはり線を挟む窪川-後免もフリー化が効果的
土佐くろしお鉄道(以下、「土佐くろ鉄道」)は、中村・宿毛線窪川-宿毛と、ごめん・なはり線後免-奈半利の2路線を持つ第三セクター鉄道です。
鉄道コム、6月15日の鉄道公式リリースに、同鉄道から「Youthの皆様へ!土佐くろ全線全列車に1日乗り放題のusefulなフリーきっぷ『土佐くろ1dayユースパス』」が掲載されていたので、内容を見てみました。
土佐くろ鉄道全線の特急を含む全列車に1日間有効の「土佐くろ1dayユースパス」(以下、「ユースパス」)1,000円と、3日間有効の「土佐くろまるごときっぷ」(以下、「まるごときっぷ」)2,000円の案内でした。
3つの周遊お勧め旅程表として、東部発→西部編、西部発→東部編として、計6種のコース例も添えられています。
◆ユースパスについて
ユースパスは13歳から29歳限定、利用日は土・日・祝日で、安芸、中村、宿毛の各駅での前日までの購入が条件となっています。
安芸、中村、宿毛の3駅でしか購入できないのは不便で、列車乗務員からの前日購入、後免と窪川の両駅での取り扱い追加が望まれます。
◆まるごときっぷについて
年齢制限はありませんが、2路線に接続するJR四国の切符(土讃線窪川-後免間)を同時購入するか、事前にJR四国の周遊きっぷ、フリーきっぷ等の提示が条件となっています。
安芸、中村、宿毛の各駅のほか、乗車当日に列車乗務中の車掌から購入することもできます。
窪川-後免の切符同時購入を要件とするなら、最初からフリー区間として土讃線運賃・料金を加味した価格で設定した方がよいのではないでしょうか。
同区間の普通列車は少なく、移動時間も要するため特急利用が大半です。
通常運賃は1,830円、自由席特急料金1,200円、片道計3,030円です。
まるごときっぷのPRを見ると、「東西に長い高知県、駅のある東部の奈半利町から西部の宿毛市まで車で移動しても約3時間半、その先の室戸岬や足摺岬だと4時間以上の移動時間を要します。そんな高知県内を少しでもお得に列車旅を楽しんでいただけるきっぷが誕生しました」と謳っています。
また、ユースパスでは「ぶらっと近場だけでなくJRのきっぷと組み合わせて沿線から高知市方面へのお出かけにも使え便利でお得!」とあります。
しかし土佐くろ鉄道のつなぎ役、窪川-後免の土讃線がフリー区間に含まれません。
含めた方がPRの文言が自然に溶け込みます。
蛇足ですが、冒頭のユースパスの宣伝で、usefulの表現が使われています。
役に立つ、有益、実用的の意味合いですが誰にでもすぐわかる単語とは言えず、平凡かもしれませんが「便利な」等の表現の方がなじむと感じます。
ユースパス、まるごときっぷの利用者は、中村・宿毛線またはごめん・なはり線のどちらかの路線だけで完結した乗車をしているのでしょうか。
それとも窪川-後免を列車移動しながら両路線に乗っているのでしょうか。
まるごときっぷは同区間の切符提示が要件であり3日間有効の点から、両路線に乗るケースが多いと想定できます。
JR四国は、今回の切符で同区間に何度も乗られたら割に合わないと思うのでしょうか。
それとも土佐くろ鉄道側が、今回の価格を大きく引き上げる必要が生じ、売り上げにも影響するので見送ったのでしょうか。
しかしながら窪川-後免がフリーと言っても片道のみか、往復1回乗車にとどまると思われ、奈半利-高知-宿毛に何度も乗るケースはほとんどないと考えます。
5,000円以内なら利用者に受け入れられる範囲と思います。
ユースパスの場合は1日限りの有効期間であり、切符発売駅の安芸、中村、宿毛から両路線の全区間に乗って出発駅に戻る場合、列車乗車だけでほぼ1日を消費します。
あくまで1,000円で発売することに価値がることは理解できます。
窪川-後免をフリー区間に加えたタイプをオプションとして、もう一つ別に設定してはどうかと考えます。
なお、安芸、中村、宿毛の3駅だけの発売では不便で、実用性に不足します。
窪川、高知、後免の3駅での発売駅追加、列車内での事前発売もした方がよいと思われます。
◆(余談1)土佐くろ鉄道の数多くのフリー切符
土佐くろ鉄道には今回の2種類のほかにも多くのフリー切符、割引切符があります。
参考までに順不同でご紹介します。
有効期日等の表記は省略します。
〇 土佐くろお出かけきっぷ:中村・宿毛線普通列車がフリー、500円
〇 中村・宿毛線フリーきっぷ:同線普通列車フリー2,080円、特急自由席用2,600円
〇 ごめん・なはり線観光1日フリーきっぷ:同線普通列車フリー、1,670円
〇 ひがしこうち1日フリーきっぷ:高知-後免-奈半利フリー、2,300円
〇 四万十・宇和海フリーきっぷ:中村・宿毛線特急自由席、予土線、宿毛-宇和島のバスフリー4,100円
〇 四国みぎした55フリーきっぷ:ごめん・なはり線、土讃線高知-後免、牟岐線、阿佐海岸鉄道DMV、高知東部交通路線バス指定区間フリー、5,800円
〇 阪神往復フリーきっぷ:中村・宿毛から西明石-新大阪、大阪環状線フリー
〇 くろしおSきっぷ:中村・宿毛から高知・後免への特急往復切符
〇 土佐くろシニアパス:65歳以上対象の1か月定期券。
窪川-宿毛で通常の8,000円が3,000円に、後免-奈半利の16,200円が8,400円に
◆(余談2)JR四国の各種フリー切符は土佐くろ鉄道に乗れるか?
もう一点、JR四国の数多くのフリー切符で土佐くろ鉄道が含まれているかを見てみます。
フリー区間に含まれる切符は、四国グリーン紀行、バースデイきっぷの2種です。
フリー区間に含まれない切符は、四国フリーきっぷ、週末乗り放題きっぷ、四国再発見早トクきっぷ、若者限定四国フリー切符です。
土佐くろまるごときっぷに窪川-後免の運賃料金加算を加味すると、かえって二重払いになるとの反対意見が出そうですが、中村・宿毛線、ごめん・なはり線、それぞれ単独の安価なフリー切符を別に発売していますので、そちらを案内すればよいと考えます。
土佐くろ鉄道は2023年6月2日、有井川-土佐白浜間で線路への土砂流入による脱線事故がありましたが、6月10日に運転を再開したのは何よりのニュースです。
夏に向けて今回のフリー切符による土佐くろしお鉄道の活性化を期待します。
※写真は本文と無関係です。