特急「しらゆき」4両編成4往復の状況下でミニ新幹線、トンネル整備への飛躍を考える
「ミニ新幹線化?信越線を改良?新幹線通らない“新潟~上越間”のアクセス改善へ議論」との記事を読みました。(NST新潟総合テレビ)
まだ入口的な議論ではありますが以下、ポイントを整理します。
〇 北陸新幹線は開業したが新潟市と上越地域を直接つなぐ新幹線は通っていないため、新潟駅から上越市の直江津駅まで特急でも1時間半以上かかること。
〇 上越新幹線と北陸新幹線の狭間となっている長岡駅と上越妙高駅のアクセス改善を図ろうと、新潟県で6月23日に高速鉄道ネットワークのあり方検討委員会が開催されたこと。
〇 新潟県内の北陸新幹線には上越妙高駅と糸魚川駅が開業し、上越地域から北陸方面への移動時間が短縮された一方、新潟市と上越地域との交通利便性が相対的に低下していること。
〇 新潟市と上越地域を直接つなぐ新幹線は通っていないため、新潟駅から上越市の直江津駅まで信越線の特急でも1時間半以上かかること。
〇 新潟市と上越地域のアクセス改善を目指そうと、「長岡駅から上越妙高駅をミニ新幹線化する案」と「信越線にトンネルを設置して改良する案」が議論されたこと。
〇 ミニ新幹線案は、上越妙高-直江津間で工事による運休が3~4年想定されることや、貨物線ダイヤへの影響などが課題として挙げられたこと。
〇 信越線改良案は、曲線の多い線路でトンネルを整備して直線にすることで時間の短縮が図れる一方、工事費に対して時間短縮効果が低いのではないかの指摘があったこと。
〇 上記の2つ以外の案を含め、幅広に検討した方がいいのではないかという意見が出たこと。
主要駅の乗車客数と人口は
ここで上越市と同市周辺の主要駅の状況を見てみます。
〇 高田駅:1,944人(2021年度統計年度による乗車人員で、降車人員は含まず。以下、同)
〇 直江津駅:えちごトキめき鉄道1,153人、JR1,519人
〇 新井駅:726人
〇 上越市の人口183,755人、77,429世帯(住民基本台帳人口。2023年6月1日現在)。直江津、高田、上越妙高駅が属する。
〇 妙高市人口29,981人、12,291世帯(同上)。新井駅が属する。
特急「しらゆき」の時刻と、長岡-新潟を上越新幹線乗り換えの場合の所要時間短縮度
次に、上越市-新潟の特急「しらゆき」の設定時刻を見てみます。
併せて、長岡-新潟を新幹線乗り継ぎとした場合の新幹線接続時間を併記します。
下り
〇 しらゆき1号:新井7:19→直江津7:43→長岡8:36→新潟9:27(※新幹線長岡乗継の場合、臨時とき83号長岡8:43→新潟9:06。以下、同)
〇 3号:新井10:26→直江津10:49→長岡11:40→新潟12:30(※とき315号長岡11:55→新潟12:17)
〇 5号:上越妙高13:09→直江津13:25→長岡14:16→新潟15:07(※とき63号長岡14:29→新潟14:52)
〇 7号:上越妙高17:23→直江津17:38→長岡18:31→新潟19:25(※とき335号長岡18:40→新潟18:57)
上り
〇 2号:新潟7:37→長岡8:29→直江津9:25→新井9:46(※とき308号新潟7:56→長岡8:18)
〇 4号:新潟10:21→長岡11:17→直江津12:11→上越妙高12:24(※臨時とき54号新潟10:48→長岡11:09)
〇 6号:新潟13:06→長岡13:57→直江津14:51→上越妙高15:06(※とき322号新潟13:23→長岡13:44)
〇 8号:新潟19:59→長岡21:17→直江津21:47→新井22:07(※臨時とき78号新潟20:50→長岡21:12)
このほかに快速が長岡-直江津に3.5往復、新潟-長岡に1.5往復あります。
「しらゆき」4両編成4往復状況とミニ新幹線の議論
上越市と新潟を結ぶ特急「しらゆき」は4往復で、直江津-長岡の快速を含めて7.5往復です。
「しらゆき」が毎時30分間隔または60分間隔運転、1列車10両編成以上ならまだしも、E653系による4両編成268人定員、片道当たり1,072人の輸送定員状況を見る限り、輸送力の逼迫ではなく、時間短縮が論点です。
だからといってミニ新幹線、信越線別線建設は「しらゆき」4両編成4往復の状況にあっては飛躍しすぎる印象を受けます。
長岡-直江津は73.0km、列車の最高時速は新潟-長岡-直江津120km/h、直江津-新井95km/hとなっており、「しらゆき」の長岡-直江津の所要時間は約50分です。
ほぼ同条件下の路線で比較すると、常磐線「ひたち」は品川-土浦76.4km約56分、東海道線名古屋-米原「しらさぎ」は79.9km約60分、鹿児島線博多-門司「きらめき」72.7km約60分とほぼ同程度です。
上越地域と新潟とのアクセス改善は、まず「しらゆき」の増発、編成両数増が順序と考えます。
それには「しらゆき」の利用実績を伸ばすことが要件です。
4往復だから乗らない、本数を増やせば乗るといえるのでしょうか。
または「しらゆき」では遅いから乗らない、速ければ乗るのでしょうか。
長岡-上越妙高のミニ新幹線は、北陸の貨物列車があるため青函トンネル同様、3線軌条化となりますが、長岡-直江津の73.0kmは山形・秋田新幹線ほどではないにせよ、距離があります。
3線軌条化工事を行なうとしたら、貨物列車は同区間をトラックや船で代行輸送するか、東海道線と高崎・上越線経由での迂回輸送になりますが、そこまでの輸送需要があるでしょうか。
現状では、「しらゆき」を新井-長岡までの設定として長岡-新潟は廃止し、そのかわりに長岡で新幹線ホームに横付けして、長岡-新潟を新幹線で速達する方が現実的と考えます。
下り「しらゆき」は新幹線下りホーム脇へ、同じく上りは新幹線上りホーム脇へ横付けし、乗り換えを容易にすればイメージは変わります。
乗り換えさせては駄目だという思いが先走る前に、需要実態を見る必要があります。
上越地域と新潟速達が優先なので、長岡-新潟沿線で「しらゆき」を利用していた人は長岡乗り換えとなります。
「しらゆき」が長岡で新幹線高架ホームに横付けした後、再び地平に降りて東三条、新津方面に向かえば両立化しますが、それでは二重投資です。
今回の上越地域と新潟速達の案件はその効果と、多大な経費、貨物列車への影響、迂回輸送等を考慮すると、今少し冷静、客観的に状況を検分する必要があるのではないかと感じました。