新潟-上越市の速達は羽越新幹線、信越ミニ新幹線、北越急行経由のどれを選ぶか?
マイナビニュース、2023年10月9日付け、「『新潟市~上越市』鉄道高速化で4案検討、いっそ新幹線が正解かも」を拝見させていただきました。
新潟県が「整備主体は国」とする真意、ミニ新幹線にこだわる理由の背景、5番目の選択肢「羽越新幹線部分開業」の検討提言等が主な内容です。
新潟市-上越市の速達、新幹線関係について、冒頭記事の中から印象に残った箇所を以下で引用させていただきながら考えてみたいと思います。
上越市-新潟市については時間短縮、本数増、新幹線関連等で過去に何回か触れさせていただいており、今回の内容と重複する箇所がありますが予めご了承ください。
主な論点の流れ
今回の記事について雑駁ですが整理してみました。
① 新潟県の交通課題として南北の交通ネットワーク整備があり、具体的には新潟市-上越市の鉄道高速化が一つの課題であること。
② まず「しらゆき」を長岡で新幹線対面乗り換えにして、「しらゆき」での長岡-新潟乗車と比較し、上越妙高-新潟で30分の時間短縮を図ること。
③ 上越妙高-新潟での時間短縮と乗換の容易さで鉄道のシェアを高められるかを検証すること。
④ 糸魚川も新幹線対面乗り換えにして、長岡とともに新幹線乗り換えを迅速にすること。
⑤ 長岡と糸魚川での新幹線乗り継ぎのしやすさにより、上越妙高-新潟、富山-新潟の鉄道シェア向上を確認すること。
⑥ 鉄道シェア向上が確認できれば、糸魚川-長岡のミニ新幹線化の追い風になること。
⑦ 信越線高速化に関して4つの選択肢が出されているが、5番目として羽越新幹線部分開業も検討されたいこと。
⑧ 羽越新幹線は、北陸新幹線上越妙高から一旦、長野方向に進んで柏崎を経由し、上越新幹線長岡に接続するルート想定で、新潟県の最終的な羽越新幹線富山―新潟整備構想とも一致すること。
以上、いささか短絡的なまとめ方であり、本文の趣旨と異なるかもしれませんが、上記を基本に意見・感想を書かせていただきたいと思います。
以下の4案です。
(1)長岡-柏崎-直江津-上越妙高のミニ新幹線化
(2)長岡-柏崎-直江津-糸魚川のミニ新幹線化
(3)長岡-柏崎-直江津の信越線別線新線
(4)北越急行のミニ新幹線化
市の人口と主要駅の1日の乗車人員
参考までに以下の状況となっています。
〇 上越市:183,334人、高田駅1,944人、上越妙高駅1,556人
※人口は2023年9月30日現在の住民基本台帳人口。乗車人員は2022年度。ただし高田駅は2021年度数値。
両市だけでなく、上越妙高を介して富山-新潟など日本海縦貫の役割も担う需要の視点でしょうか。
需要は一旦置くとして、本文では「新潟・長岡地域から上越地域への移動方法」の調査結果は「自家用車が95.1%」「鉄道(信越本線)が2.7%」だったこと、そもそも鉄道の需要が少ないこと、新潟県はこの結果を「鉄道の移動時間がかかるため」としていることを紹介しています。
自家用車95,1%に対する鉄道2.7%の状況ゆえに、「しらゆき」4両編成4往復の運転本数となっているか、鉄道移動が自家用車に比べて少ないのは、需要の前に移動時間がかかるのが原因でしょうか。
鉄道促進の対応として、記事では最後の段で「しらゆき」は長岡-新潟を上越新幹線にして、長岡で新幹線同一ホームに横付けし、上越妙高-新潟での30分時間短縮効果を提言されています。
現在でも長岡乗り換えにより、長岡-新潟を新幹線で時間短縮することはできます。
長岡での階段、エスカレーターの手間、長岡での接続時間の関係だけです。
一方、長岡で新幹線ホームに横付けすれば「しらゆき」の需要が増えるかといえば、現在での可能な状況を考慮すると、増えるなら既に増えているのではとも思われます。
となると、上越妙高-長岡の「しらゆき」が遅いこと、4往復しかないこと、上越妙高から新潟へミニ新幹線による上越新幹線乗り入れで直通するのが解決方法ということになってきます。
4往復しかない点については上越市、柏崎市の人口だけから見れば本数はもう少しあってもよいかとも思いますが、4両編成の点が気になります。
4両で足りているのか、本数がなく不便だから、遅いから4両なのかを見極める必要がありそうです。
以下、本文から引用させていただきます。
(以下引用)
声高に羽越新幹線を掲げて実現すると、今度は赤字必至の並行在来線を抱えてしまう。それなら並行在来線になりそうな路線をミニ新幹線に改造し、これを羽越新幹線と見なして国に主体となっていただこう、という考えかもしれない。これは名案といえそうだ。
(以上引用)
上越妙高-長岡のフル新幹線は現実的でないと思われます。
仮に新幹線が実現すると新たに並行在来線問題が伴うため、ミニ新幹線という考え方で並行在来線の議論を避ける発想と思われます。
仮にミニ新幹線で開業した際、新潟直通はできますが、上越妙高-長岡のミニ新幹線では最高速度130km/hまでの速度です。
そのミニ新幹線で満足するかどうかはまた別問題で、決して満足とは限らないのは現在の山形新幹線でも聞かれるところです。
「しらゆき」で新潟直通とは言え、在来線が時速130km/hのままでは、上越新幹線の時速270km/hに対して遅いのが不満になってこないでしょうか。
また、ミニ新幹線化により「しらゆき」は4往復から何往復に増えるか、何両編成になるでしょうか。
長岡での乗り換え接続時間10分短縮、新潟へ新幹線乗り入れ直通、在来線所要時間はほぼ変わらずで、上越妙高-新潟の需要は流れてくるか、富山・金沢から新潟への速達連絡で新たな需要を呼び込めるでしょうか。
上越妙高ルートでなく糸魚川ルートを採用すると、上越市を経由しない課題もタビリスの指摘のとおりです。
糸魚川での日本海縦貫線としての短絡速達、上越妙高での新潟への利便を性両立させるには直江津-糸魚川、直江津-上越妙高の両方の工事が必要になります。
新潟県は、日本海縦貫の羽越新幹線の一環で糸魚川方向を考えるのか、上越市と新潟市との速達を考えるのか、両立させようとしているのかにより対応が変わってきます。
日本海縦貫の羽越新幹線的な役割、上越妙高、柏崎の3つの要素と新潟をすべて両立させるならば、本文の「5番目の選択肢として『羽越新幹線部分開業』の検討を」の地図で示されたとおり、柏崎-上越妙高は新線建設となり、柏崎から上越妙高駅へ入る際は北陸新幹線との合流を長野側からとして、上越妙高に向かえば同駅でスイッチバックすることなく富山方向に向かうことはできます。
そうなると、直江津-糸魚川のミニ新幹線構想は不要になります。
ただし、柏崎-上越妙高での新線建設が伴います。
上越妙高でスイッチバックを割り切れば柏崎-上越妙高の新線建設は不要になります。その場合、上越妙高でのスイッチバックを割り切るかどうかになります。
現状では上越妙高側の利便性に貢献しない糸魚川ルートの建設は難しいと思われます。
貨物列車運休の課題
旅行総合研究所タビリスの2023年9月30日記事「『ほくほく線ミニ新幹線化』を考える。最高速度200km/hも夢じゃない?」でも指摘されているとおり、3~4年間の運休、北陸線、信越線での貨物列車ダイヤへの影響の問題があります。
3~4年間はかなり長く、貨物列車は東海道線、上越線経由への迂回、高山線経由の貨物列車暫定復活等が求められそうです。
その際は北陸経由京都-長岡の貨物列車で大幅な所要時間増が伴うリスクもあります。
同じミニ新幹線でも、貨物列車がない山形・秋田新幹線とは事情が異なります。
糸魚川-長岡は複線ですが、片側はミニ新幹線専用、片側は貨物列車と普通列車用の単線、一部区間は三線軌化して、複線を活かしてのミニ新幹線同士のすれ違い活用によりミニ新幹線相互の列車交換待ちを避けられるでしょうか。
今回の記事では北越急行のミニ新幹線については、詳細には触れられていませんでした。
筆者は北越急行のミニ新幹線がよいのではないかと考えますが、上越市や柏崎市での新潟速達の意味が薄れる点は否定しません。
新潟県が、柏崎と上越妙高を経由すること、迂回しないことを前提にするなら北越急行経由はなくなります。
一方、新潟県にとっては北越急行、えちごトキめき鉄道の安定した経営も重要なテーマの一つと思われます。
北越急行線内で時速200km/hを目指しての上越妙高-浦佐-新潟経由は、迂回は伴うものの上越妙高にとって悪い話ではないと思います。
前回の繰り返しになりますが、柏崎は特快による長岡速達で補うことでの理解協力が鍵となります。
新幹線要望は、北陸新幹線敦賀-新大阪、西九州新幹線新鳥栖-武雄温泉、四国新幹線、北海道新幹線札幌-旭川、山陰新幹線など、各地から聞こえてきます。
その中で羽越新幹線の選択もあることの今回記事での提言、羽越新幹線の一部を担うミニ新幹線の案が入り込むかなど、今後とも注視していきたいと思います。
(※ 記載にあたり、2023年10月9日付け、マイナビニュース「『新潟市~上越市』鉄道高速化で4案検討、いっそ新幹線が正解かも」と、2023年9月30日付け、旅行総合研究所タビリス「『ほくほく線ミニ新幹線化』を考える。最高速度200km/hも夢じゃない?」を参考にさせていただきました。)
※写真は本文と無関係です。