毎日新聞、2023年8月15日付け「新潟県 『上越』地域名と路線名で違い 詳しく解説」を見ました。
新潟県の「上越」地域と「上越」新幹線とでは意味が異なるが誤解される場合があることを紹介した内容です。
その中の一部を引用させていただきます。
(以下引用)
「気象情報その他で新潟県は上越、中越、下越、佐渡の四つで区分されることが多いのですが、この『上越』という言葉が、同じく県内に関わりのある上越新幹線などの『上越』と意味が異なっているため、県内外の方々から誤解されることがあります。」
「現在の新潟県は古代律令体制下で越後国と定められた。当時の地域の起点は天皇がいた京都で、このため京都に近い側が「上」、遠い側が「下」だった。越後国内も、京都に近い側を上越後(かみえちご)、遠い側を下越後(しもえちご)と呼び、その略称として上越と下越が生まれたと考えられるという。」
「中越後という地域名はなかったそうで、上越と下越の中間という意味で中越が使われるようになったとみられる。ちなみに、上越地方の上越市には上越高校、中越地方の長岡市には中越高校がある(以下略)」
「上越新幹線や在来線の上越線の「上越」は上野(こうずけ)(群馬県)と越後(新潟県)を結んだことが命名の由来。上越市どころか上越地方すら通っていない。ただ、紛らわしいことに変わりはなく、過去に上越市長が新幹線の名称変更を求めるなど、たびたび物議を醸している。」
(以上引用)
上越市の状況
上越市は新潟県南西部上越地方に位置し、特例市に指定され、人口183,621人、77,486世帯(2023年8月1日現在)で、新潟県内では新潟市、長岡市に次ぐ第3位の人口規模です。
同市ホームページでは「新潟県上越地域の中心都市を目指し、昭和46年4月29日、旧高田市、旧直江津市の合併により上越市が誕生しました。
合併当初からの課題は、歴史や特性の異なる2つの都市を『ひとつの都市』として、いかに融和・協調していくかということでありました。」
(以上引用)
と謳われています。
1971年の合併から52年を迎えたことになります。
ホームページでは8月19日~20日に第98回謙信公祭、7月15日~8月20日の第44回高田城址公園観蓮会を伝えています。
鉄道路線は北陸新幹線、えちごトキめき鉄道、信越線、北越急行が通っています。
上越線の開業経過
新潟県の上越線沿線地域は全域が中越地方に属しますが、群馬県の上野(こうずけ)と新潟県の越後を結ぶことから上越線と命名されています。
1920年から1925年にかけて宮内-越後湯沢が上越北線として開業。
1921年から1928年にかけて新前橋-水上が上越南線として開業。
1931年に水上-越後湯沢が開業後、起点を高崎にして高崎-宮内が上越線となりました。
1982年に上越新幹線が開業しています。
位置的には中越に属します。
上越市の「市」の名称
一般論として、2市のうちの片方だけの市名にすることは使われなかった市にとってはままならず、両市の固有名詞を出して一体化する場合でも、どちらが先かで揉めるのはどこも通例です。
下側の位置になった市からは不満が出るものです。
そこで両市の名称は使わず、別の名称を考案した結果、上越地方の中心都市を担うことで上越市としたと思われます。
2015年の北陸新幹線開業では、交差する在来線の脇野田駅が上越市に位置することから、えちごトキめき鉄道とともに上越妙高駅と命名、また改称しています。
「上越」について時系列で見れば、1920年代から1930年代の上越線への命名の方がずっと早く、1982年の上越新幹線の名称も在来線に追従して上越としたのは自然なことです。
記事の中で「過去に上越市長が新幹線の名称変更を求めるなど」とありますが、上越線の存在や、名称根拠の上野(こうずけ)と越後の頭文字も上越地域では当初から承知していたはずです。
高田市と直江津市が1971年合併の際、鉄道路線と同じ「上越」を選んだ後に、それを正当化し、鉄道路線名の上越が紛らわしいという議論が出てくる発想はいかがなものかと感じます。
上越の名称自体では鉄道に次ぐ順番であった以上、鉄道路線名と混同しても名称の背景が違うからと割り切った判断をした経過があると思われます。
紛らわしいとの議論は新しい市の名称を決める以前の次元の話と考えます。
むしろ新市名として、合併前の両市町村の文字を合体する、頭文字だけで重ねる、頚城など上越以外の名称を選択する、上越と別の地名や名勝を重ね合わせるなど、上越以外の選択、上越単体でなく二つの名称を合わせるなど、方法や選択肢はあったはずです。
少なくとも上越線を中越線、上越新幹線を越後、関越、中越、下越、中下越、新潟新幹線などに変える筋のものではないと考えます。
(※記載にあたり、毎日新聞記事、上越市ホームページ、Wikipediaを参考にさせていただきました。)