暑い弱冷房車で座るより、涼しい冷房車で立つ傾向?
今回は、通勤電車の弱冷房車(以下、「弱冷」または「弱冷車」)の話です。
首都圏の通勤電車の冷房化は、1960年代末期の京王線が最初で、山手線では1970年、中央線快速では1972年に、それぞれ冷房車が導入されていったとのことです。
その後、冷房が当たり前になってくると、冷房が苦手な人もいることを考慮し、弱冷車が設定されました。
1984年夏に京阪で6両編成以上の列車の1両を弱冷車にしたのが最初とのことです。
さて、2023年の夏は例年の夏よりも更に暑くなっているようで、関東でも40度近くになった地域もありました。
筆者は日常、常磐線、武蔵野線、新京成、北総の4路線しか直接の通勤体感または観察をしていないのですが、暑さの反動で今年の弱冷車は例年よりも空いているように見受けます。
弱冷車設定温度では暑く感じる人が多くなったと思われます。
弱冷車の車内設定温度リスクの結果、弱冷車での着席率が高まりました。
通常の冷房車と弱冷房車の設定温度の状況
ここで、通勤電車の冷房設定温度と、弱冷車の温度状況を見てみたいと思います。
以下の設定温度表記は、前者が通常車両、後者が弱冷車両です。
順不同のこと、路線による相違、最新の状況等、変化していることもありますが参考としてご覧ください。
〇 JR東日本:25度、弱冷27度
※ 京浜東北線・京葉線の通常車両は24度、東海道線は26度
〇 東京メトロ:26度、弱冷28度
※ 銀座線、丸ノ内線は弱冷車なし
〇 都営地下鉄:25度、弱冷28度
※ 大江戸線は22度、弱冷24度(車両が他路線より小さいため)
〇 東急:25~26度、弱冷28度
〇 京成・北総・相鉄・西鉄:25度、弱冷27度
〇 東武・西武・京王・小田急・京急・つくばエクスプレス・近鉄・南海・京阪・伊予鉄道:26度、弱冷28度
〇 阪急:26.5度、弱冷27度
〇 JR西日本・大阪メトロ:冷房車設定温度の公表なし。通常より1~2度高めが弱冷。
通常車両26度、弱冷房車28度設定が平均的
以上を見ると、冷房設定温度は26度、弱冷は28度が標準的かと思われます。
通常と弱冷との車両の温度差は2度のケースが多いようです。
その28度では暑く感じるわけですが、阪神・横浜市営地下鉄のように通常車27度の事例もあります。
大都市の鉄道では現在、安全確保の観点から電車内の防犯カメラやホームドアの設置を進めていますが、同時にホーム上での冷房付き待合室設置も行なっているのはありがたいことです。
冷房周辺の余談
最後に、電車の冷房関連の余談です。
◆ ラインデリアと涼感効果
ラインデリアが設置されていると、涼感を更に高められる効果があります。
ラインデリアが起動していないと、暑いのになぜ動かないのかとラインデリアを恨めしく見つめます。
近年は団扇(うちわ)や扇子に変わってハンディ(携帯)型や首掛け型の扇風機光景も日常化しました。
複数同時使用の人もいます。
近年のラインデリアは自動的に起動、送風量も自動化の傾向にありますが、乗務員の判断で操作するタイプもあります。
通勤電車で暑がりでない?乗務員に当たると、ラインデリアをなかなか操作しない傾向があり、操作しても停止が早い傾向にあるのを通勤電車で感じます。
新京成で言えば8800形が該当します。
◆ ラインデリアの風は左右均等ではなかった
ラインデリアで興味深いのは、その中央位置から見上げた時、最新車両であっても左右均等に送風口が動かない(届かない)ことです。
片側は満遍なく車体の窓側まで風がいきわたりますが、もう一つの側は窓側方向まで送風口が働かず、すぐに反対側に折り返してしまいます。
その結果、ラインデリアで送風口が降られない側に着席すると、ラインデリアの送風が物足りなく感じます。
一度、観察してみてください。
◆ JR西日本とJR東海の冷房装置は2基の集約分散式、特急は集中式で共通の妙
冷房車の冷風はラインフロー方式が定着しています。
従来の特定部分からの吹き出し口方式よりも満遍なく冷風がくる点で優れています。
屋根上の冷房装置は、国鉄時代は集中式でした。
JR東日本、JR北海道、JR九州、JR四国は集中式で、関東の大手私鉄も集中式です。
JR西日本とJR東海は2基の集約分散式で、関西の大手私鉄も集約分散式です。
特急列車での逆転現象も興味深いところです。
◆ 東京メトロ千代田線の冷房エピソード
地下鉄千代田線では、車内冷房はなくとも熱風は来ない、当時の営団6000系のサイリスタチョッパ制御に比べ、抵抗制御の国鉄103系の暑さの違いが顕著でした。
千代田線内での103系冷房改造はなく、203系に変わってから冷房化が実現しました。
地下鉄では冷房ができないことに疑問のない時代、常磐線我孫子から千代田線に向かうと、国鉄と営団の会社境界駅の綾瀬で冷房が切られました。
その後、地下鉄内に入ってからすぐに到着する北千住まで、わずか一駅だけ冷房使用区間が延長されたこともありました。
6000系は冷房がない代わりに大型扇風機を備えていましたが、その半数の編成は小窓で外からの風が入ってきにくく、車窓も見えにくい構造が不評でした。
しかし正面顔の斬新さ、サイリスタチョッパ制御という用語、車内では5両が連続して見える連結面等の斬新さに話題が向き、103系と並ぶと一層、差が際立ちました。
現在の電車の制御方式はVVVFが主流ですが、国鉄時代の主流103・113・115・415系は抵抗器でした。
抵抗制御は床下からの熱風が特徴で、その暑さが一層、冷房装置設置の声を高めました。
103系10両編成は4号車、東海道・横須賀線113系11両編成は8号車が弱冷車でした。
ここで共通するのは、床下に抵抗器のない付随車(サハ)だったことです。
通常よりも設定温度の高い弱冷車が、抵抗制御器のある電動車(モハ)に指定しては、車内が一層暑くなるとの心遣いを感じました。