平行普通列車

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JR東海の快速「みえ」の関西線版、名古屋-奈良の快速設定効果を考える

もしも関西線亀山-奈良がJR東海の管轄だったら 名古屋-奈良の都市間輸送、観光輸送は改善されていたか?

名古屋から近郊の県庁所在地への鉄道での都市間速達輸送を見てみると、岐阜は東海道線名鉄、京都と大津は東海道新幹線、大阪は東海道新幹線近鉄、津は近鉄と関西線・伊勢鉄道があります。

では、名古屋から奈良はどうでしょうか。

今回は、名古屋-奈良の都市間速達輸送を中心について考えてみました。

 

名古屋-奈良間の鉄道需要はあるか?

名古屋から京都、大阪への移動需要は多くとも、名古屋-奈良の移動需要は少ないのでしょうか。

県庁所在地接続で距離的に200km以内であり、ビジネス、観光ともに移動需要がないとは思われません。

では、名古屋-奈良はどのような経路で移動しているのでしょうか。

鉄道移動は東海道新幹線京都経由で定着していると考えられます。

名古屋-奈良は関西線が短絡して結んでいますが現在、名古屋-奈良の直通列車はなく、亀山と加茂の2回乗り換えが必要で、所要2時間50分程度を要します。

かつては急行「かすが」がありましたが2006年に廃止されました。

その後、関西線での名古屋-奈良移動、とくに亀山-奈良間は青春18きっぷ中心の利用状況になり、将来のあり方について議論が必要との話題も聞くようになりました。

 

名古屋-奈良の5コースの比較

現状の速達状況について、所要時間の短い順に整理してみました。

金額は列車や時期によっても異なりますので、一応の目安としてご覧ください。

① 東海道新幹線近鉄特急または奈良線の快速(京都1回乗り換え)

所要1時間30分から40分、新幹線自由席で5,940円、189.3km。

新幹線ゆえに自由席でも高価ですが、速達時間は近鉄特急でも及ばないので、東海道新幹線京都経由が常道コースと思われます。

 

② 近鉄特急(大和八木、大和西大寺の2回乗り換え)

所要2時間20分、4,350円、177.8km。

大和八木、大和西大寺の2回乗り換えが弱みです。

 

③ 近鉄特急(鶴橋1回乗り換え)

所要2時間40分、4,640円、216.3km。

乗り換えは鶴橋の1回だけですが、大阪に行き過ぎてから奈良に戻るようなイメージで、非効率です。

 

④ 関西線(亀山、加茂の2回乗り換え)

2,310円、2時間50分、133.9km。

最短ルートですが亀山-加茂が単線非電化で速度が遅く、亀山と加茂の2回乗り換えもあって、時間を要します。

 

⑤ 東海道線奈良線(大垣、米原、京都の3回乗り換え)

3,410円、3時間10分、189.3km。

岐阜-米原以外は快速、新快速が高速運転で走り、座席も転換クロスシートで快適性と安価な点で、青春18きっぷでも定番ですが大垣、米原、京都の3回乗り換えがあります。

 

JR化後、名古屋-鳥羽に快速「みえ」を設定したJR東海の意欲

JR東海は、近鉄の独擅場となっている名古屋-津-鳥羽に、地域全体の乗車需要を喚起するため毎時1往復、快速「みえ」を設定しました。

1987年のJR東海発足後、間もない1990年に走らせたことに当時は驚きがありました。

近鉄特急の牙城は大きいものがありますが、快速「みえ」は編成が短いものの、特急料金不要、一部を指定席としての13往復設定は評価されると思います。

 

名古屋-奈良の急行「かすが」はなぜ廃止されたか?

名古屋-鳥羽に続き、JR東海は名古屋-奈良について、急行「かすが」に新型キハ75形を投入して旧国鉄編成を置き換え、最短2時間08分で結んだものの、利用は伸びず2006年に廃止されました。

「かすが」が伸びなかった原因は3つあると考えます。

急行であったこと、1往復しかないこと、名古屋-亀山はJR東海、亀山-奈良はJR西日本の管轄だったことです。

逆に言えば、「かすが」を急行ではなく快速として、「みえ」と同じく毎時1往復設定し、JR東海JR西日本が速達合意協調していれば展開は違っていたのではないかとも思われます。

 

もしも名古屋-奈良がJR東海だったら

本来、名古屋-奈良の速達路線として関西線は理想的な路線と思われますが、名古屋-加茂の単線非電化、急勾配、沿線人口等が弱みとなって、急行「かすが」は廃止され伸びませんでした。

しかしそれよりも大きな要因は、結果論ではありますが、国が関西線を亀山でJR東海JR西日本とに分けてしまったことではないかと考えます。

名古屋-亀山はJR東海、亀山-奈良-天王寺-湊町はJR西日本となっています。

JR東海の名古屋-亀山は電化されており、電車運行しています。

JR西日本は加茂-奈良-天王寺-湊町については積極性があります。

加茂-奈良はJR西日本で独自に電化し、輸送改善をしています。

しかし亀山-加茂は対照的でダイヤを見る限り、JR西日本の意欲の薄さを感じます。

 

関西線の路線規模や性格から見れば、急行「かすが」の新車置き換えはJR東海よりもJR西日本の方が本来の形と思われますが、JR東海が名古屋-奈良に一時期意欲を見せたものの、当時のJR西日本は静観のままのイメージがあり、急行「かすが」への利用促進意欲は受けませんでした。

「かすが」JR東海の車両、JR東海が設定の列車だからというよそ者の見方をしていたように思います。

亀山でJR東海とR西日本に分かれたため、関西線全体、名古屋-奈良の都市間輸送改善に双方が意欲を見せない結果となり、JRの分割のデメリットの面が出た一典型とも言えます。

東海道線米原でもそのデメリットを感じる時がありますが、JR東海管轄の大垣-米原も毎時2往復体制になったことで以前よりも改善の兆しが見られます。

 

もしも名古屋-奈良がJR東海だったら、快速「みえ」の関西線版、快速「なら」を設定したか?

歴史に「もしも」は禁物ですが、JR東海が名古屋-鳥羽の快速「みえ」で頑張っているように、名古屋-奈良がもしもJR東海であったならば、快速「みえ」の関西線版の快速「かすが」または新生の「なら」(仮称)と呼称して毎時設定し、輸送改善していたのではないかとの思いがあります。

それができなかったのは、亀山-奈良がJR西日本で区切ってしまったためではないかとも感じます。

今の亀山分割という区分形態で、JR東海JR西日本に対し、名古屋-奈良に毎時1往復の快速を設定したいと提案して、JR西日本が賛成するかどうかは別の話です。

それを提案してもJR西日本との考え方の相違、調整の気苦労で、名古屋-奈良輸送改善意欲を減退させていく感じがします。

どうせJR東海の収入は名古屋-亀山だけだ、それなら東海道新幹線で名古屋―京都の収入を得た方がよいという考えに帰結します。

 

かといって逆にJR西日本からJR東海に対し、名古屋-奈良の快速提案をすることはないと思われます。

その気があるなら既に行なっているはずであり、JR東海の名古屋-亀山に乗り入れて提案をしたらJR東海は受け入れるのではないかと感じます。

それは以前の急行「かすが」投入経過もあって、名古屋-奈良輸送の想いは頭の片隅にあると思われるあるからです。

現状のまま推移すると、不便だから利用しないことと、利用しないから本数削減の繰り返しだけになり、亀山-加茂の将来存亡にかかってくるかもしれません。

 

名古屋-奈良の都市間輸送を放置するのは鉄道の損失

名古屋-奈良にどれだけの需要があるのか、データはありませんが、東海道新幹線京都経由での移動は一定数、あるものと考えられます。

名古屋-奈良輸送について、現在のJR東海は名古屋-京都で東海道新幹線乗車があればよい、京都-奈良は近鉄でもJR西日本奈良線でもお好きな路線でどうぞと考えているだけでしょうか。

それとも頭の奥には、快速「みえ」名古屋-鳥羽の奈良版の快速、があっていいという思いはあるのでしょうか。

もしも亀山-奈良がJR東海管轄だったならば、名古屋-奈良に快速設定をしたかもしれなかったでしょうか。

飛躍しますが、現在の最新気動車特急HC85系で高山線紀勢線に続いて、関西線に特急投入をしたでしょうか。

 

いずれにしても関西線亀山-加茂を単なる一つのローカル線区間のまま、将来のあり方議論の方向になる前に、秘められた名古屋-奈良需要を掘り起こし発展させてほしいと願っています。

 

※写真は本文と無関係です。